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Vol.083 妊婦体験しながら世界一周の旅 ~エジプト、スーダン、エチオピア、ケニアの報告~

医療ガバナンス学会 (2016年4月5日 06:00)


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北海道大学医学部医学科4年
箱山昂汰

2016年4月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

現在、私は大学を休学し、妊婦体験ジャケットを携えて世界一周の旅をしている。この旅を通して世界の人々、とりわけ男性に妊婦体験をしてもらい、妊娠や出産、子育てに関して考えるきっかけを提供したい。
私の世界一周の旅はおよそ400日間を予定している。この記事を執筆している時点で、300日が経過した。これまでにアジア、ヨーロッパ、アフリカの30か国で活動を実施し、合計825人に妊婦体験をしていただいた。今回のレポートではエジプトからケニアに至るまでの道中で見聞きしたことについて紹介したい。

【エジプト】妊婦体験をしてもらった人数 24人
はじめて見たカイロの空は、真っ白であった。昼間なのに太陽はシルエットだけしか見えず満月のようで、じっとりと暑くどこか息苦しかった。あとになって記録的な砂嵐の影響による一時的なものだと知ったのだが、着いた時は「またえらいところに来たんだな」とうらめしく思っていた。
砂漠気候のため日中は我慢できないほど暑いのだが、日が沈むとコロッと過ごしやすくなって人通りも活発になった。しかし安全を考えて夜の外出は必要最低限と決めているので、妊婦体験の活動も日中にトライした。ハーンハリーリという観光客の押し寄せる市場で声をかけてみようと街に出たところ、暑くて暑くて、着くまでで既にヘトヘトになった。着いたら着いたでビジネスライクなエジプト人の集まるエリアだからか、妊婦体験をする代わりにお金や煙草を要求された。しつこく絡んでくる人を無視していると、罵声が飛んできて、やれやれとなる。他にも「それは男のやることではない。女は強く出来ているから大丈夫だ!」と言って笑われたりもした。こういう人にこそ着けてもらいたいのだが、無理強いすることでもないので諦めて退散した。ハーンハリーリでは完敗であった。
しかしもちろん、悪いことばかりではなかった。紅海に面するリゾート地のダハブで仲良くなったエジプト人は、ピラミッドの案内をしてくれたり、シーシャの吸い方をカフェで教えてくれた。ありがとうを連発していたら、「俺たちの間柄でありがとうなんて水臭いからやめろ」とよく言ってくれた。どこの国でもそうだが、観光地にたまっている人たちは少し特殊だ。そこだけ見て、その国を判断しないようにといつも思う。

http://expres.umin.jp/mric/mric_20160405-1.pdf

【スーダン】妊婦体験をしてもらった人数 43人
首都のハルツームにてNPO法人ロシナンテスの川原尚行先生にお会いして、数日間お世話になった。先生は中高生の頃にテレビで拝見して以来ずっと私の憧れであり、実際に現地でお会いできることになったときは本当に嬉しかった。先生のお話によると現在はスーダン政府の制限が厳しくご自身が前線で活動することは困難であるため、裏方として巡回診療や水の浄化事業の調整をしていらっしゃるとのことだった。
先生の近くでお話を聞いていると、ロケットからお寿司に至るまで様々な分野の人が登場してびっくりした。スーダンにて長く活動され独自のネットワークを持つ先生は、医療だけでなく様々な分野を繋げて行くプラットホームとして活躍されていた。
巡回診療を行っている各村の代表者を集めた会議に私も同行させていただいた。先生はこの会議の中で地域医療保険に関する新たな提案をなさっていた。やり取りの中で「村から急病人が出た場合にどうするか」という質問に対し、代表者の方々は全会一致で「村で一番のお金持ちに相談して、それでも足りないなら村人同士助け合って工面する」と応えていた。ムスリムの人たちの助け合いの考え方だ。しかし、実際のところはロシナンテス頼みのことも多いのだとか。帰り道に思い切って、先生の夢を伺った。「さっきの人たちと一緒になって、これまでにないより良い医療の形を追い求めることかな」とおっしゃっていた。本当にカッコイイ先生であった。

http://expres.umin.jp/mric/mric_20160405-2.pdf

【エチオピア】妊婦体験をしてもらった人数 25人
アディスアベバではトラブル続きであった。まず到着した次の日にコレラになった。かの有名なコメのとぎ汁状の大量の下痢便を体感できて医学生として感無量であったが、しばらく体調が優れなかった。他にもATMからお金を引き落とそうとして処理に問題が生じたり、ケニアのオンラインビザの申請が上手く行かなかったりと踏んだり蹴ったりで、アディスアベバの神様は相当私をタフにしたいのだなと思って耐えた。
この街では、日頃からお世話になっているNGOジョイセフの方にご紹介いただいたオロミア州母子保健担当官のタイエさんにお世話になっていた。調子の悪い時に薬を買ってくださったり、ATMトラブル解決のため銀行の方に事情を説明してくださったり、何から何までお世話になった。そのお返しとは言い難いかもしれないけれど、妊婦体験ジャケットを現地の材料で自作してプレゼントすることにした。ローカルマーケットにて2000円ほどでリュックとゴムバンドとブラジャーを買い、3日くらい宿に閉じこもって縫い物をした。10kgの重さがお腹にしっかりとかかるように腰のゴムベルトは特にこだわった。Made in Japanクオリティで作ってみせますと豪語していたものの結局完成品は手作り感満載のものになってしまったのだが、タイエさんはとっても喜んでくれてヘルスプロモーションに使ってくれると約束してくれた。ただの重りではあるけれど、これからもエチオピアで誰かの人生を変える小さなきっかけになってくれたらと思う。

http://expres.umin.jp/mric/mric_20160405-3.pdf

【ケニア】妊婦体験をしてもらった人数 47人
ナイロビは治安が悪いということで有名だ。ネットで下調べをすると怖いエピソードが次から次へと目に留まり、到着前日の夜は銃を突きつけられているイメージが頭から離れず、なかなか寝付けなかった。しかし、案ずるより産むが易し。出歩く時間帯と場所を間違えなければ、アフリカ随一に発展していることもあって買い物に便利で、何より人々がフレンドリーで楽しかった。もし犯罪に巻き込まれたとしたら、それに出くわすことになった自分がまず悪いのだと肝に銘じつつ、街を探検した。
この街にはアフリカ最大級と言われているキベラスラムがある。現地の信頼できる方と相談した結果、孤児院を経営されているガイドの方を雇って妊婦体験の活動をトライしてみることにした。高級住宅街や綺麗なモールからバスで10分くらいのすぐそばにキベラ地区は広がっていて、土づくりの粗末な家が密集していた。中に入ると狭い道が迷路のように入り組んでいて、地面にはゴミが散らばりヌメヌメしていた。しかし、そこに住む人たちは気持ちの良い人が多く、子供たちはキラキラとした目でHow are you?と声をかけてくれる。大人たちも快く妊婦体験をしてくれて活動の趣旨を理解してくれた。
スラムの中を歩けば歩くほど、問題意識のようなものがなくなってきた。確かに劣悪な環境であるが、それを受け入れて笑って暮らしている人がいる。私はどちらかというとスラムを出た後にタウンで見た高層ビルや綺麗なモールに歪さを感じた。画一的な貧富の基準があるように思えたのだ。
アフリカは旅をすればするほど、分からないことが増えるような気がする。しっかりと見聞きして、しっかりと考えて、これからも世界を勉強して行きたい。

http://expres.umin.jp/mric/mric_20160405-4.pdf

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