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vol 22 重度心身障害児に光を!平成版「しいのみ学園」

医療ガバナンス学会 (2007年11月15日 14:28)


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埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科 大西秀樹

「しいのみ学園」ご存知でしょうか?福岡県福岡市にある知的障害児通園施設です。昭和29年、園長先生である曻地(しょうち)三郎先生(福岡教育大学名誉教授)が当時学校にも通えない状況にあった重症心身障害児、脳性小児マヒの子どもさんのために私財を投げ打って作られた学校です。開設に至るまでの経緯、苦悩とその後の経過は1冊の本にまとめられ、当時のベストセラーになっています。現在もこの本は購入することができ[1]、園長先生をはじめとした学園の先生方の優しさ、救われた園児、ご両親の感謝の念が書き記されており、現代の私達に感銘を与え続けるものであります。

今回、ご紹介したいのは平成に入ってもなおも輝きつづける「しいのみ学園」に続く「平成版しいのみ学園」と言ってもよい施設を作った小児科医、能見台こどもクリニック(神奈川県横浜市)の小林拓也先生(45)がその人です。

小林先生は横浜市で小児科医院を開業していますが、医院の2階に重症心身障害児を日中預かるための施設を作っています。小林先生は神経学が専門なので神経難病をはじめ重症、起きあがることもできない子どもさんを日中預かっています。

子供さんたちは自分で声も発することができず、起き上がれません。食事も自力で摂取できないので多くの子どもさんがチューブ栄養で栄養を受けています。からだも小さく、手足は触ると折れてしまうほど細い子供達が病院のスタッフによりケアを受けています。

これら子どもさんをみていますと、看病するお母さんはとてもとても大変であろうと容易に想像がつきます。自宅でのチューブ栄養、お風呂、おむつ交換・・もし、この施設がなかったら・・・・多くのお母さん達は参ってしまうのではないでしょうか。この施設に通う子どもさんの親にとっては救いの場所に違いあり
ません。

このような施設を作ったのですから、開設のためのコンセプト、理念など熱いものがあるのかと思い、小林先生に施設開設の動機をきいたのですが、「ここが私の存在意義なんだよね」と淡々としており多くは語りませんでした。しかしながら、障害をもった子供さんたちを当然の事としてケアをする姿勢に感動を覚えました。

昭和20年代、重症心身障害児が通学するための施設がないため、私財をなげうって作った「しいのみ学園」。社会的弱い立場にある子供達に対する考え方およびその考えを行動に移す力、愛情は本当に素晴らしいものがあります。平成に入って、教育と医療で立場は異なるものの、同じ考えに基づいて施設を作った小林院長にも「しいのみ学園」と同じものを感じるのです。

能見台こどもクリニックでの活動、大きな組織としてではなく、個人を中心とした組織でこのような活動をしている医師もいるのだということを知ってもらいたくて筆をとりました。

曻地先生の本にあったサインの言葉
「科学には限界があるが、愛情には限界がない」

クリニックに通う子どもさんのお母さんの声、
「小林先生こそ、本当のお医者さんです」。
参考文献
1. 曻地三郎 「しいのみ学園」 、梓書院、2001年

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