医療ガバナンス学会 (2007年11月11日 14:30)
欠席者が鮎澤、児玉、辻本、山口、山本の5委員と過去に例を見ないほど多かった。5人の席はあらかじめ外してあり、ずいぶんスカスカして見える。さらに、間が悪いことに前田座長は風邪をひいたらしく鼻声である。
空気が重苦しいように感じるのは、それだけが理由ではなさそうだ。厚生労働省の第二回試案に対するパブリックコメントが2日に締め切られた。その報告をするための日程だったようだが、前日に「混合診療禁止に法的根拠はない」という衝撃的な東京地裁判決が出てしまった。年金・薬害肝炎でも大概だなあと思っていたが、悪意のなかった藤枝市民病院を血祭りにあげた、あれはいったい何だったのかと考えると、もはや厚生労働省の命脈は風前の灯だなあという感慨を覚える。
この日は、冒頭に30分ほど事務局がその要約報告をし、それに関して議論するという次第。パブコメは全部で104件あったそうだが、事務局で部分部分をつまんで要約してあるので、実際にどのようなパブコメが寄せられたかはよく分からない。ただし委員には全文が行っているようで、パブコメの内容が委員や事務局の心境に変化を与えたものと思われ、今までで最も充実した中身のある検討会だった。最初から、こんな風に真面目に議論していれば状況は随分違っただろうにと思う。
前置きはそれくらいにして、各委員の発言を拾っていこう。
前田座長
「私も全部読んだが、パブコメとしても非常にレベルの高い中身の濃いものだった。事務局もまとめるのは大変だったと思う。これを踏まえて議論していただければ。目次に沿って伺うのでなく、全体について、できればパブコメをきっかけにご発言いただきたい。今回もできれば全委員からご発言いただきたい」
樋口委員
「メモを作ってきたので少し時間をいただきたい。これだけの分量のパブコメをいただいたわけだが、過半数は医療者からで、中には相当厳しいものも含まれていたと思う。それを読んで感じたのは、我々の説明不足というか、この検討会で何を議論しているのかが十分に伝わっていなくて、このようなご意見をいただく部分もあるのかなと。その誤解を何らかの形で解きたい。あるいは誤解ではなく、こちらの考えが誤っている部分もあるのかもしれないが、いずれにしても、そういう意図で発言したい。
まず、事務局を務めてくださっている佐原さんの役職は医療安全推進室長であるが、まさにこの検討会の目的は医療安全のためということを改めて確認しておきたい。医療安全は英語でpatient safetyという。それを日本語に直訳すれば患者の安全ということになるわけで、まさに誰もが異論のないところだと思う。その旗を高く掲げる機会を作りたい。もしこの検討会から何かが生み出されるとするなら、それが第三者委員会なんだろうが、過去につらい目にあった患者や遺族から『あの時にこの委員会があってくれたら』と思ってもらえるような組織にしなければいけないのだと思う。
それから、こういう風になった経緯を整理しておきたいのだが、今世紀に入って医療事故が刑事事件になることが増え、マスコミにも大きく取り上げられるようになった。刑事司法の動きが一定の警鐘になり、そのことによって医療界が今までになく結束して組織的対応をしようという動きを見せてきた、その刑事司法の果たした役割は評価しなければならない。医師法21条も10年前まで、法律家も誰も知らないし、医療者だって知らないような法律の条文だったと思う。それが今では誰でも知っている。刑事司法が大きな影響を与えてきて、その中には良い影響と、ちょっとどうかなという影響と両面あったと思う。分かってきたのは刑事司法の限界、司法が介入しても医療を安全にすることはできないということで、もっと言えば法律家がどんなに頑張っても医療を安全にすることはできないということ。法が先に立つと、どうしても制裁型・懲罰型になり、誰が悪いのかという話になってしまうのだが、原因は複合的な複雑なものであって、自分も含めてあえて申し上げるが単純な法律家が介入してプラスになるかというとそんなことはない。幸い、加藤委員も発言されているように患者・家族の願いは単に恨みを晴らすことだけではなく、真実は何なのか、もしそこに過失があったのなら謝罪してほしい、同じことが繰り返されないよう被害が無駄にならないようにしてほしいということである。またオブザーバー参加している刑事司法の方々からは、謙抑的な姿勢を取ってきたし今も維持していると何回も明言されている。だとするならば、この検討会の意図が制裁型・懲罰型ではなく、本当の意味での真相究明、再発防止のためにあるんだと旗を立てる必要があるのでないか。法律家も加わってはいるし、監督官庁が厚生労働省ではあるが、中核は医療界が本気になってまとまって新しい仕組みをつくるんだと掲げるべきでないか。
