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Vol.075 妊婦体験しながら世界一周の旅 ~タンザニア、ザンビア、ナミビア、南アフリカの報告~

医療ガバナンス学会 (2016年3月24日 06:00)


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北海道大学医学部医学科4年
箱山昂汰

2016年3月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現在、私は大学を休学し、妊婦体験ジャケットを携えて世界一周の旅をしている。この旅を通して世界の人々、とりわけ男性に妊婦体験をしてもらい、妊娠や出産、子育てに関して考えるきっかけを提供したい。

私の世界一周の旅はおよそ450日間を予定している。この記事を執筆している時点で、ちょうど1年が経過した。これまでにアジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米の36か国を訪問し、合計929人に妊婦体験をしていただいた。今回のレポートではタンザニアから南アフリカに至るまでの道中で見聞きしたことについて紹介したい。

【タンザニア】妊婦体験をしてもらった人数 20人

ダルエスサラームに到着する数日前、パリ同時多発テロが起きた。犠牲となった方のことを想うとやるせないし、それに加えて、これまでの旅で出会った素敵なムスリムの人たちへの最大の侮辱なような気がしてムカついていた。そんな中、リゾート地であるザンジバル島へと向かうフェリーのチケットを買いに行った際に、オフィスのお兄さんにこう話しかけられた。
「パリのテロ事件知ってる?イスラム教ってありえないよね。」
「え、でもこの国ってムスリムの方、たくさんいません?」
「ううん。全然いないよ。」

タンザニアには全人口の3分の1以上のイスラム教徒が住んでいるのだが、キリスト教徒からしたら認めたくなかったのかもしれない。温度差のようなものを感じて歯がゆかった。ちなみに彼から買ったチケット、10ドル余分に港使用料を取られていた。

この国では妊婦体験の活動を積極的にトライできなかった。現地の人に「チャイナチャイナ!」と言われ続けることに疲れ、旅行者と見てしつこく絡んでくる人に嫌気がさしていた。これらのことはタンザニアだけに限ることではないのだが。
何をするでもなくザンジバルのビーチで1日中海を見ていた時、ダウ船の模型で遊ぶ子供たちがいた。帆の形を変えることで意のままに進行方向を変え、風上の方でさえ進んで行く。昔からずっと、模型で遊ぶことによって感覚的に操舵方法を学んでいったのかなと想像し、ニヤニヤしながらその様子を見守っていた。

http://expres.umin.jp/mric/mric_hakoyama1.pdf

【ザンビア】妊婦体験をしてもらった人数 52人

ザンビアは大学1年生の頃に学生団体の活動で訪問したことがあり、今回は2度目。首都のルサカを訪れると、以前よりも大型のショッピングモールが増えていて、道路もキレイに整備されており、ザンビアが発展して行っているのを感じた。そして何より、無事に懐かしい第二の故郷に戻って来られたことを嬉しく思った。

街の中心部の公園で妊婦体験の活動をしていた際、大学生の男女6人組に出会った。ザンビアの公用語は英語であり、私からもいろいろな話をできるので、家族計画について聞いてみた。「将来子供は何人欲しいですか?」という問いに対して、女性陣は声を揃えて2人と答えていた。一方である男性は、ザンビアの人口は日本に比べて少ないことなどを理由に6人くらいがベストだと言っていた。また、産む人数をどう決めるかという話の中で、女性陣はパートナー同士話し合って決めると言っているのに対して、男性陣は何かしら現地語で反論していた。その様子を見ていて、この国にもまた男尊女卑の社会構造があるのだろうと思った。

農村部にあるモンボシ村にも再度訪問して、ホームステイ先のご家族と再会した。驚いたことに、52歳のお父さんに生後4日の赤ちゃんがいた。13人目らしい。ルサカの大学生が6人と言っていたのもこの国では至極普通のことだったのかもしれない。家の子供たちはそれぞれ3年分大きくなっていた。中でも当時12歳でお転婆という言葉がぴったりだっ
た女の子のディメトリアは、3年経って遊ぶ側から下の子たちの面倒を見たり家事をする側に変わっていて驚いた。こうやって女の子はお母さんになって行くのかもしれない。村では3年前と同じようにのんびりと時間が過ぎて、タイムスリップしたように錯覚する程であった。私はひげが生えてお腹に変なものを持つようになったけれど、村の人たちは変わらず穏やかに受け入れてくれた。

村を歩いているとどこか心が安らいでいくのを感じた。と同時に、いろんな些末なことに心が捉われていることに気が付いた。アフリカの旅は基本的にしんどい。上手く行かないことを数え上げてはイライラしたり、少しのお金をごまかされては激怒したり。しかし、それは本当にもったいなかった。アフリカは大きくて、でも自分は小さくて、そこにあったものでさえ、しっかりと見て来られなかったかもしれない。村でそのことに気付くことができて良かったし、アフリカをここまで旅して本当に良かったと思った。

http://expres.umin.jp/mric/mric_hakoyama2.pdf

【ナミビア】活動はお休み

首都ウィントフックや大西洋に面したスワコップムントといった街は、さながらヨーロッパのように洗練された雰囲気を持っていた。旅人の間でも「ザンビアより下はアフリカじゃない」と言われている。

この国と南アフリカでは、これまでで初めて一度も妊婦体験ジャケットをザックから出さずにいた。それはある旅人の影響を受けてのことだった。同じく大学を休学して世界を放浪している彼は「テーマが無いことがテーマ」と言っていて、自由に世界とぶつかり学んでいる姿はとてもカッコ良く、憧れた。一方で自分の旅はどこか息苦しいように思えてならなかった。10kgの妊婦体験ジャケットを着けて海外の街を歩くこと自体しんどいし、その試みにどれだけの意味があるのかも良く分からなくなっていた。自分の中で答えが出るまで、活動から距離を置いてみようと思った。
ナミビアでは様々なことに挑戦した。中でもスカイダイビングは本当にエキサイティングであった!スワコップムントでは1万5千円ほどで挑戦できるとの情報があり、当時一緒に行動していた友人とそこへ向かった。砂漠の真ん中にある基地のような場所で、まずは誓約書に記入をする。この時友人は「良い人生だった」と言いながら半生を振り返っていて、おいおいやめてくれよとなる。記入したらあっけないほど早く着替えてセスナに乗せられて、上空3000mへ。あれよあれよという間に空を飛んでいた!地面が遠過ぎるのとタンデムで後ろにプロがいるので怖さは余り無く、風を切る爽快感がたまらなく気持ちよかった!!

http://expres.umin.jp/mric/mric_hakoyama3.pdf

【南アフリカ】活動はお休み

南アフリカのケープタウンは、これまで訪れた街の中で一番に好きだ。そこには広大な自然も、美しい街並みも、考えさせる歴史や博物館も、何もかもがあった。また、久しぶりにマクドナルドもあった!毎朝通って朝マックを食べる中で、お金を出せば手に入る環境って素晴らしいと思っていた。マクドナルドが無い国もあるのだ。
そして、アフリカ縦断のクライマックスである喜望峰を訪れた。アフリカ大陸に4か月ほど滞在する中で、そこを訪れる時のことをずっと夢見て来たはずなのに、いざ到着しても涙の一つも出ないし、あまり感慨深くない。きっと次の冒険がすぐそこに迫っているからであった。ケープタウンからアルゼンチンのブエノスアイレスへ。次は南米大陸だ!

http://expres.umin.jp/mric/mric_hakoyama4.pdf

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