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Vol.108“こども と 震災復興”国際シンポジウム2016 ~相馬地方の5年のあゆみ~

医療ガバナンス学会 (2016年5月5日 15:00)


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2016年5月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2016年5月8日(日曜日) 9:00-17:00

研究報告【第3部】 -震災・原発事故の社会的影響-

●地域社会で子供達をどう守るか?
IAEA 核物質保全管理部門長
Peter Johnston

放射線防護の国際的な体制構築は、まずUNSCEARによって取りまとめられた科学的な調査結果に基づいて作成され、次にこの枠組が決まると、ICRPからの勧告案が作成され、最後はIAEAによって安全基準が作成される。子供への放射線被曝からの防護において、この体制下では異なる機関は緊密に連携している。子供の放射線による被害からの防護においては、地域社会の枠組み内で行う必要がある。大人に比べて子供についてはより詳細な科学的な調査報告があるが、子供は大人より、放射線被曝により感受性が高い。そのため、放射線被曝リスクの評価において、子供への被曝総量が、健康被害評価を行う上でしばしば基準として使われる。
福島第一原発事故の放射性物質により被災した地域の状況は、放射線防護の国際的な体制下での評価では、“現存被曝”に分類されるため、被曝からの防護は、防護の基本原則(悪益より有益を優先)と防護の適正化(被曝を最小限に止める)に従い対策を立てる必要がある。基本原則に従い防護対策を作成する際には、その地域が直面しているすべての被害を勘案する必要がある。なぜならば放射線被曝の問題だけが、被災地では常に最優先する課題ではない場合があるからである。
この点を一番理解し易い例として、子供への医療放射線被曝における健康リスク評価が挙げられる。子供への医療被曝によるがん発症リスクの評価は現在多くの調査研究が進行中である。疫学的調査の結果は解釈が難しく、また結果は必ずしも一致しない。しかしながらこれらの結果から、CTスキャンを子供が受けると、1000人に1人はこの医療被曝によりがんが後年発症するという結果であった。しかしながら多くの場合はCTスキャンによる画像診断をしないことで見落とされる疾患による発症リスクに比べると、このCTによる発症リスクは小さい。CTスキャンを受ける両親は放射線被曝を受けるという事で心配かもしれないが、様々なリスクのバランスを考えて子供にとって何が最善か考える必要がある。
一旦放射線防護の基本原則に基づき、防護のための放射線の測定システムが完成したら、次のステップは防護の適正化である。医療の世界では、放射線測定や検出は最新の機器や技術が使われる。被災地周辺地域では、正常な生活を送るために必要な各地域での放射線測定は、被曝量を抑えるためにとても重要な事であるである。それぞれの自治体はそれに必要な助言や放射線測定のための制度を確立するために支援が必要であるが、IAEAは様々な活動やプロジェクトを通じて支援を行っている。

●福島における原発事故後の避難と健康リスク
インペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院 疫学統計教室博士課程
野村周平

防災対策を考える上で、避難に伴う健康影響は重要な課題である。2011年の福島原発事故後、10万人を超える住民が原発周辺から避難し、結果として多くの避難民が死亡・疾病リスクに対して脆弱な環境に置かれることとなった。
原発から10-40 km圏に位置する南相馬市及び相馬市における原発事故後の避難に伴う健康影響(死亡及び慢性疾患)のデータを用い、大規模避難に対する初期及び長期的な対策に関する教訓や課題を紹介する。

●福島の放射線防護 – 若い世代に力を
東京大学大学院理学系研究科教授
早野龍五

はじめにBABYSCANによる福島の乳幼児の内部被ばく測定結果を説明した後、高校生と共に行ったD-シャトル計画について報告する。
2014年に立てられたD-シャトル計画は、福島、その他の国内、フランス、ポーランド、ベラルーシで暮らす高校生の個人線量を比較したもので、200人以上の学生・教師が参加した。この結果、福島県の居住区域やベラルーシの個人の外部被ばく線量は、その他の地域の値から推定される年間自然被ばく線量の予測範囲内に留まることが明らかに示される。
基調講演

●災害対応と復興の教訓
WHO健康開発総合研究センター 上級顧問官
野崎慎仁郎

●東日本大震災後の新生児健康調査
南相馬市立総合病院 研究員
Claire Leppold

母体と新生児の健康は、公衆衛生上、重要な要素である。過去の災害の後、被害に遭った母体より出生した新生児において、低出生体重や早産の割合が増加することが、報告されている。しかし、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故が、母体と新生児の健康に与えた影響については、ほとんど情報がない。今回の発表において、私たちは、南相馬市立総合病院において、2008?2015年にかけて出生した全ての新生児に関して、先の震災による影響を明らかにするために、出生時の健康状態を評価した。私たちの研究結果は、新生児の健康状態が,震災前後で大きな変化がなかったこと、加えて、母体の避難や福島県産食品に対する忌避感が、新生児の健康に大きな影響を与えないことを示唆している。これは、過去の災害で得られた知見を鑑みた際に予想外の結果であり、発表では、その考えられる理由を考察したい。さらに、発表の最後において、子供がいる母親や家族、研究者、さらには、一般の人々に対して、今回の研究から得られるもの、そして、今後さらに研究を深めるべき分野を示したい。

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