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Vol.148 南相馬市立総合病院は、医療と研究で真剣勝負する病院に成長しつつある

医療ガバナンス学会 (2015年7月31日 06:00)


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この原稿はハフィントンポストからの転載です。

http://www.huffingtonpost.jp/robust-health/egg-cholesterol_b_7288646.html

東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
特任教授 上昌広

2015年7月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


南相馬市立総合病院(以下、市立病院)が面白い。今春、新たに4名の初期研修医を迎えた。橋野洸平君、峯岸淳君、横田武尊君、山本佳奈さんだ。
これで医師総数は29名となった。東日本大震災直後、わずか4名となったのが嘘のようだ。

興味深いのは、研修医の出身地だ。橋野君は杏林大学、峯岸君は慈恵医大、横田君は九州大学、山本さんは滋賀医大卒である。福島医大出身者はいない。

余談だが、これまで市民病院が受け入れた8名の研修医は、全て福島県外の大学卒である。

知人の郡山の勤務医は「福島県立医大の卒業生がほとんど県内に残らず、まして被災地にも行かないで県外からの医師に支えられ続けている現状をどう考えるか」と言う。確かに、その通りだ。
ただ、私が注目するのは、今年の研修医のうち二名が西日本出身であることだ。

山本さんは、大学時代から、私の研究室に出入りしていた。南相馬で活動する医師と触れあい、研修先に決めた。産科医を目指す彼女は、「ここは妊婦が増えています。しかし産科医は一人。三年目も、ここに残って専門研修を受けたい」と言う。

横田君の状況は違う。彼は熊本生まれで九大卒。東北とは縁がない。市立病院を選んだ理由を「ネットで調べたら、活気があって面白そうだったから」と言う。横田君こそ、現在の市立病院を象徴する存在だ。

人材育成のため、市立病院は地道な努力を積み重ねてきた。

例えば、脳外科の後期研修医である嶋田裕記医師(27)は「及川友好先生(副院長・脳外科)のご配慮で多くの手術をこなせます。ここで出来ない血管内治療は、専門病院に出向させて貰えました」と言う。彼が南相馬に来たのは、被災地支援ではない。脳外科医として腕を磨くためだ。

今年から消化器内科の専門研修を始めた藤岡将医師(29)も状況は似ている。藤岡医師は、市立病院初の初期研修医で、そのまま残った。金澤幸夫院長の指導を受け、内視鏡に興味を持った。現在、内視鏡三昧の日々を送っている。

市立病院が面白いのは、これだけではない。震災以降、内部被曝を中心に12報の英文論文を発表した。一流医局並の実績だ。

今年からエジンバラ大学で公衆衛生を学ぶクレア・レポードさんが留学してきた。一連の学術論文の発表を知って、自分も研究したいと考えたからだ。こうやって人材交流が加速していく。

なぜ、市立病院は大きな学術的実績を挙げることが出来たのだろう。それは、金澤院長・及川副院長コンビが外部人材を上手く活用し、若者に投資してきたからだ。早野龍五・東大院理学系研究科教授、加藤茂明・元東大分生研教授、渋谷健司・東大院医学系研究科教授らが、坪倉正治医師(33)をはじめとした若手医師を指導した。外部の専門家が市立病院に集ったのは、二人の人間性に負うところが大きい。「人材を育成し、この地域を復活させたい」という信念に共感した。言い古された言葉だが、組織はリーダー次第である。

最近、市立病院の成長が加速しつつある。坪倉医師が「坪倉勉強会」を始めたのだ。毎週月曜日の夜に開催されている。
参加者は、市立病院スタッフに限らない。相馬中央病院に勤務する森田知宏医師(27)など、相馬市内の若手医師も参加する。この勉強会を通じ、最近、一ヶ月だけでも3つの論文が受理された。

「坪倉勉強会」から成果が出るようになったのは、昨年、乳腺外科を専門とする尾崎章彦医師(30)が市立病院に異動してきたことが大きい。彼が若手医師のとりまとめ、チームとして機能するようになった。
市立病院を訪問した熊本大学の医学生山口健太君は「南相馬には活気があります。ここに来れば成長できそうな気がします」と言う。彼も市立病院で研修をしたいようだ。

東日本大震災から四年が経過した。市立病院は、もはや被災地の医療機関ではない。医療と研究で真剣勝負する病院に成長しつつある。

本稿は「医療タイムス」2015年5月25日号で発表した文章に加筆したものです。

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