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臨時 vol 53 ロハスメディカル川口傍聴記「第二回現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」

医療ガバナンス学会 (2007年11月16日 14:29)


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~ かわいそうな厚労省案 ~
ロハス・メディカル発行人 川口恭

さる10日、11日と東大医科研で行われた『現場からの医療改革推進協議会シンポジウム』は大盛況で、非常に刺激的なセッションが続いた。どれを報告すべきか迷うところではあるが、傍聴記を書き続けている責任もあるので、厚生労働省死因究明検討会に真っ向から異論を述べる形となったセッション「医療紛争処理」の討論部分に関して報告する。

このセッションは、医療過誤で息子さんを亡くされた佐々木孝子さん、和田仁孝・早稲田大学法科大学院教授、河北博文・日本医療機能評価機構専務理事、上昌広・東大医科研客員准教授、野村英樹・金沢大准教授の順にプレゼンを行った後、上・野村の2人が抜けて、入れ替わりに日本医師会から出ている西島英利自民党参院議員、外科医の足立信也民主党参議院議員、亀田信介・亀田総合病院院長、西口元・東京高裁判事がパネリストとして加わって、鈴木寛民主党参議院議員が司会で討論するという次第だった。人数が多く頭が混乱したかもしれないので、討論に参加した人間を整理すると、参院議員3人、病院経営者2人、患者遺族・高裁判事・法律学者各1人である。

今からのご報告を最後までお読みいただくと、厚生労働省案の何がかわいそうなのか、分かってくるだろう。なお、ここに採録した意外にも随所に面白いやりとりがあったのだが、全部再現するととてつもなく長くなるので、詳録はロハス・メディカルブログ<a href=”http://lohasmdical.jphttp://lohasmdical.jp”>http://lohasmdical.jp</a> を、ご覧いただきたい。また、和田・上両氏がどのような発表をしたかは、<a href=”http://expres.umin.jp/genba/comment.htmlhttp://expres.umin.jp/genba/comment.html”>http://expres.umin.jp/genba/comment.html</a> で見ることができる。

司会の鈴木寛参院議員
「まず西島先生から。私は今日、やや西島先生の肩を持ちながらお話させていただきたいと思っています。実は自民党の先生方にも3名程お越しいただけないかお願いしたのですが、皆様大変お忙しくて今日は西島先生に来ていただいて大変ありがとうございます。舛添大臣も西島先生は3人分以上の方だからと言ってみえました。今日の議論は、この会の発起人でもあります舛添大臣にも、事務局の方からもご報告させていただきたいと思います」

西島
「今の私の立場は、党の医療事故紛争処理のあり方検討会の副座長です。今後この考え方をどういう形で作っていくか鉛筆をなめる立場であります。

私自身は、実は医療事故の担当を地域の医師会で6年間やってきました。まさしく対話型でないと何も解決しないということは十二分に分かっているつもりです。ただ、真相究明という時に出て来た観点等々では中々説明できない部分があります。その辺をどうしていくかという点が一番悩ましい所でありました。

今回厚生労働省が出した試案の中にはお亡くなりになった方を対象にするということになっています。それはどうしてかというと、いろんな事故が起きた場合、その全てを対処すると、とても処理が出来ないのが一点あります。二点目は生存されているのであれば、じっくりと事故の究明は出来るのです。ところが、お亡くなりになるとご遺体が火葬されてそれで終わりですから事故の究明が出来ないというところがあります。

あくまでも厚生労働省が検討会をやってそれを取りまとめた試案でありまして、これを我々が政治家の立場で立法する場合叩いていくわけですので、これは決して厚生労働省の考え方がそのまま立法されていくことではないということを、前提としてお話を聞いていただきたいと思っています」

