医療ガバナンス学会 (2006年10月20日 16:26)
●質の評価
医療や介護の質は、ドナベデアンの考え方である、構造(建物)、プロセス(過程)、結果で評価することが多い。
たとえば下記のようである。
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建物の質:例
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建物の質の安全性(火災対策・衛生面)
住居環境の快適さ
部屋の広さ
スタッフの配置割合:(資格者の割合)
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サービスのプロセスの質:例
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入居権利者を保護するメカニズム
うまく機能している転・退院のマネジメント
ケアプランを立てる際の入居者評価手順
入居者機能の実用水準を最も高いレベルに到達させ、維持するために必要な
サービスの利用可能性
十分に能力のあるスタッフが週7日、24時間通して対応が可能か
バランスが十分に取れている食事
その他の付随サービスへの利用可能性、及び/あるいは・対処可能性
(例:リハビリテーション、薬局、感染対策)
心療録の要求及び介護資料の作成手順
品質保証委員会の維持
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アウトカム(効果)の質:例
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褥瘡の有病率
栄養失調の有病率(脱水症状を含む):適切な経管栄養
予防可能なADL及びIADLに係る機能退行
疼痛管理が十分に行われていない入所者数
拘束の実施(身体的・薬剤による)
感染症に罹患した入居者
抗精神病薬の使用率
経菅栄養の普及率
転倒件数;転倒の予防策
便失禁の発症率
社会的活動及びプライバシーの保護
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出典:OECD
●第三者認証とは
このような考え方を使って評価するのは誰があるいはどんな組織が適当なのであろうか。
第三者評価とは、ある事業者の提供するサービスの質を当事者(事業者及び利用者)以外の公正・中立な第三者機関が、専門的かつ客観的な立場から評価する事業のことをいう。そしてこの第三者評価を行う事業を第三者評価事業という。
その目的は、個々の事業者が事業運営における具体的な問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけることとともに、利用者の適切なサービス選択に資するための情報となることである。
簡単に言えば、病院や診療所は当事者で、患者さんも当事者ですから客観的に評価をするのが難しい。そこで、当事者ではない第三者が当事者の評価をしようというものである。
また、認証というのは、アンケートに答えてもらったり、実際に現地を調査したりして、一定の基準を満たしていれば、お墨付きをあたえる、というものをいう。
なお、認定とは、格・事実などの有無、また、事柄の当否などを判断して決めることで、国・地方公共団体などの行政機関が、各種の事柄の存否・当否などを判断して決定することが多い。資格との違いはその効力が絶対ではないことで、「認定を取ったからといって,認定者だけに許された仕事はない」と言える。
米国ではこういった考え方が進んでいるが、日本も医療分野では大きく言って2つの、第三者認証がある。ひとつは、財団法人日本医療機能評価機構が行っている。医療機能評価機構は1997年から稼動していますが、もともとは厚生省(当時)や医療系の団体が、このような評価が必要だということで設立された。
財団のHP(2006年8月)を抜粋すると、
「わが国では、医療提供システムの構築過程で、まず、量的な整備に力が注がれてまいりました。 この点に関しましては、地域偏在等の問題を一部残しながらも一応の成果をあげてきたように思われます。
この間、高齢化の進展、疾病構造の変化、医療技術の進歩等により、医療に求められるものが、高度化、多様化してまいりました。 また、近年では、社会そのものの構造の変化により、国民の保健医療に対する関心や要求がますます高まっています。
このような状況下で、医療システムヘの要請においては、量的に整備すること以上に質的に保証することが強調されるようになり、国民に対して医療提供状況に関する正しい情報を提供していくことと、良質な医療提供を推進し確保していくことが、重要な課題となりました。
本財団は、医療機関の第三者評価を行い、医療機関が質の高い医療サービスを提供していくための支援を行うことを目的としています。」
この機関は診療所は対象にせず病院のみであるが、この認定は現在2000病院を越えている。マーク(http://jcqhc.or.jp/html/logo.htm)があるので認定病院は見分けられるようになっている。
●ISO
ISO(International Organization of Standardization)である。ISOは産業界には1987年に制定された、国際規格である。ISO9001(品質マネジメントシステム)の導入により品質向上を目指す企業が増えていて、40000件を越える認証がある。
ISOについては、審査機関を認定する上位の民間機関があり、その認定を受けた審査機関が、個々の事業所を認証するといスタイルを取る。
ISOは病院のみならず診療所でも認証を行っているし、認証も品質を保証する9000だけではなく、環境のほうの14000もある。また、ISOは一般企業でも行われている認証である。
●患者さんは認証を知っているか?
筆者らはこの2006年5月に、第三者認証についての患者さんへのアンケートを行った(ISO審査会社NQA-J実施、株式会社日本LCA協力、54%が現在通院中)。1262名の回答があり、18%のかたが医療機関に対する第三者認証を知っていて、うち、医療機能評価を知っている方は68%、ISOは13%、両方が19%であった。これは、医療関係の認証を受けている病院の多くが医療機能評価であることが原因であると思われる。
医療機能評価の認証を受けている病院を行っているかどうか、にイエスが31%、ISOと病院では14%、ISOと診療所ではわずかに3%であった。
なお、「あなたが医療機関を選ぶ際、第三者評価を受けていることを考慮しますか?」という問いに対しては、考慮するが54%、参考にする程度が43%であった。多くがみているのであう。しかし、こういった評価は、医療機関の構造や行われている医療の過程がうまく動いているかを評価するので、評価の決め手にならないのは、診療科ごとに自分の病気に対しての腕の評価たりえないことで
あろう。
●第三者評価の意味
では何のために、こういった評価があるのであろうか?
もともとこういった、第三者評価、特にISOは製造業に対して、モノの品質を保証するために生まれた。
時々、医療も、製造業と同じように流れ作業である、と主張するかたがみえる。これはとんでもない話である。確かに、医療行為にも大きく言って二つの流れがある。ひとつは、病院に入って受付をしてから、医師を受診して、会計をしたり薬剤をもらったりするという流れである。こちらは、多くは外来であるが、大きく言えば入院の医療も医師の受診の代わりに入院しての治療と考えればこの流れ
に乗っているといえよう。
もうひとつは、病気が診断されてから、退院あるいは連携している他の医療機関などへ受診していく流れである。
このように流れがあるので、おのおのをきちっと管理していけばいい医療につながるという考え方だ。しかし、どんな素人でもわかるように、機械と人体は違う。医師にとっては情けない話であるが、なぜ病気になるか、たとえば癌でも認知症でも、原因は不明なのだ。したがって、時計やパソコンを直すのとも叉違うのは自明である。
であれば医療というサービス業において、第三者評価は何のために行うのであろうか。ひとつは、評価を受けるので、医療関係者や医療機関に緊張感をもたらすことが出来る。また、同じプロ同士がチェックするので問題点も指摘されるので改善しなければならない。他の業態でも、患者のような最終消費者よりも、企業同士の取引において、切磋琢磨あるいは取引をしてもらえる基準として機能し、それが最終的には最終消費者のメリットになるという考え方であろう。
であるから、こういった認証を受けていないより受けているほうがいいのは間違いといえよう。