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Vol.117 千葉県行政における虚偽の役割

医療ガバナンス学会 (2015年6月15日 15:00)


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亀田総合病院地域医療学講座プログラムディレクター
小松秀樹

2015年6月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


亀田総合病院地域医療学講座をめぐって露呈した千葉県行政の不適切な行動については、すでにMRIC上で議論を開始した (1、2、3)。その後、問題がさらに明らかになりつつある。以下、現時点の状況を、資料と証言を中心に伝えたい。

2013年9月5日 千葉県健康福祉部福祉政策課 佐近優子課長からの千葉県医療審議会専門委員である亀田総合病院亀田信介院長宛のメール

「地域医療再生臨時特例交付金」(平成24年度補正予算分)の交付決定について
申請額に対して内示額が1割減であったところから、各事業の基金配分額を原則1割減額することで計画を見直し、8月12日に国へ提出したところ、9月4日付けて交付決定されました。
(中略)
寄附講座等の設置による安房医療圏の医師等確保対策事業 54,000千円
(事業者等) 亀田総合病院等

筆者の意見: 2013年9月4日、国によって、3年間で54,000千円の交付が決定されていた。県が好き勝手に変更できるわけではない。
当初、亀田医療大学がこの事業を担当することになっていたらしいが、県内のある機関から反対があり、亀田総合病院に回ってきたと聞いた。この段階で担当者も何を実施するのかも決っていなかった。その後、筆者と小松俊平経営企画室員は、亀田信介院長から、有意義なことを計画し、実施してほしいと依頼された。我々の間では、それまでの千葉県の医師等確保対策事業に問題があるという認識が共有されていた。「事業費の多くが病院の施設・備品代、情報システム整備代、イベント代、講座代にあてられた(1)」ことを無駄遣いだと認識していた。
筆者は医師確保について実績がある。上昌広東大教授と協働で、南相馬市立総合病院の医師確保対策を立案し成功させた。日本における医師確保対策として、最近5年間では最も成功した事例である。有意義な活動を行うことと、それを社会に発信すること、臨床研修病院に指定されることで医師を集めた。南相馬市立総合病院では、12人いた常勤医が震災後4人まで減少していたが、2015年4月段階で29人まで増加した。何より発信が重要だった。

そもそも、亀田総合病院の存在する安房医療圏は千葉県で最も医療人材の豊富な地域である。ただし、医師に比べて、看護師が不足している。看護師については、遠くからの就職が期待しにくいので養成するしかない。亀田グループは3つの教育施設で1学年200名を養成している。
亀田グル―プでは、毎年100人の医師が入れ替わる。安房医療圏外からきて、安房医療圏外に去る。千葉県外からの流入が多く、千葉県内への流出が多ければ、県全体の医師数を引き上げる。若い医師を吸引するマグネットホスピタルは、県全体の医師数の引き上げに役立つ。亀田総合病院がマグネットホスピタルであり続けるためには、日本全体に活動をアピールしなければならない。地域内に限定した活動は医師確保に役立たない。
我々は、時代の転換期にあたって、医療従事者の目指すべき方向を示し、どうすれば社会に貢献し、充実した職業生活が送れるかを提案することで、医療人材確保の方法にしたいと考えた。事業内容は二つ。映像シリーズと書籍の作成、ならびに、地域包括ケアに関する規格を作成することである。

2014年2月18日山崎晋一朗前々医療整備課長への長時間にわたる説明と合意
計画を実現するには、県庁の合意を得る必要があった。千葉県庁に大量の資料を持ち込んで、長時間にわたり説明した。なんとしても価値のある知的成果物を残したい。ものを買っても医師・看護師集めには役に立たない。潜在看護師の掘り起しは、すでに行われているし、今回の講座の活動になじまないので講座としては実施しない。地域では、すでに、さまざまな講演や講習が行われている。我々は、日本の大きな問題に先進的に取り組んで、日本をリードしていることを全国の医療従事者に示したい。
山崎前々課長は、当初、講座が講義形式のものであり、安房医療圏内で講義をすることで医療人材を確保しようとするものだと考えていた。筆者は、寺子屋型の講義は考えていなかった。正しい知識・情報が確定されており、知識・情報を司る権威ある教師が、権威勾配の下流に位置する生徒に、講義形式で知識・情報を伝達する、このような形式では、未来に向かって新たな知識を生産していけない。問題を同定し、議論を継続していく基盤を作るのが目的だと説明した。
山崎課長は粘り強く説明に耳を傾けて、最終的に我々の計画に同意してくれた。ただし、庁内の説得のために、年に1回だけ講演会を開催するよう要請され、これを約束した。

