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臨時vol 6 「ハーバード公衆衛生大学院留学体験記 その1」

医療ガバナンス学会 (2007年3月6日 16:11)


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ハーバード公衆衛生大学院留学体験記 その1

石川 善樹


2006年9月初旬。
ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)の入学式が行われた。

文字通り、世界各国から集まった学生達が注目する中、学長Barry R. Bloom氏は、新入生歓迎のスピーチをするため、軽やかに壇上に登った。

階段教室に腰掛ける、やや緊張した面持ちの学生達を嬉しそうに眺めながら、学長Barry R. Bloom氏は勢いよく、得意のスピーチを切り出した。

+++++++++++
「何故、公衆衛生大学院なのか?」

これは、公衆衛生大学院の学長ならば、必ず聞かれる質問だ。いくつかの回答が出来ると思うが、私は簡単なたとえ話をしたい。

「アメリカ合衆国の人間は、何が原因で亡くなるのか?」

メディカル・スクールの学長ならきっと、こう答えるだろう1)。

29 % – 心疾患
23 % – 悪性新生物
7 % – 脳血管疾患
3 % – 糖尿病

一方、公衆衛生大学院の学長は、かなり異なった視点から、こう答えるだろう1)。

18 % – 喫煙
15.2 % – 不健康な食習慣と運動習慣
3.5 % – 飲酒
2 % – 自動車
1 % – 銃火器

そして、アメリカにおける全死亡の50%は、公衆衛生と健康な生活習慣によって、
予防あるいは遅延可能である・・・
+++++++++++

力強い学長のメッセージに、学生達(注)の背筋がピンと伸びる。

(注):日本で学生(大学院生)というと、学部卒業直後の22、23歳の若者が連想される。しかし、ハーバード公衆衛生大学院に入学するほとんどの学生は、5~6年の社会経験を積んでおり、セカンドキャリアとして公衆衛生を学びに来ている者がほとんどである。40代、50代の学生も決して珍しいものではない。

学長のスピーチも終わり、新入生一同、感慨深げな表情で会場を後にする。
周りを見渡すと、気の早い学生達が、早くも卒業式の話をしていた。

A:「卒業式で、学長Barry R. Bloom氏が必ずおっしゃる、有名なスピーチがある
そうだ。」
B:「へぇ、それはどういうスピーチなんだい?」
A:「学長曰く、”卒業して前職より給料が下がるのは、ハーバードではうち(公
衆衛生大学院)くらいだ”ということらしい」
B:「そりゃいいや(笑)」

・・・前置きが長くなりました。

私は現在、米国はボストンの、ハーバード公衆衛生大学院に留学しております。
日本ではまだ、公衆衛生大学院の整備が始まったばかりであり、「一体、公衆衛生大学院とは何か?」ということは、広く一般には知られていません。

そこで本連載では、ハーバード公衆衛生大学院での日々を紹介するとともに、

・ 公衆衛生とは何か?
・ 公衆衛生が社会に果たす役割は何か?
・ 臨床医が公衆衛生学を学ぶ意義は何か?

ということについてご紹介していきたいと思います。

<お知らせ>
ハーバード公衆衛生大学院日本人会が主催となり、2007年3月末に、ハーバード公衆衛生大学院の学生約30名と共に、Japan Trip 2007を行います。
Tripの一環として、2007年3月26日(月)、東京大学にて、

・ 公衆衛生国際交流シンポジウム、ならびに
・ 医師・医学生のための公衆衛生学セミナー

を開催いたします。

ハーバード公衆衛生大学院 Japan Trip 2007: http://hsph.jp/JT
公衆衛生国際交流シンポジウム http://hsph.jp/JT/symposium-j.htm
臨床医・医学生のための公衆衛生学セミナー
http://hsph.jp/JT/mdseminar-j.htm

現在、上記web上にて受付を開始しております。
会場で皆様にお目にかかれますことを、楽しみにしております。

参考文献
1) Mokdad AH et al. Actual causes of death in the United States, 2000.
JAMA. Vol.291 No.10  p1238-1245. 2004.
著者紹介

石川 善樹

1981年2月27日 広島県生まれ
国立筑波大学附属駒場高等学校卒業
東京大学医学部健康科学・看護学科卒業、
同大学院医学系研究科修士課程修了
2007年現在、 ハーバード大学公衆衛生大学院留学中

著書:「健康学習のすすめ」日本ヘルスサイエンスセンター

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