厚生労働省が与党に対してだけは一生懸命根回しをしているのに、いきなり梯子を外してしまった。

「それと、もう一点これは箱物を作る話ではありません。先程箱物の話が出ましたがシステムを作るという話です。先程河北先生が無過失補償制度を日本医療機能評価機構でやっているという話がありましたが、実は最初の段階ではこれは日本医師会でやるという話でした。私はこれに反対しました。なぜなら、透明性が担保できない。ですので、無過失補償制度は第三者機関である日本医療機能評価機構でやることで透明性が担保できるので日本医療機能評価機構でやるようにお願いしました。私はだいぶ日本医療機能評価機構から文句を言われました。なぜなら、『また仕事を増やすのか』ということです。しかし、日本医療機能評価機構は、ある意味では一番学者さん達も揃っていますし、透明性が担保出来るのですね。そういう意味で今日本医療機能評価機構で準備委員会を作って無過失補償制度をやっているということです。そういう意味ではおそらく、まだ内容が決まっていませんがまだもう一つの仕事が行く可能性があるのかなと思っていますので、覚悟の方よろしくお願いします」

日本医師会を代表している議員が、「医師会だと透明性が担保できない」と堂々と言う。医師会は、そんなに向上心のない組織なのかと唖然とした。しかし、ここから聞き逃せない重大な発言が相次いだので、まあよいことにしよう。

「社会保険庁のお話が出ましたが、社会保険庁のでたらめさがありましたから社会保険庁を解体するので、社会保険庁の職員が行くことは100%ありません。それだけはお約束をさせていただきたいと思います」

検討会につきまとってきた、一つの懸念材料がハッキリと消えた。

「この叩き台は何かと言いますと、あくまでも患者さんからしてみたら、病因の究明をしていただきたいというのが一番の願い事です。それから、医師側にしますと説明をするためのデータが無いと患者さんとしっかりとした話し合いが出来ないという部分もありまして、そういう意味でまず一つには原因究明というシステムが必要であろうということがあります。その結果はどうなるかと言いますと報告書を作りましてご遺族の方、当然医療機関にお渡ししまして、大きく取りまとめた結果をそれぞれの医療機関にもう一つの目的である再発防止という形でやっていくとういうことです。そして、この報告書が出た段階で初めて患者さん、ご遺族の方の対話がスタートするのではないかと思います。ですので、これを区分けしてお考えいただけないと、このシステムについてはご理解が進まないと思いましたので整理させていただきたいと思います」

患者さんの願いは本当に「真相究明」だけだろうか? 他のものが優先する人でも、真相究明まで待っていなければ前へ進まないというのは、かえって紛争を大きくしないだろうか。これについては後ほどパネリストからも会場からも突っ込みが入った。

「先日、ヒアリングを2回に渡って行いました。弁護士さんの代表の方々もお出でになりましたし、大きな事故がありました都立広尾病院のご遺族の方もお出でいただいていろんなご意見いただきました。このシステムについては基本的には賛成の方向で良いということです。ただ、細かい所で様々な問題があります。その時の細かい所が何かといいますと、どのような症例を対象にするのか、どのような症例を届け出の対象にしていくのかということが今後の議論になっていくのかなと思っています。この時に、弁護士が言われたのは、刑事事件にこの報告書が使われるということが書かれていますので、それは何かというと、故意に行ったもの、重過失については刑事事件の対象にしないといけないのではないかという意見でした。私もそれは賛成です。重過失をどのような形で整理していくかということも、今後の議論だろうと思います。

それから、届け出を義務化するということになりますと、別の問題が起きてきます。将来的にそのような方向で使われるということは当然あります。当然それに対して隠蔽が行われる可能性もあります。届け出をしないということが当然起きる可能性があるということです。それで、大事なことは免責を必ず入れていかないとこのシステムは機能しないだろうと私は思います。ただ、何でもかんでも免責を出さなくて、先程申しました故意や重過失は事故調査の中できちんとした結論が出てくるわけです。そういう意味で、医療機関はそのような流れを作っていく必要があると思います。いずれにしても、免責を入れないと義務化は出来ません。そういうことがこれから法律を作っていく上での重大な議論になっていく部分でないかなと思います」