次に第三者機関ができたとして、これがうまく機能するかというと至難の業になる。モデル事業に少し関与させてもらって、解剖すればすべて分かるのかと素人考えでいたけれど、全然そんなことはなかった。ただ、そのよく分からないものを医療界の方々が忙しい中時間を割いて集まってきて、真剣に議論している。そういうものを医療者だけでなく、私も含め普通の人も入れて見せてほしい。そういうことをやっているのは世界にも類例がないわけで、試みに値する。世界のモデルとなる可能性がある。
もう少し具体的な話をあと3つ話したい。ひとつめは何を届けるのか、ということ。警察ではないんだと言っても、言葉悪く言えば警察の下請けができて、制裁懲罰型が堅持されると思っている人が相当多いようだ。そうでないということをハッキリさせる必要がある。ただ、では何をというと難しいのだが、医療者が医療安全向上のために行うのだという基本をおさえるならば、医療者が医療安全上、何があったか第三者に調べてもらった方がよかろうと考えるものということになり、それは現在警察へ届けているものとかなりオーバーラップするのではないか。それから遺族が納得できないものに関しても、遺族からか病院からか、届け出対象になるべきだろう。いずれにせよ、何が届け出対象になるのか、明確にすることは必要だ。
ふたつ目はペナルティの話。医療安全を義務化するという話であれば、医療安全に努めない医療機関などあってはならないのでペナルティを科して構わないと思う。ただし、ペナルティにも色々な形がある。一例を挙げると個人情報保護法では、主務官庁から勧告・命令という段階を経て、それでも改善しないという時にペナルティとなる。そういう仕組みがあってよい。で、もしそのように工夫するなら、文書に明記してあげると無用の不安を呼ばないのではないか。
最後に医師法21条の問題。第三者委員会が、制裁型・懲罰型でない新しい医療安全のために作られるのであれば、「整理する」というような文言ではなく、もう少しハッキリ後ろへ下がっていただくというのを明らかにした方がよい。
長くなりましたが、パブコメに医療者からの批判が多い。医師会、病院団体協議会は第三者委員会をバックアップすると書いてくださっているけれど、できれば例えばモデル事業の19学会のようなところは声明を出して、ちゃんと自分たちでやっていくと表明してほしい。看護協会もしかり。責任を持ってやっていくと明らかにしていただくといいと思う」
本当に長かったが、まさに正論である。正論ではあるが、9回目にもなって、このようなそもそもの議論が提起されるのは異常としか言いようがない。過去にも樋口委員からは何度も本質的な問題提起があったのに、きちんと議論してこなかった。それがこの体たらくにつながっており、樋口委員も憤りを感じているのだろう。
そしてその憤りは、主に医師代表たる委員たちに向けられていたように感じる。「お前らの言う通りに検討会を動かしてきたのに、身内を抑えてないじゃないか」というところだろうか。まず、「医療者たちが自分たちの責任で」という部分。まさにその通り。医師会などが自ら火中の栗を拾う覚悟もないまま厚労省に泣きついた、そのスタート時点で既に大間違いだったのだ。この点については、後で他の委員からもチクチク皮肉られることになる。医師代表委員の反応を見ると、「説明不足」の指摘も医師代表に向けられていたらしい。ただし、この指摘は違うような気がした。この検討会に足りないのは、説明ではなく、議論やビジョンであり、それは明らかに雑なシナリオを書いて、それでも強行突破できると誤認した厚生労働省の責任だ。
医師組織を代表しているわけでない堺委員は、その意味では気が楽だろう。そもそも論で樋口委員に続く。
