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臨時vol 5 高久通信 「たばこをめぐる最近のいくつかの話題」

医療ガバナンス学会 (2007年3月22日 16:11)


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たばこをめぐる最近のいくつかの話題

 

WHOが提唱したたばこ規制枠組み条約が批准され、たばこが健康上よくないということが我が国でも定着した感がある。一時期、車中のたばこの広告に「たばこが健康を害する恐れがある」という言葉があり、それを見るたびにひどい広告だと思っていたが、幸いそのような広告もなくなった。

たばこの健康への害については最近でも次々と医学上の報告がある。その一つはヒトの腎臓の機能に対するたばこの影響である。もともとたばこは腎機能に対して障害的に働くため腎機能不全の患者はたばこが禁忌とされているが、アメリカのマイアミ大学の研究者たちは腎臓の細胞にニコチンに対するレセプターが存在すること、培養した腎臓の細胞にニコチンを加えると腎細胞の瘢痕(はんこん)化すなわち細胞の障害の過程が進行することを見いだし、昨秋のアメリカの心臓学会で報告している。この研究結果は、たばこの腎臓に対する悪影響と腎障害のある人が禁煙すべきであることの理由のうち少なくともその一つを明らかにしたものとして評価される。

もう一つの話題は、喫煙と遺伝子との関係についての二つの論文である。一つは大阪大学の研究者たちの研究で、いわゆるヘビースモーカーと呼ばれる人たちでは、ニコチンを分解するCYP2A6という酵素の遺伝子の活性が高く、そのような人ではニコチンがすぐに分解されてまたタバコがほしくなるということである。もう一つの論文も同じくニコチン中毒に関する研究で、アメリカのエール大学の研究者たちは、ニコチンがCREBという分子の活性を増加させ、このCREBが脳に働いてニコチンに対する中毒性をより強くするということを報告している。いずれの報告もたばこ中毒には遺伝的な要因が関与しており、そのような体質を引き継いだ人たちでは禁煙が極めて困難であることを示している。上述のような体質を
持った人は本来たばこを吸い始めるべきでなかったのであるが、すべてのヒトでたばこ関連遺伝子をあらかじめ調べることは不可能なので、若い人が喫煙を開始しないような社会環境を作るよう努力すべきであろう。
最後の話題は、間接喫煙に関してである。一部の国、都市では飲食店やバーを全面禁煙としている。その中の一つの国であるスコットランドでは、全面禁煙施行の前後にバーの従業員の呼吸器の状態を調べたところ、禁煙令の施行後従業員の呼吸器症状、並びに呼吸機能の有意な改善、炎症の状態を反映する血液中の白血球数の減少が見られた。また喘息のある従業員では、そのQOLが著しく改善し
たとのことである※。飲食店や酒場、家庭内での全面禁煙がいずれ我が国でも問題になるであろう。

※JAMA 296:1742, 2006
■著者紹介
高久 史麿(たかく ふみまろ)
自治医科大学内科教授、東京大学医学部第三内科教授、国立病院医療センター院
長、国立国際医療センター総長を歴任後、平成7年5月東京大学名誉教授、平成
8年4月から現職(自治医科大学 学長、日本医学会 会長)

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