厚生労働省試案では、義務付けと罰則がセットになっていて、それを了承したはずだが、どう整合性を取るつもりだろう。

鈴木
「報告書を読んでいただけでは分からない点を非常にクリアに解説していただきましてありがとうございます。

次は亀田先生。一つ私からポイントを提示させていただきたいのは、結局誰がチェックをするということが機能するということかなということだと思いました。

おそらく三つ位主体があって、一つは厚生労働省ないし警察庁という公権力がチェックをするという考え方です。しかしその場合、能力の問題、マンパワーの問題がある。第二のグループは専門家によってサポートされた患者さん、あるいはご家族自身がチェックをする。あるいはネットワークが付いてくるのだと思います。そのような方法論です。三つ目はまさにピアーチェックと言いますか同僚の医師であれば医師コミュニティー、専門家のコミュニティーで、弁護士会はそのような構成を取っていますがピアでまさにチェックをしていくのだということです。そのどれかを選ぶという話ではなく、ベストミックスが議論の方向性としては正しいのだと思います。

これは一つのフレームワークということでお話をしました。どのような角度からでも結構です。ご意見をいただければと思います」

亀田
「まず、現場でやっている実情からすると現実には我々の所でもそうなのですが、今まででは送られて来なかったアッペとかの簡単な手術が急激に増えています。それはどういうことかというと、周りの中小病院が手術をやめているということです。それで、手術数が増えているのですがその多くが特に地域の人に関しては従来亀田総合病院でやらなかった簡単な手術が増えてきてます。これは立ち去り型だと思います」

萎縮医療がまさに進行中という。ロハス・メディカルでも特集することになっているので、ご期待いただきたい。

「亀田総合病院ではよちよち歩きでメディエーションもどきというものを、和田先生からもご指導をいただいて始めています。それで、我々は過誤が少しでもあれば当然セーフティーマネージメントではなくリスクマネージメントと考えた時、最も重要なことは、最も危険なことは隠蔽です。要するに情報公開ということが一番自分達を守ることになります。

そういう意味では医療者の良心を信じていただくしかないと思うのですが、いずれにしても、医療過誤であればこちらから謝罪もし、交渉して和解もするということで最終的にはお金も掛かるということです。この財源をどうするかということですが、亀田総合病院では倍々ゲームです。事故は必ずありますからそうすると和解をしますので、病院は出来るだけ多く保険会社からお金を出してもらおうとするわけです。そうすると保険への掛け金が倍々になるということが現実に起きています。

医療事故と医療過誤をどのように分けているかという問題がありますが、基本的に裁判になるのはほとんどは我々としては防ぎようが無かったし、きちんとやっていたと信じるものについて職員の心を考えた時にこちらがよれたら、みんなやらなくなってしまうなという問題については行く所まで行くししかない。その時こそ本当は情報公開と言いながら、今度病院が全部の情報を公開したいと言うとなかなか情報を強者と思われている病院が情報を公開することは酷いのではないかという話になって来るわけです。

この辺を整理をきっちりつけて、やはり情報を公開すべきだと思います。裁判まで持っていくなら情報を公開して、もちろん個人のプライバシーは当然守るものとして、公開討論まで持っていくようなこことが医療機関側にも権利をいただきたいと思います。

(中略)

ともかく、医療事故は最低限にしないといけないが、必ず起こります。その時にお互い納得するための制度をお金も含めて誰が財源を支払うのか。結果責任まで取ることは本当は良いのですが、結果責任に支払う医療費の中で持つのかそれとも、掛かる患者さんが納得の上でリスクに対して自分達で保険料を上乗せして払うのか様々なやり方があると思うのですが、そこまで含めてこの問題は大きく捉えていかないと、実際に現場では難しい問題が次々に出てしまうのではないかと思います」