「この検討会で法律家の方々とお話していて、随分医療者とはモノの考え方が違うなと思うことが多々あった。ただし一番根っこの部分は共有していると思っているし、そうあってほしいと願っている。パブコメを拝見して医療関係者の意見が数が多かった。医療者といっても色々な立場はあろうけれど、国民の目からはそう見えると思う。で、医療者からは検討会のありかたについて、かなり厳しい声が多かった。
ここに我々が集まっているのは一体何をするためなのか、もう一度考えてみたい。広い意味と狭い意味とがあって、広い意味の方は医療安全推進に資するものを作る。狭い意味では調査機関をつくるということで、その機関の役割は、真相究明・原因究明、ADRを含めた紛争解決、行政処分、質の向上と4つあると思う。この4つを全部一つの機関で同じメンバーでやるというのは現実的でない。
それぞれ分けて考えると、まず究明機関について言えば、届け出るものの定義が必要で、そのガイドラインをどうやってつくるのかは検討する必要があるだろう。また専門家だけの視点でなく、国民の視点が加わっているということが分かってもらえるように、中立的な立場の人も入っていただければいいだろう。警察との関係を定義は明確にできずともガイドラインがあった方が納得しやすい。医師法21条の問題で言えば、司法の方は起訴公判判決が大事という立場なことはよく分かったが、医療機関の側からすると、その前に所轄の取り調べがある。司法の立場からすると末端という意識かもしれないが、現場からすると大きな問題で、21条に改正が加わっていないと所轄署も動かざるを得ないのでないかと思うので、21条改正を医療機関としてはぜひお願いしたい。
紛争解決というのは、ADRや謝罪反省のことだろう。行政処分に関して言うと、狭い意味での調査機関とは別の方が機能しやすいと思う。質向上は、医療機能評価機構でもやっているけれど、この検討会の最終的なゴールがそこにあるのだという点について、ぜひ他の委員の皆さんにも同意をいただければと思う」
前田座長
「質の向上がゴールという合意はあると思う。4つに分けた部分について、どこまで今回やっていけるかは、はい高本委員どうぞ」
高本委員
「医療者が中核になるべきという話だが、外科学会でも紛争解決から医療安全へと視点が変わってきた。医療者から随分多くのパブコメが寄せられて、たしかに説明不足があるのかなと思った。しかし、医師会も病院団体協議会も内科学会も外科学会も、医療者をほとんどカバーする団体が第三者機関をサポートすると言っている。だから大多数の医療者の賛同を得られていると感じている。樋口委員のご要望にはお応えできるのでないか」
パブコメを出した医療者が撥ねっ返りだとでも言いたいのであろうか。そう考えているとしたら、裸の王様だ。自分たちが了解すれば下々まで全て従うべきとでも思っているらしい。ここまで現場で苦闘している人たちの気持ちが分かっていないのかと暗澹たる気持ちになる。政治家に永田町病というのがあるけれど、こういうのは霞が関病とでも言うのだろうか。
そして、いよいよ医師会代表の木下委員である。 「医師会も新しい仕組みをつくることについては全面的に賛同である。医師が中核にということであるが、医師仲間だけで相談すると我々でしか通らない話になってしまうので、いろいろ議論してみて、刑事司法のありかたは国民のためにいいことかと言うと問題であるということになった。入口と出口の議論が必要なんだろうが、届出先が犯罪捜査を主に行っている警察ではなくて新たに届け出る先を作る。それを形にしていくことが大切だと思う。今までがいいのかといえば決してよくないわけだから改善され、それが国民にとってもよいことだという風に、新しい取り組みを基本的にぜひ形にしていただきたい。そもそも事故が起きなければ、こういう問題にもならない。予防が必要。結果として医師が萎縮してしまっている現状はあり、事故のところから整備していきたい。みんなでやっていこうという気持ちはブレるものではない。一部の医師会から批判が出たのは、我々の責任であり、説明不足だったと思う。事前のことも含めてしっかりやっていきたい」
何を言っているのか、正直よく分からないのだが、分かる部分にだけ論評を加えておく。説明が足らないのではなく、実体が足らないのである。
看護協会の楠本委員
「医療者が多いというが、医師が圧倒的に多く、看護師は少ない。その意味では医療界全体にとって差し迫った問題とは捉えられていないと感じている。パブコメを寄せた看護師にしても、調整看護師だったりリスクマネジャーだったりするようで、純粋に臨床の場にいる方々には状況が伝わっていない。しばらくの間、発言のトーンを落として議論の成り行きを見ていたが、医療側が加藤委員の言われる、逃げない、隠さない、ごまかさないに行けるかが問われていると思う。
