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臨時 vol 64 「平成21年4月実施予定の介護保険制度の改正について」

医療ガバナンス学会 (2009年3月24日 14:05)


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医療法人 社団雄敬会 藤末 医院
理事長  藤末 洋

21年度4月から実施予定である介護保険認定審査の概要について説明します
。日医から2月4日付けで、この4月から開始される「介護保険認定基準時間の
方法の一部改正について」対してのパブリックコメント投稿の願いという通達が
来ました。この通達は、2月18日の県理事会で協議しました。どういうことか
かいつまんで説明します。今まで認定調査で調査員の方が82項目の調査項目につ
いて調査していたのですが、見直しで74項目に変更されることになりました。平
成13年に介護保険制度が始まったのですけれども、コンピューターによる一次判
定に利用されたタイムスタディを基にした樹形モデルは、現在の介護に要する時
間を反映していないという訳のわからない理由で変更すると記載されています
。これまで認定審査会の二次判定で、要介護1状態の方を、認定要支援2
もしくは要介護1に変更していたのですが、国の言い訳は「介護認定審査会にお
ける審査員の負担を減らすと共に、審査結果のばらつきを軽減するために一次判
定結果のみに変える」ということになります。確かに審査委員の負担は簡単になっ
て軽減しますけれども、一番不利益を被るのは、利用者の方です。

また、これまで審査会では、一次判定結果を変更する場合には、審査会におい
て6つのツールによって、介護度を変更することが可能でした。この変更理由に
は、介護の時間(コード41)、日常生活自立度の組み合わせ(コード42)、
要介護の変更の指標(コード43)、特定疾病非該当(コード50)その他(コー
ド99)および状態像の例(コード10)の6つがあります。変更理由としては、
状態像の例が一番多いのですけれども、例えば、状態像で要介護1の方が要介護
2になったりしていたわけですが、要介護認定時間(コード41)とその他(コー
ド99  かかりつけ医の意見書)だけになってしまい、他は一切なくなってし
まいます。

これは、認定審査会の資料ですけれども、訪問調査員による82項目があります
が、これが74項目に変更されます。何が変更されるかというと、認知症の周辺症
状と医学的な項目です。具体的に言いますと、火の不始末、幻視・幻聴、暴言・
暴行、不潔行動、異食行動、徘徊、拘縮(ひじ関節と足関節)、褥瘡、皮膚疾患、
飲水の10項目が減ります。82項目から10項目減るから72項目なのですけれど、後
で述べる2項目が追加されます。減った項目はどうなるかというと、かかりつけ
医の意見書だけになります。

それでは、具体的な例を示します。この資料は1週間前に実施した認定審査会
のデータです。例えば4月以降は、要介護認定時間(コード41)だけで変更する
のです。例えば、これまでは、状態像や組合せや分布だとか指標というツールが
あって変更できたのですが、4月以降になると全てなくなります。要介護1状態
の方が、認知症などの精神疾患による手間がかかったり、医療的なことで介護の
手間がかかるため、変更理由として01、02があったのですがこれもなくなります。
これまでの認定審査会では、要介護1の方を、要支援2と介護1に振り分けてい
たのですが、この業務の煩わしさをなくすということで国は言い訳をしています


これは4月から予想される介護認定資料ですが、ここの介護時間だけが変更理
由になります。これまでの状態像は消えていますし、組み合わせもありません。
ここの黒丸も白丸もなにもありません。このような状態で二次判定をする事にな
ります。これは、現行利用されている認定基準時間ですけれども、例えば、認定
基準時間が55分なのに要介護1と一次判定された場合には、審査会で要介護2に
変更が可能となります。増える項目は、看護職員の訪問・相談、支援の項目が追
加されます。82-10+1+1(医療行為)で74項目になるわけです。

この項目は、通院もされていない、訪問看護も利用せず薬だけ貰っている利用
者が19%もおられるそうですが、この方を対象として「看護職員の訪問による調
査」が追加されたということです。先ほど説明しましたように、調査員による認
知症の項目が減るのですが、裏を返せばかかりつけ医の意見書が大変重要になり
ます。かかりつけ医の意見書の中で認知症の中核症状、周辺症状を入念に記入し
ないといけなくなります。認知症の周辺症状である幻視・幻聴、昼夜逆転、暴言
・暴行、火の不始末などを正しく記入しなければいけません。但し嘘は書けませ
んが入念に記載漏れがないように書いてください。

先週実施しました認定審査会の資料を参考にして変更点を具体的に説明するこ
とにします。例えば、この方は、要介護3でした。今回の認定審査で一次判定で
は、要介護1状態になっているのですが、二次判定で状態像(コード10番)、要
介護3の状態像に該当するので要介護3に変更しました。しかし、この方は、4
月以降になりますと、変更する根拠が介護の時間とかかりつけ医の意見書だけに
なってしまいます。介護の時間を見ますと、44.9分で要介護1に相当しますが、
認知症が殆どありませんので自動的に要支援2になってしまう恐れがあります。
つまり、この方は、要介護3で施設に入所されているのですが、要支援になれば
施設入所が利用はできなくなるため退所を余儀なくされます。大変なことになる
事を理解していただきたいと思います。

国は、2005年の高齢化率20%が、2030年になれば31.8%になると予想していま
す。当然の事ながら、介護保険を利用する人が増えてくるわけです。しかし、兵
庫県が策定した介護保険利用者の概要によりますと、20年、21年、23年と経って
も、要支援と要介護1の数は殆ど増えていません。つまり高齢者が間違いなく増
加するにも係わらず、要支援1と要介護1の判定を厳しくすることをもくろんで
いるように思えます。母集団が増えるにも係わらず要介護1、要支援が増えない
ということは、できるだけ非該当に認定するか、あるいは要介護状態から要支援
に変更させ居宅へ移行させ、介護保険費用を抑制する政策のように思えます。こ
れは川西市の高齢者人口ですが、高齢化率は、少し前までは17%だったのですが、
平成19年にはあっという間に23%になりました。65歳以上が3万5千人ですが、
今後もどんどん増えていきます。

このように今後予想される問題は、主治医の意見書がますます重要になります。
また利用者の方が、介護認定の結果が軽くなった理由についてケアマネや行政に
問い合わせた際に、その根拠として「かかりつけ医の意見書が充分に書かれてい
ないから」と主治医のせいにされることが考えられますので充分に注意して記
していただきたいと思います。国の方向は、介護保険費を抑制するために認定審
査方法を改定し、その責任をかかりつけ医に転嫁しているように思えてなりませ
ん。
厚労省は、3月2日までに認定審査の改正について形式的なパブリックコメン
トを募集しています。ただいま説明しました点を踏まえて、厚生労働省にパブリッ
クコメントを送っていただきたいと思います。

参考資料

・要介護認定等基準時間の推計方法(平成12年厚生省告示91号)
・平成20年度要介護認定モデル事業(第二次)介護認定審査の手引き厚労省 平成20年 8月
・保険認定審査資料 一次判定変更指標
・「要介護認定等基準時間の推計の方法の一部改正」に対するパブリックコメント投稿のお願い
平成21年2月4日 日本医師会発 パブリックコメント依頼文の引用(厚生労働省)

・平成20年度版厚生労働白書 p47
・平成21年度 兵庫県老人福祉計画(第4期介護保険事業支援計画)の概要のなかで
時期計画における施設利用者、介護費用等の概要(市町計画の取りまとめ(平成20年12月))を
引用しました。

 

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