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臨時 vol 52 ロハス・メディカルインタビュー「与謝野馨・前内閣官房長官」

医療ガバナンス学会 (2007年11月12日 14:30)


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~ 世界一の医療制度、守るには「国民の割り勘」を増やすことも必要 ~

聞き手:ロハス・メディカル発行人 川口恭

 

――昨年10月に下咽頭がんが見つかり、国立がんセンター中央病院で13時間にわたる切除・再建手術を受けたと『文藝春秋』で拝読いたしました。患者体験のある政治家として伺いたいのですが、現在の日本の医療はうまく行っていると思いますか。

我々が昔読んだ話として、お金がないから医者にいけないとか、貧しさゆえに医療を受けられないとか、そういう悲しい話がたくさんありました。でも今はそうではない。

日本の医療の素晴らしさは、すべての人が平等に最前線の医療を受けられる。それが一番の特徴だと思います。過疎地の医師不足とか個別には問題がありますけれどね。原則としてすべての人が費用の心配なしで受けられる素晴らしい医療制度。私は世界一の医療制度だと思っていますよ。

それからね、少しの金額を個人負担したなと思っていたら、後に区役所からお金が戻ってきました。なんと手厚いシステムになっていることかと思いました。

日本の医療は富める者、貧しい者で受ける医療に差がない。お金の心配をしなくて良い、本当に素晴らしいと思います。
――医療スタッフの質は、どのようにご覧になりますか。

患者として接した看護師の方々は、勤務条件も良くなくて、昼間の勤務から夜になったりして大変だなと思いました。でも出会った看護師さん達は、患者さんのためという使命感に燃えてやってくださっている。こういう若い人たちが存在することは、日本の救いだなと思いましたよ。
――そのスタッフの勤務条件が医療費の削減で悪くなっていると言われています。

結局、開業医と勤務医とを比べると現実において開業医の年収の方が多いですよね。開業医の果たす役割は非常に大きいのだけれど、しかしながら勤務医の年収が低すぎるのは直さなければならない、と思っています。勤務医の過酷な勤務条件は直らないにしても、収入の面で開業医と差があるのは望ましいことではない。
――差があるのは望ましくないから、開業医を下げるということになるのでないか、と業界では警戒する声が上がっています。

医療費というのは放っておくと年5%上がるんですね。1%は高齢化の分で1%は高度化の分ということで説明がつきます。しかし残りの3%はうまく説明がつかない。

日本の制度が、あまねく全ての人に同じ医療を提供しているのは優れていますけれど、いろいろな歪みを直していかないと、それでなくても高齢化で保険医療が苦しくなってしまいますからね。せっかくこんないい制度つくって、少なくとも大病をしたとしてもお金がないから治療が受けられないという昔の悲劇はなくなった。この制度を守る必要があると思います。そのために必要があれば、国民の割り勘を増やすことも考えないといけないんじゃないですかね。
――国民の割り勘、それは保険でしょうか、税でしょうか。

保険だろうと税だろうと、国民の財布から出ることに変わりはないのであって、区別するゆえんはマクロ的にはありません。ただし保険料でないと医療費と自分の払ったお金との間に一対一の対応関係がなくなるので、税にすると医療費との関係が薄まっちゃうという危険性はあります。
――下世話な感覚では、保険料だと厚労省所管だし、税だと財務省所管だなと考えてしまうのですが。

それは関係ない。お金が余っている状況ならともかく、足りないのだから。
――話を戻しまして、開業医の収入を下げると、勤務医が将来に希望を持てなくなるという説もあるのですが。

簡単ではありません。開業医の方が素晴らしい医療を行っていること場合もあるし、個別のケースによって異なる。しかし少なくとも、勤務医の給料を少し上げておかないといけないのでないかとは思います。とはいえ、勤務医も給料だけではなく、社会的使命などを喜びとして感じているのではありませんかね。
――先ほどのお話では、2%は自然増するということでしたのに、社会保障関係費の伸びにはシーリングがはまってます。

まず無駄を何とかしないといけない。そんなに金額があるのか分かりませんが、終末医療とか慢性疾患とか、お金のかけ方を見直した方が良さそうな分野はいろいろあります。そういうところから始めて、保険ではなく自己負担してもらった方がよい部分はあると思います。いずれにしても、これからの精査ですよ。
――ロハス・メディカルを読んでらっしゃる患者の皆さんに対して言いたいことがありましたら。

日本の医療は世界レベルに達しています。非常に特殊な分野、実験的なもの、アメリカなどで先進的に行われているものは除き、どの県に住んでいようが高度な医療を受けられます。がん治療のようなものには、東京から導入が始まって、地方へ波及するタイムラグがありますけれど、そんなに大変じゃない。格差があるのは、特殊な分野のことです。

そういう前提で、患者にとって大事なのは医師を信じることだと思います。ただ、信じる前にもう一人別の医師の意見を聞きたいと思うのは自然なことで、昔は遠慮もあったようですが、今はむしろ医師からよく尋ねていただきましたと感謝されます。だからセカンドオピニオンも取ればいい。そのうえで信じることが大切です。

ここで言う「信じる」とは、医療は事実に基づいているのだから、どんなに難しい病気であっても、民間療法よりはいいということです。この水がいいとかキノコが効くとかありますよね。趣味や精神安定剤として飲むことまでは否定しませんが、医療の方がはるかに事実に基づいているのだということを忘れたらいけないと思います。もう一つの意味として、「信じる」とは、治るんだ、治すんだという気持ちを持つことでもあります。患者の気の持ち方と結果との相関に関しては世界各国で研究が行われていて、強い気持ちを持った人の方が治癒率は高いはずです。治すという気持ちを捨てないでくださいと申し上げたい。あと、もう一つ自分の病気について勉強すること、これも大事ですね。
――最後に医療者に言いたいことは。

患者を実験台に使っちゃいけないということですね。できもしないのに内視鏡で手術をやったというのがあったじゃないですか。ああいうことはあってはならない。医療者にはモラルが求められると思いますよ。
(よさの・かおる)1938年東京都生まれ、63年東京大学法学部卒業。サラリーマン、中曽根康弘氏の秘書を経て、76年衆議院議員、当選9回。文部大臣、通産大臣、自民党政調会長、経済財政兼金融担当大臣、党税制調査会長を歴任。党財政改革研究会会長。

(このインタビューを抄録したものが、『ロハス・メディカル』08年1月号に掲載される予定です)

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