医療安全の現場は看護が担っている。中医協に供された資料でもリクスマネジャーの86%が看護師1人でやっている。モデル事業でも、調整看護師が遺族との交渉も病院との交渉も必死にやっているけれど、あまり評価されていない。今後、第三者機関をつくるにあたっては福祉看護職の位置づけを考えていただきたい。
それから、医療の不確実性が国民に伝わっていない点も改善が必要で、遺族の大変なお気持ちにはたしかに耳を傾けなければならないけれど、その上でなお国民の無理解を力強く指摘する委員会であっていただきたいと思う。医師の立場からの科学的原因究明が協調されているけれど、医療事故の多くはシステムの虚弱さから発生しており、多くの学際的取り組みを中に取り込んでいく必要があろう。届け出先が保健所となっているけれど、直接委員会へ届け出るべき。内部告発をどう取り扱うかも検討する必要がある。
看護協会も挙げて協力する覚悟は既にしている。医師の皆さんにお願いしたい。本当に質の向上のために、すべてを公にする方向で歩み寄っていけるのか。表現は悪いが、看護師によっては『家政婦は見た』状態になっていることもある」どうせ覚悟もない癖に、と、医師代表たちの狼狽ぶりを痛烈に皮肉った。
そして、もはや誰も止められない加藤委員である。何を言うだろうと期待が高まる。
「名称をどうするかが中身に大いに関係するのでないか。私は『医療安全中央委員会』とか『医療安全質向上委員会』という名前にした方が、大きく育てるには大切なことじゃないかと思う。
皆さんがほとんど言及されていないが非常に大切だと思い指摘したいのは、試案の中では僅か2行だけ書かれている院内事故調査委員会のこと。医療界が、たとえば模範的であるべきとされる特定機能病院において、自律的に客観公正な調査をできないようでは話にならないと思っている。そして、調査できたとすると、第三者委員会と院内委員会とがどういう関係を取るか非常に重要。全国で年に何例の診療関連死が出るか、定義によるので予測するのは難しいけれど、2000件や3000件になるかもしれない。それを全て第三者委員会が調査するとしたら大変な労力をかけなければならない。一定規模以上の病院では自前の調査ができるような、そのような豊かな土壌を医療界に育成しなければ、第三者委員会が皆さんの期待している役割を果たすことはできないのでないか。
事故が起きた時に、内部のピアレビューで個人攻撃ではなく皆の問題として正しく考え、その情報を沈澱させることなくきちんと浮かび上らせ生かすことが求められている。その基盤形成が院内事故調査委員会であり、その取り組みとその芽をどう育てていけるのか、施策の中で重点的に考えてもらうべきと思う。
一番いけないのは、院内調査もやらずに第三者機関にお任せとなること。もっと小さな医療機関ではどうするか、連合して外部に設けるとか、学会や医師会の地域の取り組みの中でやるとか、いずれにせよ、そのプロセスが透明で報告書が告示公開され警鐘を鳴らすことができるのなら、医療安全に役立つのでないか。学会、医師会の責任も重いと思う」
本当にその通りだと思う。自浄努力もせず、いきなり医師法21条を何とかしてくださいと言ったって、国民が許すはずもない。
豊田委員
「遺族の立場で申し上げる。私の息子の場合は内部告発がきっかけで事故が公になることになった。よいこととは思わないが内部告発の取り扱いは考えてほしい。
遺族にとって一番知りたいのは真相究明もそうなんだけれど、それ以上に病院が事故をどう受け止め、どう考えているのか、それを知りたい。ところが様々な壁があって警察が介入したり病院がシャットアウトしたりして、何も知らされないうちに不信感が膨らむ。萎縮医療への危機感は分かるけれど、なぜ遺族が警察へ届けるのか考えていただきたい。好きで届けているわけではないし、私自身も医療知識のない方から聴取を受けて傷ついた部分もある。でも他の遺族の人たちと話をすると、警察の人たちがいなければ自分たちはどうなっていたか分からないと言う人が多い。警察が全く介入しなくなると不安であるというという気持ちを分かってほしいし、被害者・国民の目から見て、医療者の発言が信じられるように行動してほしい。信じられるなら共同行動が取れる。被害者と一緒に考えて取り組んでいくのでなければ国民は受け入れられないと思う。できない理由をあげつらうのでなく、どうやったらできるか検討してほしい。
