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ol 24 「医療/ 公衆衛生×メディア×コミュニケーション」

医療ガバナンス学会 (2007年12月20日 14:21)


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第四回 BOSTON での学び3 専門家になる
林 英恵

2005年の1月の大雪の中、26歳の冬。ボストンに降り立った私ですが、明確な目標や目標達成のための手段を思い描けていたわけではありませんでした。「メディア」と「公衆衛生?(当時は公衆衛生という言葉もあまりピンとこない)」というのが、自分の興味の方向だという以外に、絵になるような将来というのは思い描けていませんでした。この二つをどう結びつけたらいいのかがわからなかったのです。

医療に興味を持ったのは、高校から大学にかけて、HIV/AIDSに興味を持ったことが始まりです。高校在学中、「国内で輸血でHIVに感染した人がいる」という新聞の一面記事を見ました。とても親しかった人が大量の輸血を受けたことは知っていました。仲良くなるにつれて、その過程の中で、HIVというのが”ほかの誰か”の病気ではなくなっていったことを覚えています。インターネットなどなかったので、わからないことは、図書館やテレビ、新聞のニュース等で調べる手段しかありません。空気感染しない、性交渉で感染する、ウィルスそのものを体から取り除く薬はないなど、とにかくありとあらゆる情報を欲していました。そして、この”HIV/AIDS”という病気の情報をはじめて私にもたらしてくれたマスメディアの存在とその可能性の大きさを自覚していくのです。何か「知ること」が行動や人生を変えていく一歩になるんだと。そして、自分も、「知らせる」ことで誰かの行動を変えていけるようなことを職業にしたいと思うようになりました。
アメリカで勉強を進め、卒業後の進路を考えるうちに、そんな高校時代から始まった夢の続きに、ちらほら職業名も登場するようになりました。ところが、メディアというフィールドにいながら医療や公衆衛生を扱う新聞記者などの職業につくか、もしくは、医療や公衆衛生のフィールドでメディアを扱うような人になるかというところまでで、思考は停止してしまいました。新聞記者以外に具体的な職業名が思い浮かばないからです。公衆衛生のフィールドとして、病院や国際機関等の広報などを考え、学生時代にインターンも行いました。しかし、組織の広報は、組織を外にアピールするために存在するのであって、例えば戦略的にHIV予防や教育カリキュラムを練るところではありませんでした。(注:組織によっては、広報がこういった部署を兼任しているところもありますが、私がインターンした場所は異なりました。この違いは詳しく次号で説明します。)

アメリカに来て、メディアと公衆衛生に対する興味がますます沸いてきたのに、卒業後それをどう生かしたらいいのだろうと日々頭を抱える日が続きました。そんな時出会ったのが、一つの冊子でした。※

公衆衛生大学院の入学者向けに配っていた冊子です。公衆衛生を学ぶ人の卒業後の職業の可能性について実際の職業の名前を挙げながら解説してある本でした。

その中に、「Health Communications」という言葉があるのを発見したのです。その分類の具体的な職業として、ジャーナリストとならび、「Communication Specialist(コミュニケーションの専門家)」というものが存在することを知ったのです。家に帰ってWEBで検索してみると、どうやら、アメリカでは既に一つの学問としても、また職業としてもこの領域、つまり、人々の健康のために、病気の予防などを戦略的に行うコミュニケーションというものがあることがわかりました。そして、当時勉強していた教育工学という分野がこのヘルスコミュニケーションと密接につながってくることも。長い間、いつも人に「何をやりたいの?」と聞かれて一言でまとめられなかった自分のなりたい職業というものが、このヘルスコミュニケーションの専門家だということがわかったことで、何年間かずっと首をひねりながら考えてきたことの答えを見つけたのです。

実際の職業を手にしたわけではなかったのですが、それと同じか、それ以上の喜びで、自分のやりたいことが”分野”として存在することのうれしさを感じたことを覚えています。そして、この国―アメリカ―にはその分野の専門家が既にたくさんいるということにも心が躍りました。そんな中で、憧れていたハーバード大学の公衆衛生大学院が、2007年の秋から始めてHealth Communication Concentration (ヘルスコミュニケーション専攻)を立ち上げることを知ったときには、運命だと思いました。

これが、私とヘルスコミュニケーションの始まりなのです。

※「advancing healthy populations: the Pfizer guide to careers in publichealth」
(http://www.nynj-phtc.org/PHNX/res/pfizer-publichealthcareers.pdf オンラインでダウンロード可能です)
林 英恵
早稲田大学社会科学部卒業。ボストン大学教育大学教育工学科修了後、株式会社マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパンにて、ジュニアストラテジックプランナーとして勤務。2008年より同社のサポートを得てハーバード大学公衆衛生大学院修士課程(ヘルスコミュニケーション専攻)進学。

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