事故調があれば問題は解決するというような単純な問題ではない、ということだ。

鈴木
「ありがとうございました。それでは、西口先生よろしくお願いします。この会に現役の高裁の判事さんにご参加いただいたということに非常に感謝しています」

西口
「医療過誤によって萎縮医療、萎縮診療が始まっているということは先生方の過剰反応ではないかと思っています。裁判所が認めることはよっぽど酷い案件です。それを少し誤解があるのかなという感じがします。多分先生方も裁判官は素人で良く分かっていないという面で見ていると思います。確かにそういう面もあるのですが、素人の立場での判断を出しています。

最近出した本で書きましたが鑑定書が出てくるのです。鑑定の前提事実を間違っているとかカルテの見方を間違っているという問題が結構あります。カルテの記載と証言をした医師、看護士の証言が違っているということがあります。そうすると最終的に裁判所が判断せざるを得ない。前提を間違っていたら鑑定が全く違います。それから医療文献の引用箇所が間違っているということが結構あります。こういう鑑定がざらにあります。こういう医師は当然信用出来ないということになります。

あとは、自信のある先生が若干多いので過失の判断までしてしまうのです。過失の判断は裁判所の専権事項であります。ですので、過失の判断まで言う必要はありません。先生方は医師としてこのように思うと言うだけで、普通の医師ならこのようなことはしないということは、最高裁の判断事項であります。ですので、先生方もそれ程怖がるのでなく自信を持ってやっていただければと思っています。

(中略)

おそらく行政庁が作ったADRが使用されないということは国民が全く信用していないということです。行政庁は信用が無い、医師はお互いかばい合うという所がどうもネックになっていると思います。それで、全て裁判所に来るということになります。その辺の中立性を維持して欲しいということがあります。私自身も5、6年前に和解の実態調査を東大の先生と一緒にやったのですが、当事者の原告本人ですが、満足度が上がる一番の理由は公平でした。公平であれば裁判所は議論をする。公平であれば満足度は高まります。この辺も無視出来ないと思います」

判事の生の声というのは実に貴重であるが、「よほどヒドイ」というのがどの程度を示すか分からないうちは医療者たちの疑心暗鬼は止まらないと思う。

鈴木
「いろんな無念な思いを持った患者、家族の数を件数化した時に多いと見るか少ないと見るか。泣き寝入りとは言いませんが、本当はいろんな思いがありながら、それをどこにもぶつけられずに抱えたまま来る患者、家族がそのような(医療訴訟が年間に)900件という桁の数ではないのではないかと思います。その中で、900件全部を裁判所というわけにはいかないと思います。もっと社会全体として多様な選択肢が必要という議論が必要ではないかと思いました。それでは足立先生よろしくお願いします」

足立
「鈴木寛先生の質問が果たして誰がチェックするかということでした。その前に司法の裁判の前の公平性の話が先程出ましたのでそちらを先に申し上げます。2000年位に消化器外科学会の中で、司法と外科医の接点を探るというシンポジウムがありました。裁判所では、それだけの思いを持って訴訟までして何とかしたいという被害者の思いを遂げさせたい。誰に責任があるか決めなければいけない、ということを言っていました。これで公平性が保たれるかという話をしたいと思います」

会場が沸いた。

「誰がチェックするかという話ですが、二つ意味があると思います。原因究明、調査に関して誰がチェックするか。それは専門家がやれば良いという話になります。モノによって違うと思います。研究所が必要であったり大学が必要であったり、事案によって変わると私は思います。

では、システム全体のチェックを誰がするのかということですが、これは相談、届け出された所です。私のイメージは、がん対策基本法の話が出ていましたが、二次医療圏内に相談センターを286作り、そこが窓口になる。そこが進捗状況をしっかりチェックする、そうすればよいと私は思います。質問に対しては以上です。

(中略)

何が原因かと言いますと、日本人は医療事故と医療過誤の区別がついていません。上先生が発表したことは医療事故が何なのかからスタートしています。鈴木寛先生が言われたことは、モノ言わぬサイレントマジョリティの思いをどこで受け止めるかという話です。佐々木さんのことがありましたが、訴訟出来た、裁判まで持っていけたということは、ほんの一部です。しかし、分からない、疑問を持っているという方は大多数います。その人達の思いをどのように受け止めるかということがこの考え方です。過失の有無からスタートする。そこら辺で少しズレがあるという気がしました。

