医療ガバナンス学会 (2016年9月21日 06:00)
この原稿は月刊集中8月31日発売号に掲載されました。
井上法律事務所 弁護士
井上清成
2016年9月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
このため実際上は多く、病院等の管理者つまり院長が医療安全の担当者の一人または数人を指名して、死亡及び死産症例のすべての医療記録をチェックさせることとなろう。そこで、その指名された医療安全の担当者が一つひとつチェックしたことを示すチェック記録を作らなければならない。院長に簡潔かつ明瞭に報告する意味があることはもちろん、法令を遵守していることのエビデンスを残す意味もあろう。
そこで、「死亡・死産(全例)チェックシート」の作成をお勧めする次第である。
2.法令遵守版のサンプル
とは言っても、「死亡・死産(全例)チェックシート」の書式については決まりがない。各医療機関ごとに実情を踏まえてアイデアを出し、使い勝手のよいものを創意工夫するのがよいと思う。そこで、取りあえずここでは「法令遵守版」としてのサンプルを提示したい。下記を参考にされるなどして、医療安全の確保にとって有効適切なものにアレンジしてもらえればと思う。
法令遵守版のサンプルは、省令・通知に明記されたとおりに、医療安全担当者が院長に対して遺漏なく速やかに報告するためのチェックシートである。「速やかに」なので、死亡・死産後1~2週間を目安とするのがよい。チェック内容については、じっくり精査するというよりも、記録をすべて集積してそれらの記載をひと通りチェックし、法令や院内規程に沿ってそれらの項目への意見の結論を簡潔にメモしていく、という体裁にした。
3.チェックのポイント
まずは、「医療事故該当性その他のチェック」であり、医療事故調査制度にいう「医療事故」かどうか、である。「死亡・死産の予期」について順序通りにチェックし、それとは別個独立に、今度は「死亡・死産の医療起因性」をチェックしなければならない。どの死亡・死産症例についても、「予期」と「医療起因性」の両方を必ずチェックする必要がある。
次に「意見」であるが、「医療事故に該当の疑い」があれば当然、次の段階への意見を述べることとするが、医療事故かどうかの「判断」は別途に院長が行う。逆に、「医療事故に該当せず」となっても、そこで終わりではない。院内での検証の必要があるかどうかをチェックしなければならないのである。最後に、それらとは別途に、遺族からの申出の有無などを勘案して、遺族への説明の必要性についてもチェックしておくとよい。
http://expres.umin.jp/mric/mric200_inoue.pdf