2014年3月10日医師・看護師確保推進室の吉森和宏氏から亀田総合病院地域医療学講座小松俊平へのメール

来年度以降の予算額について、平成26年4月以降に具体的に検討していきたいと思いますが、すでに平成26年度の当初予算額を18,000千円に組んでいるので、私の案としては、平成27年度に調整していただくことはいかがでしょうか。
平成25年度   11,377千円(補助額)
平成26年度   18,000千円(補助額)
平成27年度   24,623千円(補助額)

2015年2月4日
1年間の膨大な活動の後、千葉県庁に赴いて、山崎課長の後任の目黒敦医療整備課長、早川直樹医師・看護師確保推進室長にこの間の進捗状況を説明した。早川室長は、山崎課長との合意を無視して、安房医療圏内で医師や看護師を集めて講義や講習会を開催すること、潜在看護師の掘り起し活動をするよう強く迫った。いずれもすでに行われていることである。

2015年2月5日筆者から早川室長へのメールによる質問
前日の面談の内容に問題が多々あり、このままではプロジェクトの遂行に支障をきたすと判断し、1年前の交渉を振り返り、その上で、早川室長にこれまでの経緯を説明するとともに、以下の質問をした。また、千葉県の医療人材確保政策に問題があるので、公開で議論すべきだと提案した。

早川室長への質問
1)コンテンツの完成が遅れているとの発言がありましたが、いかなる根拠でこのような発言をされたのでしょうか。我々はコンテンツの完成予定時期は約束していなかったはずです。
2)山崎前課長との合意は有効なのでしょうか。
3)山崎前課長との合意が反故になったとすれば、目黒課長の合意があったのでしょうか。
4)安房医療圏での講演活動を活発に行い、それを報告するよう求められました。安房医療圏での講演活動が、千葉県での医療人材確保に役立つとする根拠を示していただければ幸いです。我々は、安房医療圏内での講演活動は、医療人材確保対策としては、役立たないと考えています。これまでの千葉県の医師・看護師確保はうまくいっておりません。本気で、千葉県の状況を何とかしたいと努力しているものに、無駄な努力を強いるには、誰もが納得できる合理的な根拠が必要です。県庁内での了解が得やすい、すなわち、役所の担当者の責任を回避することが、有益な活動の推進に優先されるようなことはあってはなりません。「最初に決まっていたから」改善を許さず、不合理な努力を強いるようなこともあってはなりません。補助金を有意義に使うためには、合理性が何より求められます。

2015年2月13日早川室長からの返事

以下、ご回答させていただきます。
1)コンテンツの完成が遅れているとの発言の根拠
進捗状況について私の認識が不十分であり大変失礼いたしました。
2)、3) 合意の有効性
あくまでも昨年の合意に基づいた上で、講座の回数を増やしていただけないかとのご相談をさせて頂いたものでした。ご説明が不十分であり申し訳ございません。
4) 安房地域での講演が人材確保に役立つ根拠
今後、在宅医療や地域包括ケアを進めていくに当たり、亀田総合病院、国保病院、開業医、訪問看護ステーションをはじめとする様々な立場の医療従事者が力を合わせて取り組むことが重要と考えております。講演を開催することで、短期的には「参加した医療従事者の地域包括ケアへの理解が深まり、ケアの質が向上するとともに、地域への定着が図られる」という効果がのぞめるのではないかと考えております。その結果、この地域の地域包括ケアがより進み、医療従事者にとって魅力ある地域となることにより、将来的に医療従事者の確保につながる可能性もあるのではないかと考えております。ご説明が不十分であったことをお詫び申し上げますとともに、以上、なにとぞご理解を賜れれば幸いです。

筆者の意見:外部に働きかけない限り、外からの医師・看護師の参入はあり得ない。安房医療圏では医師を養成していない。亀田総合病院は毎年100人もの医師が入れ替わっている。入れ替わることが活力の源泉でもある。外からの参入がなければ、1年と持たない。
潜在看護師の掘り起し事業は亀田総合病院の負担で毎年行っている。他の地域同様、現時点では確たる成果に結びついていない。
安房地域では「安房医療ネット」が、毎月1回、勉強会を開いて、互いに顔の見える協力関係を構築している。亀田総合病院の在宅医療部と総合相談室、2つの国保病院、在宅医療を行っている診療所、安房地域医療センターの総合相談センター、千葉県中核地域生活支援センターひだまり、訪問看護ステーション、介護事業者などから毎回100人以上参加している。会議費用はわずかだが、参加者が個人的に支払っている。
地域で自律的にうまく運用されている会議体に、行政に強要されて介入しても、有害無益である。安房医療ネットと別に講演や講習を行うとすれば、業務の邪魔にしかならない。
早川室長のメールの内容に問題はあったが、2014年2月の合意が生きていることが確認された。

