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Vol.141 「新専門医制度前夜」 第34回臨床研修研究会のシンポジウムの報告と所感(第三回)

医療ガバナンス学会 (2016年6月20日 06:00)


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仙台厚生病院
遠藤希之

2016年6月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

「新専門医制度前夜」シンポジウム報告、第三回です。

第二回は「地域医療への影響の可能性と厚労省のスタンス変化」に寄り道してしまいました。その問題は重いのですが・・・

とはいえ、今回は、ひとつ前に遡り第一回の続きといたします。こちらが本流のつもりでした。

《第一回報告のあらまし:「第34回臨床研修研究会」で「新専門医制度前夜」なるシンポジウムがあった。シンポジスト:日本専門医機構理事長、池田氏、日本内科学会新専門医担当理事、宮崎氏(近畿大学)、日本外科学会、北郷氏(慶応大、北川教授の代理出席)、家庭医療指導医、草場鉄周氏(北海道家庭医学センター)。なお厚労省や文科省の担当管も出席する会である。講演内容よりもむしろ質疑応答が興味深く、いくつかを紹介した》

まず最初に。
第一回の質疑応答の内容で書洩らしていたことがありました。お詫びして追記いたします。

●内科専門医制度が始まると、現在よりもサブスペ専門医の取得が2-3年は遅れる可能性が高い。問題あり、と思うがいかがか?
・・・という質問に対する内科学会、宮崎氏の回答に追記です。

宮崎氏:現在でも最短年限で内科認定医を取っている医師は1/8程度である。
追記 「ただし、女性医師に限れば23.6% が最短年限で内科認定医を取っている。」(中略)・・・なので、新制度でも問題ないと考えている。

内科系の女性医師についてもお調べいただいていたようです。宮崎先生、データのご提供、ありがとうございました。

では、質疑応答報告の続きです。シンポジウムの最後、パネルで質疑応答が行われました。その最後に以下の質問が出ました。

●日本専門医機構の存在意義を教えてほしい。

池田氏:それはですね、
質問者:いや先生(と、池田氏を遮り)、内科、外科の先生がたにお尋ねしたいのです。

なぜこのような質問が飛び出したのか。宮崎氏、北郷氏の回答を記す前に、背景の解説が少しあったほうが良いと思いました。皆様ご存じかとは思いますが、以下、お読みいただけると嬉しいです。

当初、「日本専門医機構」とは、臨床系医学会とは全く無関係に「専門医」を認定する機関として「新制度」を作るはずでした。ところが、いわゆる基本領域19学会を始め、あらゆる学会から猛反対を受け、有力な学会を取り込まざるをえなくなります。そして各学会が、多かれ少なかれ専門医機構の手足となり、新専門医プログラムを作り始めました。

機構は本来、全くの「任意団体」。つまり厚労省の言うところの「第三者機関」なのです。ところが、各学会の執行部には「厚労省」が陰から操っている団体と錯覚されていました。

つい先日、皮膚科学会の島田先生が「日本専門医機構には、法的根拠はないが、バックに厚労省がおり、皆で作っていく制度であるから、(機構に)従わざるをえないと進んできた面がある」との発言もそれを裏付けるように思います(M3.com「医療維新」の記事から)。

結果、内科学会、外科学会(と、その他の基本17領域学会)ともに専門医研修プログラムを独自に「作らされる」ことになりました。その「研修プログラム」を認定するのは「日本専門医機構」。ただそのお墨付きを得ないと、なぜか、日本医療界ではつぶされるような雰囲気が漂っていたと聞きます。

それはそれとして、内科学会、外科学会ともにプログラムを提出し、何度も「専門医機構」から指導を受け、ようやく専門医プログラムをこしらえました。ただし、それらはかなり「無理のあるプログラム」になりました。

そのため今回の臨床研修研究会でも、外科のプログラムについては二十もの県が《「プログラム基幹病院」には、その県にある「医学部付属病院」1施設しか申し込みができない》と公表していました。かなりハードルが高い、または「敷居を高くした」プログラムなのでしょう。

ただし、今回参加の外科学会シンポジストの北郷氏がいみじくも吐露していました。
「これまで少なくとも年間、七百人(~九百人)の外科志望医がいた。これが五百人まで減ったら大変なことになる」そのような危機感を持っていることもたまたま、教授の代理でいらっしゃった若手の先生の本音、なのかもしれません。

さて、結局、研修プログラムについて、丸投げされた内科学会と外科学会、そのほかの学会も、1年ちょっとしかない年限で、それぞれのプログラムをなんとか作り上げました。はっきり言って、プログラムを作ったのは各学会です。日本専門医機構ではありません(認可、した、と、言い張ってますが)。

また、産婦人科学会や病理学会の認定更新医にはこの春、早々と日本専門医機構からの「認定証」が送られています。しかし審査したのは各学会の委託委員でした。
しかも今回の「専門医認定証」には、ご丁寧にも「厚労省の標榜科」とは現在のところ無関係、との書付が添付されていたそうです。産婦人科医の間では「騙された!」との声が上がっているとも聞きます。

先ほどの質問に戻ります。
要は、日本専門医機構はとは、各種の専門医プログラムを編めるようなプロフェッショナルではない。また、厚労省の標榜科も得られない認定医を「認可」する「任意団体」らしい。今更、そのような団体の「存在意義」などないであろう、という質問がなされた、ということです。

さて、専攻医プログラムを「認可」される立場からの「日本専門医機構」の存在理由についての回答です。

●日本専門医機構の存在意義を教えてほしい

宮崎氏:これからも必要です。新しいプログラムを作るに当たり、沢山の助言をいただきました。素晴らしいプログラムができたと思います。また将来は、内科学会に所属していなくても、専門医機構の内科専門医になり、更新することが可能になることもよいと思っています。

北郷氏:新しいプログラムを作るに当たり、沢山の助言をいただき、素晴らしいプログラムになったと思います。

お二方ともに、優等生、とても素晴らしい回答と感じました。ただ??の点もありますね。人間というものはどうしても、想定外の質問に頓珍漢の回答をしてしまうことがあるのでしょう。

以上、第三回のご報告は以上にします。

もしかすると読んでいた読者さんには、尻切れトンボと感じる方もいらっしゃるかもしれません。申し訳ありません。

次回は、ざっくりとこの「新専門医制度」の問題点を、今回の質疑応答で明らかになった視点も含めて列挙していきたいと思います。

その一方で、臨床研修医のお世話をしている自分としては「専門医機構のおかげでこんな素晴らしい専攻医研修制度ができた」と豪語されているプログラムについて「ありえない、こんな研修プログラム!」というアリの目からの問題も書いていきたいと思います。

長くなりました。今回も拙文をお読みくださってありがとうございました。

※三~四回で、終わりにしようと思っていたのですが、しばらく続きそうです。すみません。自分の筆力のなさと、とんでもなく問題がありすぎる新専門医制度があいまった事変です。

皆様、もしお暇でしたら、お付き合いくださいませ。また編集者様には、さっさと打切ろ、とおっしゃってくださっても大丈夫です。
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