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vol 1 「今後の医療制度」

医療ガバナンス学会 (2007年1月11日 16:16)


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多摩大学 医療リスク研究所教授
(医師、MBA) 真野俊樹先生

●今後の医療制度

医療技術の進歩に伴う医療費の増加に加え、日本が直面している人口の高齢化がもたらす医療費全体の増加により、今後の日本の医療環境・制度の方向性が問われている。

今回は医療制度改革の動きをもとに今後の医療制度を考えてみよう。
●高齢者医療

もっとも影響が大きいのは高齢者医療であろう。75歳以上の後期高齢者については、その心身の特性や生活実態等を踏まえ、平成20年度に独立した医療制度を創設する、ということで、財源構成は、患者負担を除き、公費(約5割)、現役世代からの支援(約4割)のほか、高齢者から広く薄く保険料(1割)を徴収する。被用者保険の被扶養者であった高齢者の保険料の負担については、必要な経過措置を講ずる。自己負担は、75歳以上の後期高齢者については、1割負担(ただし、現役並みの所得を有する者は3割負担)とする。

また、前期高齢者医療制度(65歳~74歳)として、65歳から74歳の前期高齢者については、国保・被用者保険の従来の制度に加入したまま、前期高齢者の偏在による保険者間の負担の不均衡を、各保険者の加入者数に応じて調整する仕組みを創設する。

自己負担も変わる。70歳未満の者については、これまでと同様に3割負担とし、70歳から74歳の者については、2割負担(ただし、現役並みの所得を有する者は3割負担)とする。その際、1割負担から2割負担となる70歳から74歳までの低所得者については、自己負担限度額を据え置く措置を講ずる。
●予防医療

なんといっても、今後の目玉は、予防の重視である。禁煙プログラムに保険から給付される。その動きを受けて、日本国内で予防を目玉に疾病管理事業に取り組む民間企業が出現している。例えば、生命保険大手の明治安田生命保険相互会社は、健康保険組合・企業(公務員共済組合・団体を含む)を対象に「疾病予防サービス」を幅広く提供するヘルスケアトータルサポート株式会社を2005年4月1日付で設立した。資本金は3億円で、この分野の事業に本気で取り組む会社がいよいよ現れたと感じた。

その後、さらに規模の大きな会社がこの分野に参入した。損害保険大手の損保ジャパンと家庭用の血圧計などで知られるオムロンヘルスケアの合弁会社として、2005年10月1日に発足した株式会社ヘルスケア・フロンティア・ジャパンである。健康増進・疾病予防サービスを提供し、資本金は、計 で10・5億円である。資本金の内訳は、損保ジャパン6・5億円 (61・9%) オムロンヘルスケア4・0億円(38・1%)であり、データ管理等でNTTデータも参加した。

予防は本来、保険給付にはなじまない、これは保険というのがあくまで病気という事故に対して、支払われるものであるからだ。予防は、事故が起きる前(この場合には病気になる前)の話であるから保険ではないのである。

簡単に言えば、やる気のある人は、どんどんお金をもらって予防するし、そうでない人は予防しないからだ。病気のようなあきらかなきっかけがないので、このようなことになってしまう。

ただ、そうはいっても、糖尿病:有病者740万人/予備群880万人、高血圧症:有病者3100万人/予備群2000万人、高脂血症:有病者3000万人、そして、それが大きな原因になるであろう脳卒中:死亡者数13万人/年、心筋梗塞:死亡者数5万人/年という現実を見ては対応は必要であった。

健診結果で異常が見つかった項目が多いほど10年後の患者一人当たり医療費は高くなり、異常なしの者と主要4検査項目異常ありの者では3倍の格差がある。また、糖尿病合併症患者と合併症のない患者は、5年前の医療費はほぼ同額であったが、年々格差が拡大し、現在の医療費では約10万円の差が生じていた。そして、今回、こういった医療費削減の視点からも予防が重要視されているのである。
●診療報酬の仕組み

ついで、診療報酬について考えよう。みなさまがよくご存知のように中医協(中央社会保険医療協議会)で主に診療報酬は決定されてきたが、今後は社会保障審議会がかなり厳密な方向性を出した上で、中医協が審議をするという形になる。今回は3.16%という診療報酬史上最大の下げ幅になったことは記憶に新しい。

これは、歯科医師会をめぐっての中医協の汚職問題によって中医協の権限について疑問符がついたところからはじまる。さらに、内部の委員の改革も進められている。医師会の委員が中心に診療側8人、支払側8人、公益代表4人という構成であったが、(1)公益代表委員を増やし、三者同数にする(2)診療側委員のうち病院代表を増やすといった改革がなされていく。
●医療計画

