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臨時 vol 50 「組織の中でコーチングが機能する条件」

医療ガバナンス学会 (2007年11月10日 14:31)


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インテグラス(株)という教育会社を経営しております諸橋と申します。弊社は主に企業の管理職を対象としたマネジメント研修、コーチング研修を事業の柱としています。このメーリングリストでは4回目の執筆になりますが、今回はコーチングが機能する条件についてまとめてみました。興味のある方は是非お読み下さい。よろしくお願いします。
組織の中でコーチングが機能する条件

コーチングがここ数年日本でもブームが続いています。本屋にいけばコーチングに関する書物が平積みされていますし、企業でも社内の研修にコーチングを導入している会社が少なくはありません。

コーチングは人の能力を高める効果はあるのでしょうか。もちろん答えはイエスです。弊社でも企業向けにコーチング研修を提供し、一定の評価をいただいておりますし、また私自身プロコーチからコーチングを受けた経験もあり、その効果を実感しています。

ただコーチングのスキルを身に付けさえすれば、部下育成や後輩の指導、また組織の管理職にとってマネジメントがうまく機能するかというと決してそうとはいえません。コーチングはネーミングも日本人に馴染みやすく、ブームも一時的なものではないと思っていますが、反面コーチングは万能ではないこと、組織内で上司から部下へのコーチングが機能するには一定の条件があることが、案外理解されていないのではないかと思います。

仮にある組織の上司が部下にコーチングを行ったとしましょう。その上司はコーチングの訓練を十分に積んでおり、傾聴、承認、質問、フィードバックなどの基本スキルもすべて身に付けています。さてこの上司のコーチングは機能するでしょうか。条件次第で機能する、というのがその答えになります。その条件とは、コーチングを受ける部下がその上司を信頼しているという前提条件です。心理学の用語ではラポールを築くという言い方をします。コーチングを機能させるためには常日頃上司は部下に関心がある、注目している、可能性を信じてあげる、といったストロークを与え、ラポールを築いておく必要があります。人は他人から認められたい、人にふれてもらいたいという心理的欲求を持っています。その欲求を満たしてくれる存在を人は好きになり、その関係は信頼感で結ばれます。その信頼関係が構築されていることで初めてコーチングは機能し、その効果が発揮されるのです。反面仕事の成果だけを部下に求め、部下そのものに感心をもてない上司はたとえどんなに高度なトレーニングを積んだとしてもコーチングは使えるようにはなりません。
組織内においてコーチングが機能するにはもうひとつ重要な条件があります。それは相手の発達段階に応じて指示命令型のマネジメント(ティ-チング)と上手に使い分けることにあります。例えて言うと、新入社員や人事異動などでその仕事に初めて就いた人には、コーチングよりも指示命令型のマネジメント(ティ-チング)で対応したほうが部下は安心して能力を発揮することができ、結果として成果にもつながります。会社に入社したばかりの新人に「答えは相手が持っている」とばかりにコーチング的なマネジメントを行ったとしても、その新人は何をしていいのかの判断もつかず、不安を抱え仕事の成果を出せないことは明白です。新入社員には丁寧にやるべき事をしっかりと指導し、納期の管理や報連相を徹底するといった指示命令型のマネジメントスタイル(ティ-チング)がやはり向いています。反対にベテラン社員に対しての細かい指示命令は煩わしいとの印象を与えるだけで、良いことはあまりありません。中堅以上のベテラン社員にはコーチングを多用したマネジメントが向いています。

言われてみれば当たり前のことかもしれませんが、私自身管理職時代に部下の発達段階にそぐわないマネジメントをしてしまった苦い経験があります。それは今から数年前の就職氷河期といわれた時代、私のところにひとりの新入社員が配属になりました。(ちなみに当時の私の仕事は営業のマネジャーです。)その新人は厳しい就職試験を突破しただけのポテンシャルを備えていることは、その受け答えをみても明らかであり、また中学生時分から日経新聞を購読していたという本人の言葉からも、少々風変わりで妙に大人びた雰囲気を最初から感じていました。その新人に対して私が取ったマネジメントスタイルは、細かい指示命令を出さない支援型のコーチングスタイルでした。彼であればある程度自由にやらせても大丈夫なのではないか、あまり細かい指示をすると大きく育たないのではないかとの勝手な判断をしたのです。後から思えば反省せざるを得ませんが、当時の私は自分自身のマネジメントスタイルがその新人には適さないことなど疑うこともなく数ヶ月が過ぎました。当然期待したほどの成果はでませんでしたし、その新人も次第に実績が出せないことに焦りを感じているようでした。私が自身のマネジメントスタイルに問題があるとようやく気付くのは、新人が配属されてから半年が経過していました。決算前ということで毎日のように営業マンと同行していた時期、たまたまその新人とも2、3日続けて営業同行する機会がありました。会社では大人びて見えたその新人がお客様を前にすると途端に意気地がなくなるという事実を初めて目の当たりにしたのがその時です。もちろんそれ以前にも同行をしたことはありましたが、お客様の前ではどうしても私主導で話を進めてしまうため、新人が話をする出番も少なく、またできる新人との先入感もあり、彼の思いもよらない未熟さに気がつくことはありませんでした。新人からしてみれば、もっと細やかに指導をしてほしいとの思いはあったと思いますが、上司のマネジメントスタイルに意見を言えるわけはありません。

その後、その新人に対しては自らの非を認め、マネジメントスタイルも指示命令型(ティ-チング)に修正していくことで、彼の成長に多少の貢献はできたのではないかとは思いますが、もっと早く気付いてあげるべきであったとの反省は残ります。ただそれ以降は、その時の反省を踏まえ、新たな部下を持つときは、相手のことをしっかりと診断した上で、自身のマネジメントスタイルをコーチング主体でいくのかティ-チング主体でいくのかについて十分な話し合いを持つようにしました。最初に部下にしっかり説明をしてさえいれば、人によるマネジメントの違いを不公平であると思われずに済みますので、このやり方はお勧めできます。

組織内でコーチングが機能する条件はご理解いただけましたでしょうか。ちなみに、この相手によってマネジメントのスタイルを変える指導法は、状況対応型リーダーシップ理論としてマサチューセッツ大学の教授、ケネス・ブランチャードによって提唱されており、たくさんの書物も出ておりますので、興味のある方はお読みいただければと思います。

【略歴】
1984年 中央大学法学部法律学科卒業。
1999年 富士ゼロックス株式会社入社。
2005年 株式会社富士ゼロックス総合教育研究所入社。
2005年 法政大学大学院社会科学研究科(MBA)卒業。
2006年 インテグラス株式会社を設立し、同社代表取締役社長就任。

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