先ごろ、小松先生の論座か何かの論文でその通りだと思ったことがあります。西東京市で開かずの踏切があります。1時間中50分開きません。危険なので自動的に踏切を制御しています。その脇に人間が押しボタンで開けられる仕組みがあります。そこで、可哀相ななかなか踏切を渡れない方がいたので、押しボタンで開けてあげたら事故に遭った。罰せられた人が押しボタンを押した人なのです。これはシステム上間違っていますよね。わざわざ機械的に自動的に制御している所にわざわざ隙間を作って、その人だけが罰せられている。こういう考え方が医療事故と医療過誤の区別についていない所からスタートする。対象はサイレントマジョリティである。そういうことを強調したいと思います」

鈴木
「足立先生ありがとうございます。先程西島先生も定義はどうするのかという問題が難しいということを言ってみえました。おそらく同じ問題意識だと思います。今日は高久先生にお見えいただいています」

高久史麿・日本医学会会長
「今、亀田先生が言われましたが、私も大学の病院にいるのですが、病院とよく話をするのですが、非常にマイナーな手術が殺到してきて外科が本当にパンク状態になってきて、かえって重要な手術が遅れるということで危機感を持っています。

それから、先程厚生労働省の事故調査の報告について11月2日までにコメントを日本医学会の臨床部会の運営委員会というものをやっていまして、初めの原案は大変厳しいものでしたが、運営委員に虎の門病院の山口徹病院長がみえて、是非厚生労働省の室長の話も聞いてもらいたいということを聞きまして、何となく何かをしたという非常にトーンダウンをしました。

一つは19学会が調査機関を作れというコメントを出しています。その辺は評価出来ます。一番問題になったことは、診療関連死の定義を皆様がハッキリ明確に、しかも医療従事者が納得出来る定義を樹立してもらいたいということが一つのポイントだと思いました。

ところが大学に戻りましたら、私共の大学に今年から来た医療事故に詳しく、元々東京電力の電力関係の事故から専門にやっている河野龍太郎准教授が、理由はハッキリ言いませんでしたが、厚生労働省の第二次思案を見て国際的な恥だと言っていました。いつか河野龍太郎准教授のお話を聞く機会があれば良いのではないかと思いました」

「国際的な恥」などという視点は私には毛頭なかったが、そういうこともあるのだろうか。

鈴木
「高久先生ありがとうございました」

ここで河北・河北病院理事長が無過失補償制度について述べ、パネリストや会場を巻き込んで大変刺激的なやりとりが行われたのだが、あまりあれこれ紹介すると訳分からなくなるので割愛する。興味のある方は、ブログの方をご覧いただきたい。

鈴木
「佐々木さん」

佐々木
「裁判と言いましても、裁判をするのは簡単です。それでどうなるかは弁護士の力量によるかもしれませんが、弁護士も裁判官も医師ではありません。ですので、そこに医療過誤を持ってきても裁く時には専門の医療者が必要です。ですので、私達の時はそれは分からなかったと医師が認めたわけです。それは今なら分かると言いました。それでは過失を認めますねということで認められたわけです。そこで明白な事例でしたから裁判長も過失を認めたということで判決が決まりました。

しかし、被告が控訴したので二審に入りました。なぜなら、鑑定が出ていなかったのです。鑑定無しで被告が過失を認めたので一審の判決が出たのです。裁判長は医師が認めているので鑑定はいらないということで勝訴しました。しかし、被告が控訴したので私は本人訴訟でしたから、控訴審で裁判長、裁判官、判事、被告の弁護士が出て来て部屋で話し合いました。その時の裁判官の話が『私も医師ではないし、分かりません』と言っていました。弁護士も『医師ではないから書きようがない』と言いました。それで、裁判所から鑑定を頼みました。それで、一審通りだという簡単な鑑定が出て来たわけです。医療者ではないということで本当に難しいという判決でした。