2015年3月30日付け千葉県からの2014年度の交付決定通知
亀田総合病院地域医療学講座に対する2014年度の1800万円の交付決定通知(千葉県医指令2082号)を受け取った。

2015年5月1日
新しく厚生労働省から着任した千葉県健康福祉部医療整備課の高岡志帆課長と新田徹医師・看護師確保推進室長が亀田総合病院に来院。
新田室長から、亀田総合病院地域医療学講座の2014年度の補助金を1800万円から1500万円に削減する、2015度の予算は打ち切りにすると告げられた。新田室長は理由として、当初より2分の1補助だったこと、予算がなくなったことを挙げた。筆者は強く抗議した。新田室長は、千葉県側の論理を文書で提示すると約束した。

2015年5月7日筆者から高岡医療整備課長へのメール

1)添付の平成25年9月5日付の健康福祉政策課長から亀田信介宛の文書について
平成25年9月4日付けで交付決定された13.5億円のこれまでに使われた交付金の使途、日時、金額並びに、残金、交付金の保管方法についてご教示ください。
2)5月20日水曜日、あるいは、5月27日水曜日、時間的にはいつでも結構ですので、面談をお願いします。これまでの経緯について詳しく説明いたします。
3)5月2日のメールでもお願いしたことですが、新田徹室長には、昨年度の補助金削減と今年度の補助金カットについて、県庁側の論理を文書にしていただけるとの約束になっております。これも早期に作成していただけると幸いです。

2015年5月27日
亀田総合病院において、高岡志帆医療整備課長、鈴木茂之医療整備副課長、亀田隆明鉄蕉会理事長、亀田総合病院高梨総務部長、小松秀樹地域医療学講座プログラムティレクターが面談した。

高岡:事業の要綱にもですね、一番最後のページですけれども、はっきりと、5ページ目をご覧いただきたいのですが、はっきりと補助率10/10というふうに書かれていると。
(中略)
小松秀樹:それ(交付金)はどこにいったんですか。
高岡:それはどこにもいっておりませんで、出納局が管理しております。
(中略)
高岡:それで、実は去年度の時点でも、執行の留保がかかっていたような状況だったんです。お知らせできてなかったんです。先生には。
小松秀樹:そんなの聞いてないし、そもそもそれはむちゃくちゃじゃないですか。
高岡:おっしゃる通りでして。

まとめ
千葉県行政の問題がいくつか明らかになった。
1)千葉県の医師確保対策の非合理性
千葉県の医師・看護師確保対策は、早川前室長の文章が示すように、社会に通用する論理になっていない。効果があるとは思えない。問題は他にもある。例えば、県内大学病院の寄付講座に金をだして、自治体病院に医師を送りこんでも、医師の調達コストを引き上げるだけで、千葉県の医師を増やすことにはならない。これによって医師を削減される病院が出てくる。
2)行政による恣意的予算変更
表に出ない議論で、すでに事業内容について合意のある予算の執行を、実施者に合理的理由を提示することなく留保していた。その予算を他に流用するとすれば、役人は好き勝手に予算を使えることになる。
3)行政手法としての虚偽
5月1日、新田徹室長は「補助率が2分の1だった、予算がなくなった」として予算削減を受け入れるよう迫ったが、この発言は虚偽だった。新田徹室長は、嘘をついて予算削減を受け入れさせ、亀田総合病院に損失を負わせようとした。行政官だからといって、許されることではない。千葉県にとって後始末の必要な不祥事である。けじめをつけなければ、虚偽による恣意的予算変更が行政手法として継続されることになる。

文献
1.小松秀樹:亀田総合病院地域医療学講座の苦難と千葉県の医療行政(1). MRIC by 医療ガバナンス学会Vol. 094, 2015年5月18日. http://medg.jp/mt/?p=3953
2.小松秀樹:亀田総合病院地域医療学講座の苦難と千葉県の医療行政(2). MRIC by 医療ガバナンス学会, Vol.095, 2015年5月19日. http://medg.jp/mt/?p=3955
3.小松秀樹:亀田総合病院地域医療学講座の苦難と千葉県の医療行政(3). MRIC by 医療ガバナンス学会, Vol.096, 2015年5月19日. http://medg.jp/mt/?p=3957
4.小松俊平:看護師養成の背景意義および主体-千葉県の状況から考える(下). 厚生福祉, 5957, 2-5, 2013年2月4日.  http://medg.jp/mt/?p=1923

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