地域医療計画は、地域の医療ニーズに応じた医療提供施設の体系的整備+医療費抑制を目的に昭和60年に医療法改正により制度化された。後段の医療費抑制との関連は、病床(医師)が多いと医療費が増加するという、医師誘発需要仮説、による。

しかし、医療における規制の代表例のようにいわれ、2002年12月には、内閣府の総合規制改革会議の指摘が出された。それは

①病床規制により医療機関の競争が働きにくく、既存病床の既得権益化が生じ新規参入が妨げられていること。

②基準病床数の算定方法が現状追認型で、対人口比の地域間格差があること。

③地域の実情、ニーズに応じた適切な機能別の病床数の確保ができていないこと。

が問題である、という指摘であった。

これをうけ、一般と療養の二つのタイプの病床で必要数を示す式が作成された。しかし当面は、それらを合わせた数で規制をおこなっていくことになり、個別に規制は行わないようである。

しかし、ここは、内閣側も大いに関心がある部分であるので、今後どうなるかは正確にはわからないと思う。
●医療法人

我が国の医療提供体制を考えると、病院の61.3%、病床の50.2%は医療法人が担っており、数字の面からだけでも民間非営利部門の医療法人が中心となっていることは明らかである。

政府は平成16年11月に「公益法人制度改革に関する有識者会議報告書」をとりまとめるとともに、平成16年12月に閣議決定された「今後の行政改革の方針」において、現行の民法による公益法人制度を抜本的に改革し、一般的な非営利法人制度としつつ、公益性を有する非営利法人を判断する仕組み等についての本格的な検討を行っている。これは、現行の民法34条法人の「非営利」の考え方及び「公益性」についての判断基準等について、理論的な整理とそれを踏まえた法改正に向けた取組が進められ、あわせて税制についてもそれを踏まえた検討が行われているところである。

検討会では、従来言われていた「認定医療法人」という用語がなくなり、「公益性の高い医療サービス」を提供する法人と変わった。この「公益性の高い医療サービス」を提供する法人では、「公益性の高い医療サービス」を安定的・継続的に提供するための新たな支援方策の検討ということで、医療法人に従来認められている医療機関債の発行のほか、証券取引法に基づく有価証券としての公募債の発行、もしくは医療保健業以外の多様な収益事業の実施、寄付金税制を含めた税制上の優遇の検討など、「公益性の高い医療サービス」を、安定的・継続的に提供することを可能とするための基盤整備が求められる、といったメリットが認められる。

ここで、「公益性の高い医療サービス」とは、通常提供される医療(活動)と比較して、継続的な医療(活動)の提供に困難を伴うものであるにもかかわらず、地域住民にとってなくてはならない医療(活動)で、

1)休日診療、夜間診療等の救急医療
2)周産期医療を含む小児救急医療
3)へき地医療・離島医療
4)重症難病患者に対する継続的な医療
5)すべての感染症に係る患者を診療する医療
6)筋萎縮性側索硬化症(ALS)など継続的な在宅療養を必要とする患者に対する医療や当該患者の療養環境の向上を図る活動
7)災害など緊急時に対応する医療(災害医療)などが考えられている。
●DPC

これまでは、病院を客観的平等な視点をもって評価する方法が存在しなかった。そのために、自院の医療環境・経営状況を客観的に図ることができず、何を基準に判断し、どこをどのように改善していけばいいのか議論することが難しいもままならない状態であった。また、地域差や各病院の規模・環境の違いで患者を受け入れる体制も異なるため、まったく同じ症状の患者でも、受け入れる病院によって医療費や入院日数など治療環境で差が生じてしまうのが現状といえる。

そこでDPCなどの診断群分類は、ある一定の共通基準を設けることにより、で客観的視点で病院を比較することを可能とすることが目標である。共通言語を持つことによって、初めて医療の質の向上と効率化を目指して、各々の病院が独立して歩みだすことができるようになったといえる。DPCによる支払い病院もすでに360病院である。今後さらに広がることが予想される。
●自己負担と医療費抑制策

すこし専門的になるが、医療費増減の予測は長瀬の式というので行われている。そこから考えると、現行の3割以上の自己負担にすると、医師に行かなくなる人が多くなりすぎる、ということで、これ以上の自己負担増加は考ええにくいとされていた。

当面は

①予防医学の充実
②患者にコスト意識を持たせる
③高齢者医療制度の改革

といったところで、しのいでいくという感じになると思われる。
●終わりに

いずれにしても、マクロの医療費抑制策、すなわち総枠管理がまた議論の遡上に上ることは間違いない。高齢者が増えるということは医療サービスを必要とする患者が増えることを意味するので、その意味で医療産業は安泰であろう。しかし、保険の仕組みが今後どうなっていくかわからないというのもまた事実なので、どんな改革があっても耐えうるような経営基盤を確保しておくことことが重要になろう。

 

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