それと、患者は本当に裁判するのは簡単ですが、とにかく医療者から話が聞きたいということが一番にあります。そして、医療者から話が聞きたいということになると本当にそういうことは聞いてもらえません。そうなると、私達の方にも話を聞いて下さいという電話が掛かってきます。それで一時間位話されます。北海道からでも九州からでも。それで相槌をされますと、本当に話を聞くだけでスッとしました。と、納得されるのです。ですので、裁判に行く前に話し合うというADRが本当に必要だと私は思います」

鈴木
「ありがとうございます。土屋先生どうぞ」

土屋了介・国立がんセンター中央病院院長(会場から)
「先程、西島先生のお話で私が少し引っかかったことは、原因究明の調査をして、その結果が出た所から家族への対応が始まるという表現がありましたが、そこの段階ではもうすでに家族の不満が爆発しそうな所になっていると思います。

今佐々木さんが言われたその前のメディエーターが大変大事だと思います。副院長を4年間やって、毎月のようにそのようなことをやって、裁判を4つ抱えるということをやっていますと、問題が発生した段階から真面目に院内での調査機関をやっている我々でも調査に3ヶ月位掛かります。その間に副院長で調査委員長もやりながらメディエーター的なこともやる。メディエーター的な所が手薄になるからその所が家族は不満なのです。その間に誰が担当して家族の相手をするのかがものすごく大切です。そこが上手くいかないと調査結果が出ようが出まいがニッチもサッチもいかない。その手前のメディエーターの所がぜひ上手く機能して欲しいということが現場の切実な願いです」

完全に西島議員は孤立無援である。
「先程申し上げましたが、ADRと訴訟は区分けして考えて下さい。私は医療事故の担当を6年やりました。まずはそのような事故が発生した時には必ず御家族との話し合いからスタートしていきます。2、3ヶ月位何回もお会いしながらご理解を求めました。もちろん医師に過失があれば身を医師が切る、そこが一番大切です。先程申し上げました原因究明が不明な場合があります。その場合このシステムを使わないことには次のステップに進みません。そういう意味では原因究明のある程度の報告書が出た段階で本格的なADRがスタートするのではないかと私は申し上げました。その間放っとくということではありません。

一番大切なことは、先程から謝罪の話も出ていますが私は医療事故を担当した時、医師の皆様に言いましたのは、まず謝りなさいということです。家族のご期待に応えられなかったことに対して謝りなさいということが私の考え方です。それが本当に医師の過失でそのようになったのかどうかは別の問題です。ですので、そのためのシステム作りは必要だと先程申し上げましたので言葉足らずで誤解を
生んだかもしれません」

これで済むかと思ったら、土屋院長はさらに追及する。 「対応の仕方は大きな病院は徹底していると思います。その上に佐々木さんの気持ちを考えるとさらに足りない部分が病院にあると思います。それが、今のメディエーターの講習会に沢山出席することで現状が出ていると思います。どちらが先かという問題ですが、私はメディエーターの方を先にやって欲しいということが現場の大きな声だと思います」

鈴木
「佐藤先生どうぞ」

佐藤章・福島県立医大教授
「ADR、無過失補償に関しても先生方がすごく努力なさって、これだけ盛り上げてくれて、前に進みつつあるということは私にとって非常に喜ばしいことです。

