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Vol.145 勉強するが族議員ではない、そんな政治家が必要です

医療ガバナンス学会 (2016年6月24日 06:00)


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※この文章は、『ロハス・メディカル』5月20日号に掲載されたものです。

内科医・前参院議員 梅村聡

2016年6月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

これからの政治家に必要なのは、既存の仕組みやルールを勉強して熟知しつつ、自分の脚元を崩すような大胆な改革を提案できる、そのような資質だと思います。現在の国会議員の中では、そのような考え方をする方が少ないように思います。そういった資質を持ちたいと思ってこれまで活動してきました。これからもその信念を変えずに頑張りたいと思います。

夏の参議院議員選挙で、おおさか維新の会の比例代表(全国区)予定候補者となりました。議席を失ってからの3年間を思い起こし、間もなく始まる挑戦に向けて、頑張ろうと決意を新たにしています。

●議員は勉強が大切

外から国会審議を眺めるようになって、特に医療や社会保障分野の論戦に歯痒い思いをすることが、とても多くありました。官僚側も、理詰めで筋の通った質問や問題提起をされたら真摯に答えるものです。議員側(質問する側)の勉強が足りず、ちょっと耳にした話を思いつきで口にする、政府の答弁も形式的に留まる、そんな審議ばかりで、本当に歯痒く思いました。

戦後70年以上を経て、国の仕組みやルールの多くが、制度疲労を起こし現実に合わなくなっていることは間違いありません。ただ、すべての仕組みやルールは、何らかの目的があって、その目的と現実の折り合いが付く形として人々の納得を得てきた歴史を持っています。ですから、仕組みやルールのせいで何か問題が起きているとしても、短絡的にそこにだけ対処しようとすると、必ず別の問題が起きます。その目的は今でも必要なのか、必要だとしたら目的に適う部分は守りつつ問題解決につながるような改善策はないか、という順番で考える必要があります。もし目的が失われているのなら、仕組みやルール自体をなくしてしまって構いません。本来の目的や歴史的経緯抜きに、現在見えている仕組みやルールだけを云々するのはナンセンスです。

例えば、『ロハス・メディカル』の2015年10月号(http://lohasmedical.jp/e-backnumber/121/#target/page_no=27)で私は、「いわゆる混合診療の禁止」は、医療の質と供給を担保するため価格による競争を防ぐ目的で決められたルールであり、現在の厚労省による規制は形式に囚われ過ぎて当初の目的を逸脱しているので正しく運用せよ、と主張しました。なぜ、こんな主張をできたかと言えば、「混合診療禁止」が決まった経緯について知っている現役や元の官僚たちの大勢から話を聴き、当初の目的の意味について確信を持ったからです。
●族議員ではダメ

ここで気をつけなければならないのは、既存の仕組みやルールに関する勉強は必要だけれど、だからといって、いわゆる「族議員」になってはいけない、ということです。

なぜなら、「族議員」になってしまうと、現在の仕組みやルールに適応している人たちと心情的・経済的に同化してしまって、いくら歴史的経緯を知っていても、そのフレーム自体の変更を提案することは不可能になるからです。

卑近な例で言えば、がんの免疫チェックポイント阻害剤「ニボルマブ」(商品名・オプジーボ)の問題があります。患者数の極めて少ない悪性黒色腫を前提に薬価設定されながら、その後、患者数のケタ違いに多い非小細胞肺がんに適応拡大され、しかしそういう事態に対応するルールがなかったため体重60kgの人で年間約3500万円という薬価はそのままで、国民皆保険制度の脅威になりつつあります。

なぜ政治家は、「薬価を設定し直せ」と言わないのでしょうか。

業界に染まっている人は「製薬会社のイノベーションを妨げるから、急なルール変更は望ましくない」と、もっともらしいことを言いがちです。しかし、製薬会社のかけたコストに適正と考えられる利益を乗せて薬価が設定されている、という根本に立ち帰れば、適応拡大の際に患者数に応じた薬価の再設定をしても、イノベーションを妨げることになるはずがありません。

あるいは、「そういう問題は中医協で話をすることになっている」という人も、いるかもしれません。そういう人には、「中医協に任せているからという理由で国民の納得を得られると本気で考えていますか?」と問うてみたいところです。

そもそも、なぜ製薬会社のイノベーションを薬価で支えた方が良いのかと言えば、我が国には、イザという時には誰もが最善の治療をお金の心配なく受けられる国民皆保険という素晴らしい制度があり、その制度の中にできるだけ良い治療を取り込みたいからです。そして、高額でも効果さえあれば比較的制限なく薬を使える国民皆保険があるからこそ、製薬会社も市場を確保できるのです。国民皆保険を壊してしまったら、国民はもちろん困りますが、製薬業界の関係者だって困るはずです。

そうやって考えれば、薬価の再設定と、ルールの見直しをせよという声が、既存のルールを熟知しているはずの「族議員」たちから挙がらないと、本来おかしいのです。
●フレームを疑え

高齢化と人口減少の進む日本で、右肩上がりの時代に出来た既存の仕組みやルールを守っていたら何とかなる、ということはあり得ません。ただし、深い洞察もなしに現れる問題をモグラ叩きにしても、次から次と新たな問題が出現するだけです。

何を守るのか、何を変えても構わないのか、政策決定の仕組みにまで遡って見極めることが必要な時代だと考え、参議院議員1期目の6年、勉強を続けると同時に、意識的にそういう発言を行ってきました。自分自身の知識が深まり、さらに呼応してくださる方たちも現れ、フレームの改革が動き出したかなというところで残念ながら国政から離れ、この3年間は外から眺めていました。
もし国政に復帰することができたなら、予習は充分なので、1期目以上にフレームから疑って、国民のためになる仕組み・ルールづくりに取り組みたいと考えています。これからも全力で頑張ります。

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