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臨時 vol 21 「医療の安全とマンパワー その他緑茶の効用について」

医療ガバナンス学会 (2007年5月31日 15:54)


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自治医科大学学長
高久 史麿

私自身のことを申し上げて恐縮であるが、昨年(2006年)11月に私が理事長をしている「医療の質・安全学会」の第1回の学術集会が東京で開催された。第1回ということで私が会長を務めさせていただき、医師、看護師、薬剤師等の医療関係者だけでなく、工学、法律、経済等の専門家、メディアの関係者等、多くの分野から多数の方々の参加が得られた。一般の方々には同時に開催した公開シンポジウムに参加していただいた。

この学会の中心のテーマはいかにして医療の安全を確保するかということであった。医療の安全には医療関係者に対する安全教育が必須であることはいうまでもない。個人の資質の問題も医療安全への注意、努力を含めて極めて重要である。わが国では医療に限らず事故があると事故を起こした個人に対する責任の追及が中心となる。しかし世界的には事故があった場合、関係した個人だけでなく、その人が働く職場のシステムにも問題があるとされている。むしろシステムの方が重要だという考えである。個人の追及で終わってしまうと、一つの施設で起こった事故の教訓が他の施設での事故防止につながらないということも、事故が起こっ
た際システムのミスの方を重視する原因の一つとなっている。
そのシステムの中で最も重要なものに従事者の人数の問題がある。わが国の病院は欧米の病院に比べて医師、看護師の数が非常に少ないことが明らかになっているが、医療従事者の数が圧倒的に多いアメリカでも医師や看護師の過重な労働が事故につながることが相次いで報告されている。ごく最近もアメリカ医師会雑誌(JAMA)に、当直のため夜間何回も起こされた医師の注意力、模擬運転能力を調べたところ、普段よりも明らかに低下しており、その低下の程度は当直をしなかった医師にアルコールを飲ませたのと同じだったとする研究結果が掲載された。それだけ事故を起こしやすいというわけである。

最後に健康の話を少し述べたい。副題にある緑茶の効用である。この研究を行ったのは、東北大学の研究者らで、その結果は上述の雑誌JAMAに報告されている。その研究では40,530人の40~79歳の日本人を11年間にわたって追跡している。詳細は誌面の関係上省略するが、緑茶をたくさん飲んでいる人ほど心血管障害、特に脳卒中による死亡者の数が少なく、その傾向は女性で特に著しかったとのことである。日本人の食事内容が急速に西洋化しているわりに心血管障害による死亡が欧米より少ないことが謎とされているが、その理由の一つが緑茶にあるかもしれないと推定されている。

たかく ふみまろ●1954年東京大学医学部卒。

‘72年自治医科大学教授、’82年東京大学医学部教授、’88年東京大学医
学部長、’95年東京大学名誉教授、’96年自治医科大学学長、’04年日本
医学会会長。医療の質・安全学会理事長。

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