それから私の場合、行政解剖の結果が病院に伝わっていなかったので、病院内部できちんと検討・報告されることが最後までなかった。当該病院でどう考えるかが重要なのだから、情報がきちんと伝わることが望ましい。ADRに頼る前に当該病院で一つひとつ対応していけば、その度ごとに必ず改善点が見つかる。そうやって対応し改善していくことが信頼関係につながるし、そうして信頼関係を新たに結ぶことが遺族の心の回復にもつながる。第三者委員会を設置して、当該病院へぜひ情報を伝えてほしい。
それから全国の病院から講演に招かれている。その時に現場の方々と直接話をすると、皆この委員会に期待している。パブコメのような批判的な声ばかりではない。パブコメを出すのは一般の医療者には敷居が高い。そのような声なき声に耳を傾けて、取り組みを進めていただきたい」
南委員
「パブコメを読んだ印象では、医療者が関心を持ち最も危惧を抱いているのは、届け出の範囲だと思う。現場が非常に混乱しかねないと思っているようだ。刑事司法が過渡的に好んでではなく関与してきた、それがあったからここまで来たと評価できるのだが、実際に新しい組織に委ねて大丈夫かというのは、医療がどう変われるのか、文化が変わるのかということでもあり、今医療現場が置かれている状況は火の車であり、その切実な状況を伺っていると、本来安全は現場からということはあるにせよ、現場と組織との関係からきちんと論じていかないと、現実的にはなりきらないという印象を持った。
ただし、総論的に組織をつくることそのものへの反対はないと思う。それから、国民の側に医療の不確実性への無理解があるという話、ごもっともではあるが、その指摘までをこの組織に負わせると、組織が重くなって財政状況から考えてもできるかなと心配になる」
前田座長
「オブザーバーでいらしている刑事司法の方々も、必ず発言をいただきたいというわけではないが、もし発言したいことがあれば。では警察庁の北村課長どうぞ」
北村滋・刑事企画課長
「まだ2回目だが、委員の皆さんが問題を真摯に受け止め議論されていると拝見した。私見では、調査委員会のあり方が重要なんだろうと思う。従来であれば、監督官庁の指導のもとに予定調和でいけばよかったのだろうが、すべての行政分野について事前チェックから事後チェックへと変わっており、これもその流れの中に位置づける必要があると思う。
国民に対してどう説明するのか、組織の透明性をどう担保するのか。極めて重要な役割を要請される調査委員会になると考える」
前田座長
「今日の議論を聴いていて、院内調査委員会に関しては、他のところに比べて議論が足りてなかったかな、質の向上に関して最初に考えないといけないのかなという感想を持った。それと真相究明とを一つの組織にどう組み込むかということ、それから何を届けたらいいのか、どこへ、届け出る主体は、という辺りについては、医師会、学会から説明していただくと同時に、その点について次回もう少し議論しないといけない。これだけ医療者が懸念を持っているのは重く受け止めなければならず、しかし、今までのような制裁型とは逆の方向をむくんだということがハッキリ理解できるようにする必要があると思う。
今日はきちんと全員にお話しいただけたので、これで終わりたい」
「やや強引かもしれないが、そういうまとめ方で次回も議論したい。なお、総論として組織をつくるという方向性は堅持していきたい」
駆け足で紹介してきたが、いかがだっただろうか。せっかくいい意見がたくさん出て、しかも全然実体が詰まっていないことも明らかになったのだから、心機一転、最初から議論し直せばいいのにと思う。短期的には厚生労働省も担当者も委員たちも傷を負うだろうが、その少しの傷を恐れて、「戦後医療」にトドメを刺した、と長らく歴史に汚名を残すよりはマシではないか。今なら、名誉挽回のチャンスだってまだある。
(この傍聴記はロハス・メディカルブログ<a href=”http://lohasmedical.jphttp://lohasmedical.jp”>http://lohasmedical.jp</a> にも掲載されています)