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Vol.238 現場からの医療改革推進協議会第十回シンポジウム 抄録から(7)

医療ガバナンス学会 (2015年11月23日 15:00)


*このシンポジウムの聴講をご希望の場合は事前申し込みが必要です。

http://plaza.umin.ac.jp/expres/genba/symposium10.html

2015年11月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


2015年11月29日(日曜日)

【Session 09】東北で医療を育てる(2) 15:50-16:50

●いわきの取り組み
新村浩明

私は、福島県いわき市の公益財団法人ときわ会常磐病院の院長を務めている。いわき市に来て10年の間に経験した、福島県いわき市の医療状況とその推移、そして医療人材不足に対するときわ会の取り組みについて報告したい。
いわき市の人口は、震災後に大きく増加した。現在、約32万4千人の人口であるが、震災後は福島第一原発周辺自治体より少なくとも約2万4千人の人々がいわき市に避難されている。
いわき市は他の東北地区と変わらず医師不足が著しく、特に勤務医が不足していることが特徴である。いわき市の人口10万人あたりの勤務医数は、81.5人であり、全国平均147.7人、県平均110.7人を大きく下回っている。また、いわき市では看護師養成学校が少なく、他の医療職の養成校が一校もないため、パラメディカルの慢性的な不足が生じている。
のような状況で、いわき市に基盤をおくときわ会グループでも、全職種が人材不足である。人材獲得のため1)働きやすい職場、2)子育て支援、3)笑顔あふれる人間関係の構築を通し独自の工夫をしている。
・働きやすい職場:医局といわれる大部屋は存在せず、全室個室で対応している。医師には三食を無料で提供している。源泉かけ流しの大浴場が院内にある。
・子育て支援:院内託児室および病後児保育を併設している。ときわ会グループに幼稚園があり、送迎を完備している。学童保育を独自に行い、オリンピック選手や有名大学学生を招き教育をしている。
・笑顔あふれる人間関係構築:職員は笑顔
で働いて欲しいとの願いから、院長自ら仮装をしグループ施設を巡回している。仮装はチョンマゲの侍の姿でやっている。またときわ会独自のライブイベントを催し、職員に楽しんでもらっている。

以上の取り組みで、どこまで職員獲得や職員定着につながっているかは分からないが、少なくとも多くの取り組みは職員から大好評のようである。

●リーダー教育としての看護専門職通信教育
佐藤智彦

団塊世代が一斉に後期高齢者になる「2025年問題」まであと10年、150万人いる看護職員は今後10年でさらに50万人必要とされる。そのような看護師不足の根底に看護教員不足があり、各医療圏で看護教員の取り合いになっている。本年度から私が主催する星槎大学大学院教育学研究科看護教育研究コースは、看護師養成施設教員の創出を主目的とする。現在7名の大学院生は、いずれも社会人で、看護教員3名、看護師4名からなる。
なぜ通信制か、それは働きながら学べるからである。
学生たちは忙しい日常業務をしながら、いかに新人や後輩看護師に十分な教育をできるか考え、より働きやすい職場を目指して、大学院で教養を深め、新規の看護研究を立ち上げ、研究論文としてまとめ、教育学修士取得を目指していく。そこでは自学自修をはじめ、対面式授業があり、横断的学修として、教育関連専門職の大学院生とともに議論する研究発表会も経験する。
入学時の看護教育に関する研究意欲と基礎的能力をもとに、修了後に各現場で指導的役割を担うことを大きな目標としている。ICT(情報通信技術)を利用したスムーズな連絡手段と、貴重な対面時間の有効利用とで高度専門社会人教育としての通信教育をより効率的に進めていくことが可能となる。
4名の大学院生は福島県出身の看護師で、東日本大震災以降の深刻な看護師不足解消に向けた意識の高さが表れており、さらに一部の学生は職場からの学費援助を受けている。ここで行う看護専門職通信教育は、星槎大学の通信教育システムを利用できるため低コストであり、学生自身にとっての今後に向けた大きなステップアップ(転職を含む)や、学費援助を行う職場にとって看護職リーダーの育成という高付加価値を生む。
このように、看護専門職通信教育は、「学び続ける場所」を提供することで看護師不足問題に対する1つの解決策を示すとともに、リーダー教育への投資を行う医療関連企業の大きな一助となる。

●東北で医療者を育てる 仙台厚生病院の取り組み
宮坂政紀

仙台厚生病院は「選択と集中」を特徴とする循環器、消化器、呼吸器の専門病院である。心臓カテーテル検査数、心筋梗塞患者数、胃・大腸癌の内視鏡治療数、肺癌手術数はいずれも東北一であり、東北の基幹病院の一つだ。
若手医師にとって、仙台厚生病院での研修には利点と欠点がある。
例えば、仙台厚生病院は早期に診療技術を身につけたい若手医師には良い環境となる。理由は「症例数が多い」、「症例数の割に医師数が少ない」、「経営状態が良く留学などの人材投資が可能」、「若手の雑用を減らす工夫がある」、「仙台は都会であり、東京へのアクセスも良い」などが挙げられる。
一方で、「多くの症例を経験でき雑用も少ない反面、診療にスピードを求められること」や「総合病院ではないため、初期研修で他院をローテーションしなければならないこと」などが欠点として挙げられる。
いずれも考え方や個人の資質によっては利点にもなりうることではあるが、例えば、専門を決めていない初期研修医にとっては消化不良となる場合がある。
仙台厚生病院は多くの専門家を輩出する一方で、教育面では未だ試行錯誤を繰り返している。私は若手医師教育に関するプロジェクトチームに配属された。若手の教育機関として仙台厚生病院の利点と欠点につき考察したい。

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