医療崩壊が言われて久しい。今回の選挙の争点の一つに社会保障制度があげら
れたが、本選挙における自民党、民主党のマニフェストに対する各種医療団体の
評価はどのようなものであったのか。当時の各種記事から見られた各団体の評価
を引用し、一覧として記載する。
(1)日本医師会
日本医師会は、8月5日時点では、麻生首相がマニフェストの発表会見におい
て、「行き過ぎた市場原理主義から決別する」と発言したことを受け、「率直に
評価したい」と肯定的に評価した。また、後期高齢者医療制度、高額療養費制度
についても、「日医が主張したとおり」、「高く評価したい」と肯定的な見解を
示した。
ところが、8月20日時点では、社会保障費、医療費につき、「民主党の方が
明確だ」診療報酬についても「民主党の方が、より明確に書いてもらっている」
等民主党の政策に対して高評価を与えた。
この背景として考えられるのは、諫早、茨城、兵庫、静岡、栃木、都医師連盟
蒲田支部など地区医師会が続々と、民主党候補支持、ないしは自主投票としたこ
とがあげられる。
(2)日本病院協会
日本病院協会は、「自民にしても民主にしても財源の根拠が明確にされていな
い」「民間のクリニックを地域医療の活性化のためにどうするかという視点が両
党とも入っていない。そこが非常に不満だ」と述べ、両党ともに低い評価を与え
た。
(3)全日本病院協会
全日本病院協会は、両党とも医療政策の長期的なビジョンが欠けていると指摘
した。
その上で、自民党のマニフェストについては、「選挙目当てにしか見えない」
とし、民主党に対しては、「具体的に書かれているが、中身に若干の矛盾点があ
る」と評価した。
(4)日本精神科病院協会
日本精神科病院協会は、自民党が目指す中福祉・中負担を支持する考えを表明
し、民主党の主張に対しては「先が見えない」と疑問視した。
(5)日本歯科医師会
日本歯科医師会は、民主党がマニフェストに掲げた租税特例措置の見直しが医
療分野にまで及べば、「暴動が起こるくらい大変なことになる」と述べ、民主党
マニフェストに対し強い危機感を表明した。
(6)日本医療法人協会
日本医療法人協会は、「自民党は、欠点は少ないが、評価すべき点はほとんど
見られない」とした一方で、民主党に対しては、「しっかりした財源論が欲しかっ
た。財源論がないのは致命的だ」「責任政党としての資質に疑問を感じざるを得
ない」と述べた。
(7)国立大学医学部長会議
国立大学医学部長会議では、民主党のマニフェストを「国民が納得する医療が
実現できる可能性を感じさせる」と高く評価した。一方、自民党のマニフェスト
に対しては、「具体的政策を明記せず、医療崩壊を止める施策も見えてこない」
と批判した。
特に、自民党のマニフェストでは、医療費削減方針の閣議決定を外すなどの記
載がなければ医療崩壊が続くことになると批判した。
(8)日本病院団体協議会
日本病院団体評議会は、自民・民主両党のマニフェストについて「一長一短だ」
とし、どちらが良いのかは、まだ分らないと評価した。