医療ガバナンス学会 (2016年11月9日 06:00)
リオオリンピックが終わってから、はや2か月。日本選手団の目覚ましい活躍は、記憶に新しい。
さて、女子競泳選手の400メートル個人メドレー後のインビューを皆さんは覚えておられるだろうか?
試合後倒れこんでしまった彼女は、「昨日、生理が始まりすごく疲れていた。でも、それは理由にならない。今日の自分の泳ぎが良くなかった」と述べた。
多くの選手はこのような発言をしない。いや、言い出しにくい。競技のコーチの多くが男性であるがゆえ、「生理中だ」と言えない女性選手は少なくないのだ。
●飲み忘れないために机の上に置いたら・・・
私事で恐縮だが、大学生になった頃から生理痛がひどくなってしまった。起き上がることができず、授業に出られない日も多々あった。困り果てて婦人科を受診し、低用量ピルの存在を知った。
ピルの内服から7年が過ぎた。倦怠感や月経痛は多少あるものの、生理痛は内服してすぐに激減した。日常生活に支障を来すことは全くなくなった。
そんな低用量ピルは、毎日内服する必要がある。正しくは、21日間飲み続け、7日間休薬する。医師となった頃から、飲み忘れが多くなってしまった。そのため、医局の自分の机上に置くことにした。その後、飲み忘れることはなくなった。
だが、最近、「ピルを机の上に置かないように」と注意を受けた。理由は、「避妊薬を置くな、という指摘が医師からあったから」だという。
納得できず再度尋ねると、「ピルを机の上に置くのは、コンドームを置くようなものだ」とある医師から言われてしまった。これが日本におけるピルに対する理解の現状なのだと感じた。
2013年の国連人口部の統計によると、日本のピルの服用率はわずか1%。フランスは41%、ドイツは37%、英国は28%、米国は16%と、欧州におけるピルの内服率は日本と比較してはるかに高い。
日本は、韓国の2%、中国の1.2%にも及ばない。日本はピル後進国と言わざるを得ない。
●女性の社会進出を促すためにも正しい認識を
なぜ、こんなにも服用率が低いのだろうか。1つの理由は、承認が遅かったからだ。低用量ピルが日本で承認されたのは1999年。米国に遅れること25年、国連加盟国の中では日本の承認が最も遅かった。
2つ目の理由は、医師による処方が必要だからだ。ピルをドラッグストアで購入できる国が多い中、日本では医師の処方なしにはピルを手に入れることはできない。
近年、女性の社会進出が進んでいる。ピルを内服し、体調管理している女性が増えてはきているものの、理解が追いついていないのが現状だ。ピルに対する正しい理解が広まることを切に願う。