根本的に私が申し上げたいことは医事紛争で訴訟になった場合、民事と刑事が全く違うのだということです。今私自身が抱えている問題については刑事問題なのです。そうなると根本的に私がお願いしたいことは、業務上過失致死が医療事故に適用されないような方向に持っていかない限り、医師は皆不安になります。医療の萎縮、崩壊ということは皆どのように思っているかというと、刑事問題になって逮捕されると思っています。それなら我々はやらないということになります。患者さんは一生懸命努力したが、不幸にして亡くなったということに関しては民事で何とかしてくれないかということであります。刑事罰に対する恐怖があり、それなら我々は何もしたくないということになってしまっている現状を変えるために、先進国でやっている医療事故に対して刑事罰が適用されず、業務上過失致死ということはありません。そこを、自動車の交通事故とは違うという発想が一番最初にあったら、その診療行為に関連した原因究明、 ADRそれから無過失補償というような順序に行くべきであって今見ていると無過失補償の方から行っています。結局、刑事側としては捕まえる。司法としては今の法律が変わらない限り、あなたがこのようなことをやっているのだと言って、少しも我々の不安を解消してくれる所まで行っていないということを私は思います。そこを根本的に考えていただきたいと思います。それが我々臨床医の切実な考えです。」

最後まで西島議員は弁明に追われる。
「簡単に申し上げますと、そもそも医師法21条の厚生労働省の解釈は、殺人もしくは虐待で患者が運び込まれて来た時は、刑事事件に発展するわけですので、是非24時間以内に警察に届け出て下さいという協力要請事項でした。

それが平成6年に日本法医学会が一部の方ですがガイドラインを出されて、診療中の死亡事故も異状死体とされました。ここから考え方が変わっていきました。平成12年に国立大学附属病院長会議がありまして、医療事故もしくは医療事故の疑いがある場合には速やかに警察に届け出ることとし、その下に医師法21条と書いてありました。ところが、これは解釈の大きな変更ですので、厚生労働省、医政局の意思でしっかり検討してやったのかというと、医政局は関わっていません。ですので、厚生労働省の解釈は変わっていません。変わっていませんが、都立広尾病院の事件が起きまして、裁判になり憲法論議までやったのですが、最高裁で届け出ることについては当然やるという判例が出ました。そこから考え方が完全に変わってしまいまして、24時間以内に届け出なければ逮捕という話が出て来ました。

福島県の大野病院事件は、事故が起きて病院で検討会を開いて再発防止のための報告書を作りました。それを警察が見て医療事故ではないかと言われ、なぜ24時間以内に届け出なかったのかということで医師法21条で逮捕されました。こういうことが起きましたので、今の流れがあります」

鈴木
「和田先生どうぞ」

和田
「今、制度の切り分けの所から議論がありましたが、同じことを被害者の患者さんの思いから見ていく必要があると思います。先程、ADRのような対話の場という場面と、原因究明、刑事の問題は切り離して考えると言われました。

しかし、被害者の気持ちから見ると、それは全て繋がっています。例えば、なぜ刑事の方に行くのか。最初から刑事の追及、個人の責任を追及したいと思っていない。なぜそうなるかというと、原因究明、真相究明がなされていないという理由があります。そこで、真相究明がどのような仮説で出来ているかと申しますと、現在のシステムとして考えた場合、医療事故調査委員会は様々な機能を抱え込もうとしすぎているのではないかと思います。

例えば、21条の問題を今度医療事故調査委員会に報告する際、重過失なのかどうか線引きをする要素は、法律家が関わらなければいけないし、医療事故調査委員会の手続きが非常に重くなります。そこで、重過失ということになれば警察へ行く。しかし、その時には医療機関から届け出があって重過失かどうか判断して刑事に行って、司法解剖になります。患者さんがチェックする場が全くありません。実際現時点でも医師法21条で医療機関が届け出たことによって、そのことで患者さんが傷つく。真相究明は、解剖をして客観的な結果を見いだすということより、もっと患者さんの思いは広いと思います。日本的な発想かもしれませんが、遺体というものは自体が亡くなった方そのものだし、解剖に対して非常に抵抗があったりします。

そういう時に重過失かどうかの判断は警察もしくは裁判所がやればよくて、発動のイニシアティブを取るのは患者さんの思いであって、患者さんに取ってもらいたい。ですので、真相究明も患者さんが初発点になる。初発点の所でしっかりケアを対話のような形でADRしながら動かしてもらいた。そこで、常に患者さんをポイントにしておくという形にすればそこでしっかりした手当がされれば、患者さんは何も無理矢理刑事の方の告訴するとかということにはならないのではないかと思います。切り分けではダメではないかと思います」

