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Vol.011 特養入所の待機は長蛇の列 ~特養再開はいつ~

医療ガバナンス学会 (2016年1月12日 06:00)


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医療法人誠励会ひらた中央病院
事務長 二瓶 正彦

2016年1月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私たちは福島県石川郡(人口4万2千人)を中心とした地域医療に携わっています。高齢者へ医療を提供していれば、必ず介護サービスが必要になります。全国での要介護認定者は600万人を超えている中、石川郡の高齢化率は29.5%、65歳以上の12,428人のうち要介護認定者は2,219人(65歳以上の17.8%)と全国と同程度に要介護認定者がいらっしゃいます。石川郡は石川町・玉川村・平田村・浅川町・古殿町と5つの町村で構成されますが、社会福祉法人石川福祉会が運営する特別養護老人ホームが各町村に1つ、他に老健4施設とグループホーム3施設の合計12の介護施設があります。特別養護老人ホームは、民間の介護施設と違い、公的な施設のため利用料金が他より安価なことから人気が高く、そのため入所待機者数が多くなります。申込から入所までの全国平均待機日数は1年3ヶ月と言われています。

石川郡でも、なかなか介護施設への入所は厳しく、長蛇の列となっています。5つの特別養護老人ホームでは合計定員316床、常に満室です。300名以上の待機者が常時おり、特養の相談員からの報告では、重度の認知症・単身世帯・老々介護で在宅生活が困難な申込者は比較的早めに入所できるが、家族が一緒に住んでいる申込者の入所は数年後になります。平均待機日数は1年8ヶ月となっており、待ちきれない家族から自宅で介護することが難しいと相談を受け、当院の介護療養型医療施設に一時的に入院していただいたり、法人内の介護老人保健施設・他の介護施設に入所していただき、特別養護老人ホームに入所できる日を待っています。

東京の介護保険施設と当法人の料金を比べると、月に特養で1万円、老健で2万円東京が高くなっています。サービス内容がほぼ同じ介護付有料ホームはさらに料金が高いため、東京の介護施設に入所出来ない方で、当法人内の介護施設に入所されたケースもあります。当法人の有料老人ホームに東京から入居された方からは、東北出身で都内に身寄りがいないこともあり、「昔懐かしい景色の中で、自分の年金で生活出来る事は助かります。」「親戚に迷惑をかけずに済むのでホッとしました。」と安堵の声を聞きます。当法人の老健入所者の申込から入所までの平均待機日数は75日間です。在宅復帰型の施設なこともあり、特養ほどの待機日数にはなりません。老健の申込は石川郡からだけではなく、他に隣接する5つの市町村からもあります。

震災前との大きな違いは双葉郡からの入所者がおられることです。福島原発事故直後、当法人では171名の高齢者を受け入れました。1年後には36名に減りましたが、4年9ヶ月経った現在も10名が生活しています。避難して仮設住宅の暮らしが長期化するなど生活環境の変化から介護が必要になり、避難先の介護施設に申込をしているがなかなか入所できないために、当法人内の介護施設に入所するケースもあります。10名の福島原発事故直後から生活している利用者が当法人の施設で生活を続けているのは「原発事故後、あの避難・避難と移動する大変な思いをするのはもう嫌だし、ここでの生活にも慣れたし、家族も平田村の方が見舞いに来やすいのでこれ以上移動はしたくない」という理由からです。

福島県の特養待機者は1万人をはるかに越え、震災前より2,000人ほど待機者は増えています。福島原発事故前の川内村の高齢者は、相双地方の介護施設に入所するケースが多くありました。震災前の双葉郡の特養施設は5施設で500床ありましたが、現在は先日開所した川内村の特養を合わせて2施設で116床しか運営できておりません。川内村の特養もすでに120名以上の申込があり、現在は70名入所が決まっております。ちなみに川内村の方が35名、うちこの特養がキッカケで帰村する方が22名となっており、川内村に特養が開所したことは復興に大きな役割を果たしていると考えています。川内村出身で避難していた家族からは、「やっと村に戻れました。戻りたくても親が郡山市の施設に入っていて、戻る時は親も一緒に村に戻りたかったので、この特養ができて本当に良かったです」と、避難していた家族がやっと落ち着いて生活できると感じています。

人材確保は困難でしたが、スタッフうち川内村出身者は16名、帰村のキッカケになった方が6名います。帰村して勤務している20歳の介護士は、原発事故当時は高校生で、卒業後にはいわき市のグループホームで勤務していましたが、村のゆったりした雰囲気が好きで祖母がすでに帰村していたので、川内村へ帰るキッカケを探していました。
「ずっと村に帰りたかったし、お年寄りに助けられて育ったので今度は助ける側に回りたい」と祖母と実家に住みながら勤務しています。

川内特養も来年の1月には満室になってしまい、待機者が発生する状況にあります。一人でも多くの入所希望者に対応するためにはどのようにすればいいのか?特別養護老人ホームは、長期的に生活する場なので、入所の回転を上げる事は難しいです。よって、震災前に運営していた双葉郡の介護施設が再開していかなければ、川内特養の申込者は増え続け、希望に答えることが不可能になっていきます。その為にも、双葉郡の介護施設が再開すれば、福島県全体の待機者の受入が少しは改善すると思います。

福島県高齢者福祉計画では、特養などの介護保険施設を整備して増加する計画になっている一方、需要に合わせることができるのかはわかりません。人材確保等の問題も多くありますが、私たちにできることはまだまだあります。福島県の高齢者、人生の先輩方が残りの人生を楽しく生活できるよう支援していきたいと思っています。

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