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Vol.131 「新専門医制度前夜」 第34回臨床研究会のシンポジウムの報告と所感(第一回)

医療ガバナンス学会 (2016年6月6日 06:00)


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仙台厚生病院
遠藤希之

2016年6月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

MRIC 読者の皆様、初めまして。
みちのくは宮城、仙台厚生病院におります遠藤希之(まれゆき)と申します。専門は病理診断科です。また、当院の医学教育支援室、室長も兼任しております。賢そうなポジションに聞こえますが、最も重要なミッションは1~2年目の研修医のお世話と研修プログラム立案、各部署へのお願い(と謝罪)といった雑用です。ただし立場上、「新専門医制度」についての情報収集も噂程度の段階から行わざるを得ず、当院の内科基幹病院プログラム申請まで色々とお手伝いをしております。

さて先日、4月23日に奈良において「第34回臨床研修研究会」が開かれました。例年、全国の臨床研修病院のトップや、各地方厚生局の担当官、そして文科省、厚労省の企画官、室長までもが参加するというやや意外な研究会です。
今回は「新専門医制度前夜」と題された非常に興味深いシンポジウムがありました。

シンポジストは日本専門医機構理事長の池田氏、日本内科学会新専門医担当理事の宮崎氏(近畿大学)、日本外科学会からは北郷氏(慶応大、北川教授の代理出席)、家庭医療指導医の草場鉄周氏(北海道家庭医学センター)の4名です。
諸先生方の講演内容はさまざまな説明会での内容とほぼ同様で、目新しい、あるいは重要な情報はそれほどありませんでした。

一方で、会場との質疑応答には、聞き捨てならないやりとりが随分とありました。ひとまず、この稿ではそのいくつかをご紹介したいと思います。

●内科専門医制度が始まると、現在よりもサブスペ専門医の取得が2-3年は遅れる可能性が高い。問題あり、と思うがいかがか?

池田氏:その程度の遅れは問題ないと考えている。
宮崎氏:現在でも最短年限で内科認定医を取っている医師は1/8程度である。1-2年遅れるのが大部分のため、新制度でも問題ないと考えている。

●内科系サブスペ取得まで2-3年遅れが生じるとなると、特に出産、育児の時期と専門医研修が重なる女性医師が内科を敬遠し、皮膚科や放射線科、麻酔科といった科に流れる可能性がある。若年女性医師が30%を超えている現在、かなり問題があると思うが、いかがお考えか?

池田氏:自分はそうは思わない。ただし実際に内科系志望者が激減するようであれば、その行き先、例えば皮膚科だったら皮膚科プログラム募集人数の上限を少なくすればよい。(専門医機構が皮膚科)プログラムの認可をするためそういう方策も可能だ。

●専攻医研修の前文には「リサーチマインドの涵養」と高らかにうたっているが、専門研修中に大学院にも行くことは可能なのか?

池田氏:専攻医研修中に大学院進学を妨げるものではない。学位の研究と研修の両立が可能であれば問題ない。
質問者:ただ、内科の履修症例数などをみるとかなり大変のように感じるが。
池田氏:それは当然だ。専攻医研修と学位の研究は基本的に相反するものだ。おそらく両者を取得するには6年程度はかかるだろう。また両立ができるかどうかは本人の「がんばり次第」でもある。

読者諸賢も上記について色々思うところもあることでしょう。とはいえ、早くも字数が尽きてきました。
次回も引き続きいくつかの質疑応答を紹介し、できればそれぞれについての僕自身の考えも記したいと思います。

また、医師の地域偏在問題の質疑応答も(当然ながら)多数ありました。こちらについては、最近の厚労省の慌しい動きも合わせて考える必要があります。そちらはまとめて別稿にしたいと思います。

本日は、拙稿をお読みいただきありがとうございました。

※会場では録画、録音禁止だったため、質疑応答は自分のメモから書き起こしました。明らかな間違いがありましたら全て責任は自分にあります。ご指摘いただけましたら、お詫びして訂正いたします。

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