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臨時 vol 215 「新型インフルエンザ流行を機に、予防接種法改正を」

医療ガバナンス学会 (2009年8月28日 10:19)


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▽ 新型インフルエンザ流行を機に、
 迅速な予防接種法改正と感染症対策にかかる国民的論議を望む ▽
           細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会
              事務局長  高畑 紀一
 連日、マスメディアが新型インフルエンザについて報じている。
 自分自身の身の回りでも、新型インフルエンザについて話題になることが増
えている。もはや、国民的関心ごとといっても良いだろう。
 新型インフルエンザを通じて見えてくる我が国の予防接種や感染症対策にか
かる問題点は少なくない。
 不十分なワクチンの開発・製造能力、ワクチン普及の障壁となる不十分な副
作用補償制度、指針の定まらない定期接種と任意接種、感染症の全数把握とい
うサーベイランス体制の不整備、等々、我が国が抱える要改善点が明確に浮き
彫りにされている。
 新型インフルエンザが関心を集めている現在は、我が国の予防接種のあり方
や感染症対策について、国民的に論議し合意形成を図る絶好の機会だ。
 8月26日、厚生労働省で「新型インフルエンザワクチンに関する厚生労働大
臣と有識者との意見交換会」が開かれた。
 表題の通り、新型インフルエンザワクチンが主題の意見交換会だが、その内容
は新型インフルエンザワクチンだけに留まることなく、他の疾病・ワクチンにつ
いても参考とすべき発言が少なくなかった。
 このような意見交換会がマスメディアに完全に公開されて行なわれたことは重
要なポイントだ。
 メディアに公開され報じられることにより、臨床、研究、患者といった様々な
立場からの生の意見を国民が知ることが出来る。
 決定事項だけを報じられてしまうと、国民は報道を通じて議論に参加すること
ができない。
 予防接種や感染症対策といった、誰もが当事者となり、かつ国家的規模で取り
組まれるべき課題については、議論が公開されることによってて国民の合意形成
が図られることが望ましい。
 ちなみに、全内容が公開されたことによるありがたい副産物もあった。
 8月21日行なわれた民主党の「新型インフルエンザ対策本部」で、ヒヤリング
に招聘された厚生労働省結核感染症課の福島靖正課長が「肺炎球菌ワクチンにつ
いては、国内で承認されているものは非常に副作用が強い。患者の重症化や死亡
のリスクを比較、考慮した上で、もう少し検討したい」と発言したと報じられ、
医療関係者の間に波紋を投げかけていた。
 民主党は医療政策の詳細版において「新型インフルエンザ対策も踏まえ、肺炎
球菌ワクチン接種の対象年齢拡大」を掲げており、報道内容に誤りがないとすれ
ば、福島課長の発言はこれに釘を刺す形となったわけだが、医療関係者からは
「肺炎球菌ワクチンは非常に副作用が強い」とする根拠に疑問を呈する声が相次
ぐとともに、このような認識で新型インフルエンザ対策は大丈夫なのか、との不
安が広がっていた。
 これについて意見交換会で岩田健太郎神戸大教授が「肺炎球菌ワクチンに関し
て先般、結核感染症課長が副作用が強いというような発言をしたけれど、これは
明白な誤り」と発言、舛添大臣に医療関係者の懸念と知見を伝える形となった。
 このことに溜飲を下げた関係者は多かったのではないだろうか。
 えてしてメディアの報道は、取り上げられた発言内容の真意や科学的妥当性と
は無関係に一人歩きをすることがある。
 全内容が公開され、マスメディアが逐一報じることで、発言の真意が伝わらな
いという誤解も避けられるようになるし、何より今回の岩田教授の発言は、意見
交換会の概要だけを報じる場合には紹介されない可能性が高いものである。
 岩田教授の発言に私のようなものが触れることができたのは、今回の意見交換
会が全てを公開して行なわれたオープンなものであったことの賜物である。
 意見交換会において、注目すべき発言が見受けられた。
 舛添厚生労働大臣が、無過失補償制度と医師の免責も視野に入れた法改正に言
及したのだ。
 無過失補償制度は現在はお産による脳性マヒに限定して制度がスタートしてい
る。
 医師の免責については、死因究明のあり方の議論の中で繰り返し医療関係者等
から発せられているが、厚生労働省は免責について積極的に検討しようという姿
勢は見せていない。
 予防接種に限らず医療全体を見渡しても、無過失補償と免責は校正労働行政の
政策の埒外に置かれてきたといっても良いであろう。
 舛添大臣は、選挙後の秋の国会で超党派により両者を盛り込んだ予防接種法改
正を目指すと発言した。
 総選挙後に舛添大臣がどのような立場となっているのか、想像することさえ難
しい状況であるが、現職の大臣のこの発言は政権が変わったとしても次政府、次
政権として是非とも重視してもらいたい。
 新型インフルエンザ流行を機に、迅速な予防接種法改正と感染症対策について
国民的に論議し、速やかな法改正を望むものである。
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