最新記事一覧

臨時 vol 216 「リセット禁煙のすすめ(1)」

医療ガバナンス学会 (2009年8月29日 06:16)


■ 関連タグ

―がん診療医を25%増やす方法―
 トヨタ記念病院禁煙外来
 リセット禁煙研究会代表
 予防医学で医療崩壊を緩和する会発起人
   磯村毅
医療崩壊の原因となっている医師の超過労働を減らす方法は2つに分類できま
す。医師を増やすか、患者を減らすかです。訴訟リスクを減らす、コメディカル
を増やす、経済的なインセンティブを付ける、などは、医師を立ち去らせないと
いう意味で前者に入るでしょう。
一方、患者を減らす方法には、疾患そのものを減らす予防医学の取り組みがあ
ります。
例えば、WHOは先進国でのタバコによる癌の超過死亡を約4割と推計してい
ます。つまり、喫煙率が半分になると(禁煙開始後発癌リスクは急激に低下する)、
癌による死亡は2割減る。これは癌を看取る医師が25%増えたと同じ効果が生
まれるということです。
さて、現在、妊娠がわかった時点で、35%の妊婦が喫煙しています(第43
回日本周産期・新生児医学会)。このうち約8割が禁煙を試みるのですが、妊娠、
出産、授乳と過ぎるうちに、再喫煙が多発。一歳半健診の段階で、もとの7割が
喫煙しています。
悲しいことに、母親たちは子どもの受動喫煙や、次の妊娠への悪影響を心配し
ています。それでも吸ってしまう。依存症の恐ろしいところです。
ところで、ニコチン依存には体と心の2つの依存がありますが、このように長
期間の禁煙後再喫煙してしまう場合、体の依存が原因ではありません。なぜ、そ
ういえるか分かりますか?
単純な話です。禁煙している間に、体からニコチンは・・・? そう、体外に
排出されてしまうからです。もはやニコチンが切れてきたから吸いたくなる、と
いう現象は起きません。体は治っているのです。
ではなぜ吸いたくなるのか。それは、心の依存が残っているからです。つまり、
心の問題の解決が禁煙継続の鍵になるのです。
私は、喫煙者と接する中で、ニコチンの薬理的作用と、喫煙者心理を結ぶ仮説
(失楽園仮説)を抱きました。そして、喫煙者や元喫煙者は、ちょうど心のわなに
はまったような状態で、このニコチンの薬理作用と自分の心理の関係を客観的に
認識できず、そのために再喫煙してしまうと気づいたのです。
実際、失楽園仮説を手掛かりに、喫煙者が気づきの連鎖を起こし、自分の姿を
客観的に眺めることができるようになると、禁煙継続が容易となることが分かっ
てきました。そしてそのためのプロトコール(リセット禁煙)が開発され、誰でも
簡単に利用できるように、読書療法のテキストとしてまとめられたのです。
私はタバコ問題を、予防医学の中核をなす、医療の根本に関わる課題だと理解
しています。そして、その解決には、リセット禁煙などの心理的アプローチが不
可欠だと感じています。
次回から、少しずつ、喫煙者や元喫煙者の陥っている心理的トラップについて、
紹介していきます。そして、医療崩壊を緩和するためにタバコ対策をどう進める
のが効果的か皆さんと考えて行きたいと思います。

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらにメールをお願いします。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