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臨時 vol 64 「新興国の医療(3)」

医療ガバナンス学会 (2007年12月18日 14:22)


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多摩大学 医療リスク研究所教授
(医師、MBA) 真野俊樹先生

 
●台湾という国

台湾が親日的であることは良く知られている。実際、ある程度以上より上の年齢層は日本語を話すし、若者も片言の日本語を話す人は多い。

台湾は1895年から1945年までの間は日本の台湾総督府の統治下にあったが、1945年の第二次世界大戦終結後に中華民国が占領し、1947年に再設置された台湾省政府の実効統治下に置かれた。

その後、中華民国・南京国民政府は、連合国軍の委託を受けて駐台湾日本軍の武装解除を行うために台湾へ軍を進駐させ、1943年10月に台湾を中華民国の領土に編入した。そして、中国本土で国共内戦によって中華人民共和国が成立し、かつ中華民国政府が一旦崩壊した上で”台湾国民政府”として再始動してからは、両国政府間で「中国を代表する正統な政府」としての権利を巡る対立が生じるようになった。今日では、国際政治上の駆け引きの結果から「中国を代表する正統な国家」として中華人民共和国を承認する国が大勢を占めているが、台湾の政治的地位と主権帰属も対立の一要因となっている。

面積は3万6千平方キロメートルと、九州よりやや小さく、人口は2290万人(2007年6月)である。台湾最大の都市は北部盆地に位置する台北市であり、1949年以降は中華民国の首都機能を果たしている、人口は263万人、第二の都市の高雄は152万人で、人口の大都会への集中度は、たとえば人口の5分の1が首都に集中している韓国などに比べと少ない。

GNPは3,660億米ドル(2006年、行政院主計處)、.一人当たりのGNP16,098米ドル(2006年、行政院主計處)と高い。経済における日本との結びつきは強い。日本の新幹線の信号・車両技術を導入した台湾高速鉄道(台湾新幹線)も台北~高雄間に運行中である。この新幹線は外形のほとんどが新幹線と同じである。なお、最高速度は毎時300km近くで走行する。
●台湾の医療制度と医療事情

台湾では、対GDP比の医療費が、2005年で6.16%と、さほど高くない。寿命は、男性73.7歳、女性 79.8歳である。

病院数は、542で私的病院が85%を占めている。公立病院は79病院しかないが、台北市立病院のように統合によって10病院を経営しているグループもある。これは台湾北部では最大の病院グループなので、日本のような形態とはまったく異なっている。また、総計のベッド数は12万であるので、日本に比べるとかなり少ない。なおベッド数では、公立が総ベッド数の30%を占めるようになるので、公立は相対的に大きな病院が多いことになる。

一方、後述するチャンガン記念病院グループのようにグループのベッド数が8000以上の病院もあるので、寡占が進んでいるといえよう。

診療所は2006年に17700あり、人口を考えると日本に匹敵する数といえよう。実際に台北市などをあるくと、医院の看板が目に付く。

台湾の医療制度は日本の医療制度の影響を色濃く受けている。まず、国民皆保険がある。これは1995年に導入された。それ以前の医療保険のカバー率は55%くらいであったという。

雇用保険が1950年にできていたことを考えると、設立が非常に遅く、台湾では医療保険の重要性は最近になって言われだしたようだ。

医師は原則病院による雇用で、米国やシンガポールやタイの民間病院のような仕組みを採っていない。医師数は日本より少なく、権限が強い印象であった。

また、病院、診療所を問わずフリーアクセスである。したがって、病院の外来数も多く、これも日本の医療を髣髴させる点である。

保険は健保局1つに統一されている。全国を7つのエリアに分けて管轄している。保険の仕組みは日本とほぼ同じである。

保険料は、仕事の形態によって異なる。たとえば、普通の会社の従業員の場合には政府が10%、会社が60%、本に恩(本人?)が30%の保険料を支払う。貧しい人は全額政府負担である。

支払いには自己負担が伴うところまでは、日本と似ているが、紹介のあるなしで自己負担率が異なったり、病院の機能によって自己負担率が異なる。

具体的には、病院は3つのカテゴリに分けられる。アカデミックメディカルセンターがその頂点で、その場合には自己負担は紹介状がないと10%、あれば6%になる。地域の中核病院では、同じように、7%と4%、地域病院やクリニックでは、同じように2%と1.5%になっている。これは、韓国に似た仕組みである。ただし、お産や、重病、退役軍人や、3歳以下の子供などには自己負担はない。

また、入院期間の長さによっても自己負担が変わる仕組みも導入されている。平均在院日数も2002年で9日弱と短い。

病院への支払いについては、包括予算製の元で米国のメディケアでの医師への支払い方式に類似した診療行為に対する支払い方式がおこなわれているので、医師の診療行為(検査、画像など)は多くなりがちだ。1部に医療の質を反映した支払い方式も行われているようである。

一方患者の医療に対するコスト意識は低く、後発品を選ぶ、といった意識もないようであった。患者はICチップがついた診療カードを持ち、病名や画像診断の履歴、手術の履歴などが保存されている。

さて、多くの病院を見学したわけではないので、完全なことはいえないが、まず医療機関同士の競争が相対的に少ない感じがした。また、台北国立病院では、政府の要人を中心に診察するので、民間人は他の病院に行きたがるなど、国のカラーが出ている点も見られる。
●チャンガン記念病院

今回、話を伺った、チャンガン記念病院グループは、総ベッド数8000を越え、中国本土に進出したり、高齢者施設に進出したり、予防に進出したりしている巨大病院グループである。そのほかにクリニックも持っている。

このうち、台湾近郊の林口にある最も大きい病院では、ベッド数は3800ベッド、手術室が90という巨大さで、1日の外来患者は13000人、救急患者は1日300-400名という。イメージとしては少し古い大学病院といった感じであろうか。実際に病院は外来患者でごったがえしていた。これは米国や欧州の病院ではみられないことである。

医療の様子も、かつての日本を思わせるような光景であった。

日本でも、特に後期高齢者における、「かかりつけ医」の役割が論じられ、フリーアクセスに対する修正の議論が起きてきている。筆者が、ノスタルジックな気持ちになったのもそのためかもしれない。
●癒しの台湾

旅行社のキャッチフレーズに、癒しの台湾、というフレーズがある。そう、最近台湾は「癒し」で、売り出している。ここでいう癒しとは、食事や足裏マッサージなどをさすと考えられる。

しかしそれだけではない。

台湾では温泉も出るために、日本的な癒しの空間を作っている。ハイクオリティな施設もできてきている。一見すると、リゾート地のような感覚を持つが、実は台北からタクシーであれば30分もあればついてしまう距離にある施設である。
●まとめ

経済力もかなりあり、生活水準もアジアの中ではかなり高い台湾である。医療のレベルもそこそこに高いと考えられる。医療に関しては、たまたま見た病院がそうであったのかもしれないが、患者数が多く、少し前の日本を思わせるような風景であった。

高齢化が進みつつあるが、日本のほうが、財政上や高齢化において少しすすんだ部分があるので、今後の交流が期待されるといった印象を持った。

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