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Vol.171 妊婦体験しながら世界一周の旅 ~コーカサス三国、トルコ、フィンランドの報告

医療ガバナンス学会 (2015年8月27日 15:00)


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北海道大学医学部医学科4年
箱山昂汰

2015年8月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


現在、私は大学を休学し、妊婦体験をしながら世界一周の旅をしている。この旅を通して世界の人々、とりわけ男性に妊婦体験をしてもらい、妊娠や出産、子育てに関して考えるきっかけを提供したい。
私の世界一周の旅はおよそ400日間を予定している。記事を執筆している時点で、187日が経過した。これまでにアジアとヨーロッパの22か国で活動を実施し、合計546人に妊婦体験をしていただいた。今回のレポートではコーカサス三国からフィンランドに至るまでの旅の様子を紹介したい。

【コーカサス三国】妊婦体験をしてもらった人数 15人
コーカサス三国とはカスピ海と黒海に挟まれた地域にあるアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアのことであり、イランからトルコへと抜けて行く際、「どうせだし寄り道して行こう!」と思い、行くことにした。日本にいた頃には聞いたことも無ければ、関心を向けることも無かった国たちだ。
実際に訪れてみると、見どころだらけで驚いた!雄大な自然、面白い形をした伝統料理、安いワインやビール、何よりビックリするくらいキレイな女性!アゼルバイジャンの首都バクーでは、通りを歩く女性を眺めているだけで一日潰せそうだと真剣に考えていた。
これらの国々はもともとソ連に属していたため、ロシア語が通じたり、地下鉄の作りがそっくりであったり、興味深い共通点を持っていた。一方で宗教、言語、民族などのバラエティにも富んでいるため、最近まで紛争が起きていたり、領土問題が依然として解決されていない。この地域の様々なストーリーを、旅に出る前には知らないことさえ知らないままであった。コーカサスはそういった意味で、とても有意義な滞在先であったと思う。
母子保健活動は、実のところ、あまり上手く行かなかった。アルメニアの首都エレバンでは一日歩き回って一人にしかトライしてもらえなかった。その日は途中でこんなことがあった。道端で暇そうにしていたお兄さんを見つけたので、さっそく活動の主旨を翻訳した紙を見てもらった。すると、謎のおじさんが脇から入って、紙をひったくって一瞥、何事かお兄さんへつぶやいた後、私を見るなり鼻で笑って、その場を去って行った。その時の態度が頭に来て、殴りかかってやろうかと一瞬カッとなった。結局、話しかけたお兄さんもやってくれなかった。
中東では時々、東アジア人差別のようなものを感じる時もあった。そういったことの積み重ねで、妊婦体験ジャケットをつけて街を歩く勇気を失ってしまっていた。もちろん、そういう人はほんの少しいるだけで、大半の人は暖かい。活動をする上で肝心なのは、ちょっとやそっとじゃ挫けない私自身のガッツであった。

http://expres.umin.jp/mric/mric171-1_paco.pdf

【トルコ】妊婦体験をしてもらった人数 42人
トルコでは、コーカサスで上手く行かなかった活動のリベンジに燃えていた。半年近く同じことを続けているためかマンネリ化をしているところもあった。新鮮な気持ちを再び取り戻すべく、一人一人丁寧にコミュニケーションをして行こうと心に誓った。
ちょうどラマダンもあと少しで終わりという時期であった。ジョージア国境に近いトラブゾンという港町では、夕方に広場へ行くとレストランのテラス席に大勢の人が集まって、今か今かと日没を待っていた。和気あいあいとした雰囲気の中に「妊婦体験をしませんか?」と突入することはさほど難しいことではなかった。日没後に食べるイフタールは、断食を真面目にしていない私にも食べさせてもらえた。トルコ料理は味のバランス感覚が繊細で、本当に美味しい!トラブゾンで食べた魚料理は美味し過ぎて若干泣いた。
多くの世界遺産にも訪れた。だいだい色屋根の街並みが可愛いサフランボルでは、伝統的なサウナであるハマムに挑戦した。マッサージもしてもらったのだが、関節技をかけられているようで「ギブアップ、ギブアップ!」と叫びながら大笑いしていた。
そしてもちろん、カッパドキアにも足を延ばした。不思議な形をした奇岩がニョキニョキそこらじゅうに生えている様子は地球の景色とは思えなかった!ツアーには参加せずに一人でトレッキングをしていたが、街からはるか遠くにそびえる台地にのぼりきった時の感動は、いつでもすぐに思い出せる。空が本当に広かった。
イスタンブールはアジアとヨーロッパの境目にある街だ。ボスポラス海峡を眺めていると、胸が熱くなった。広大なアジアの、ほんのほんの一部しか旅することはできなかったし、妊婦体験をしてくれた現地の男性も心許無い人数だ。けれど、何はともあれアジアを渡りきったのだ。次の冒険の地、ヨーロッパに思いを馳せた。

http://expres.umin.jp/mric/mric171-2_paco.pdf

【フィンランド】妊婦体験をしてもらった人数 16人
イスタンブールからフィンランドの首都ヘルシンキへと飛んだ。出発する前にヨーロッパのどこかの街で母と合流してデートをする約束をしていた。そこで、最も訪れてみたい国であるフィンランドを集合場所に決めたのだ。北欧は物価がとんでもなく高いけれど、母のお財布をあてにできるなら行ける!と考えた。フィンランドは福祉国家であり、お母さんに優しい国世界ナンバー1との呼び声も高い。母子保健の旅をしているのに、世界で一番を見ておかないのは気が済まなかったのだ。
フィンランドではどうしても見ておきたい箱があった。全ての妊婦さんに無料で支給される育児準備ボックス、マタニティパッケージだ。中には、デザインの可愛い服が一通り入っているだけでなく、爪切り、絵本やおもちゃ、お風呂用の温度計、母乳パッド、避妊具などなど、赤ちゃんが産まれた時にあったら嬉しいものがたくさん入っている。更に、箱の底にはスポンジが敷かれていて、中身をすべて出したらベイビーベッドになるという優れものだ。
この箱が現役で活躍している姿を見るべく、母が来るより少し先にヘルシンキに到着して、ホームステイをした。お世話になったご家族には2歳半と8か月の男の子がいて、本当に可愛かった!箱を見せてもらうとともに、それに関していろんな話を聞いた。妊婦さんは箱または現金約2万円の受給どちらかを選べるらしく、最初の赤ちゃんの時に箱をもらって、次の子ではお金をもらうのが一般的らしい。箱のふたには樹形図の絵が描かれていて、赤ちゃんの曽祖父まで家系図が書けるようになっていた。命のバトンタッチを一目で見ることができるデザインに感動した。
ステイ先のお父さんは、本当に素敵なパパであった。耳たぶには大きなコルクが入っていて刺青が大きく描かれており、道で会ったら近寄りがたいロックな風貌の方であったが、私の妊婦体験ジャケットを率先して着けて家事にトライしてくれたし、赤ちゃんの相手も当然のようにずっとしていた。
私は妊婦体験をしてもらった人に対して最後に「My hope is you’ll be a Good father!」と言って締めくくることが多かったけれど、以前までは私自身が良いパパというものをいまいちイメージできていなかった。しかしこれ以後は、このステイ先のお父さんを思い浮かべるようになった。
フィンランドに滞在してみて、「出来ることならここでお母さんになりたい!」と思った。男性の私でさえそう思ってしまうほど、この国にはお母さんに優しい雰囲気が漂っている。フィンランドはやはり世界でナンバー1だった!

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