鈴木
「足立先生どうぞ」

足立
「簡単に申し上げますと、共有する考えとして説明が大事である。そして、先程謝り方のことまでありました。それなら、なぜ行政権限を持っている厚生労働省が届け出先になるのか。そしたら、正直な話し合いなんか出来ません。根本的な誤りはそちらにあると思います」

時間をだいぶ過ぎたが、どこまで続くのだろうと思っていたら、会場中央に座ってた厚生労働省検討会のメンバーでもある豊田郁子・新葛飾病院セーフティマネジャーが右腕をまっすぐに挙げた。

「豊田と申します。私は、医療事故の被害者遺族で、なおかつ病院内で院内メディエーションを実施しています。厚生労働省の検討会のメンバーです。

医師が萎縮してしまう気持ちになることは理解出来るんですが、先程から院内メディエーションを中に取り込みたいという意見が沢山ありました。それは、病院がしっかり向き合う姿勢をしてこなかったことを認めることと同じだと思います。怖いということもあるかもしれませんが、病院が患者や遺族の気持ちに対して病院側がシャットアウトしてしまっている現状があります。そのことから仕方なく、皆刑事告訴や被害届を提出しているという現状があります。

私も刑事で問いたくなかったのですが、1年間どうにもならなくて仕方なく被害届を提出しました。結果的に不起訴になりましたから、その医師は全く行政処分も無く、依願退職で何の処分も受けていません。しかし、実際そのような例もあります。やはり、医療機関の中で自浄作用を行ってこなかったことに対して、考えていかなければ、いくら様々な法案を考えても国民や患者さん達は理解出来ないと思います。

実際に院内メディエーションを私が実践していることで、病院の中での反省点、改善点が本当に見えてきます。その向き合う姿勢を見ていただいたことで患者さん達が医療者に対してすごく思いやりの言葉が出てきます。感動することが沢山病院の中で実際起きています。ですので、佐々木さんが先程から言っている法的な過失の有無だけを言っているわけではないと思います。院内メディエーションすることで法的な部分だけではなく医療者が変わらないといけない所、反省しないといけない所を見ていただいて患者さん達は最終的には医療者を応援する日が来ると思います。

私も医療界の中に飛び込んだことで、現状の大変さを思い知らされていますから、心から心ある医療者に対しては応援したいと思っています。しかし、自分達は大変だとばかり言っていたら応援する元気が無くなってしまうのです。そこを分かっていただきたいです。

ですので、今日こちらの協議会の方で新しく考えられているものを読ませていただいて賛同する部分はかなりありますが、中には遺族がこれはと思う部分が正直あります。それは、遺族の気持ちを本当に聞いているのでしょうかという気持ちです。ですので、今現在これを出されるのでしたら、患者支援法案という名前ではない方が良いのではないかと思います。どうして、医療者の皆様が議論している所で医療者支援法案という名前が入らないのかと思います。私は、別に批判だけをしているのではありません。一緒にやるためには自分達が大変だということだけではなく院内で行うことを皆で協力しましょうということです。是非私にも協力させて下さい。仲間に入れて下さい。患者の声を中に入れて下さい。それが本当の声なき声だと思います。よろしくお願いします」

会場から拍手が沸き起こった。ついに検討委員の中から、厚労省案と似ても似つかぬ協議会案に乗りたいという人が出てきた。きっと次回の検討会は大荒れに荒れるに違いない。

自民党に梯子を外され、患者代表の委員からも見限られた。なんとかわいそうな厚生労働省案!

(さらに詳しい詳録は、ロハス・メディカル・ブログ<a href=”http://lohasmedical.jphttp://lohasmedical.jp”>http://lohasmedical.jp</a>
をごらんください)

 

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