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臨時 vol 338 「来年度の診療報酬改定は大幅プラス改定が必須」

医療ガバナンス学会 (2009年11月16日 12:01)


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評論家/元財務官僚
村上 正泰


来年度予算編成作業において注目されるのが診療報酬改定の行方である。先の総選挙に
おいて「総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げていきます」と主張してき
た民主党が政権をとり、医療政策の大転換に対する期待が高まる中での診療報酬改定は、
医療政策的にも政治的にも、きわめて重要な意味をもつものだと言えよう。私は、10月
に上梓した『医療崩壊の真犯人』(PHP新書)という本の中で、かつて財務省勤務時代に厚
生労働省保険局に出向し、医療制度改革に関わった経験をもとに、いかにこれまでの医療
費抑制政策が間違っていたかを論じた。医療現場の実態を見るにつけ、もはや次は医療費
のどこを削るかというモグラ叩きに力を注ぐ段階ではなく、いかに日本の医療を再生させ
るかという点に議論を集中すべきであると痛感する。このまま医療費が増えていくと負担
に困ってしまうという「医療費亡国論」的な発想から脱却することが急務であり、次期診
療報酬改定はその試金石である。

先日開催された行政刷新会議ワーキンググループでは、診療報酬も議論の俎上に乗せら
れ、開業医と勤務医の収入格差の平準化や、収入の高い診療科の報酬引き下げなどが必要
という結論になったそうである。勤務医の待遇改善が必要であり、そのための対策が喫緊
の課題であることは改めて指摘するまでもない。救急や産科への重点化なども不可欠であ
る。だが、それらの財源を診療所の診療報酬引き下げで賄おうとすることは適当ではない。
短絡的にそのようなことをすれば、逆に診療所の崩壊を招きかねない。そうなると、その
分だけ外来の患者が病院に向かい、勤務医はさらに大変になる。医療制度は全体としてひ
とつのシステムなのであり、どこかに局所的に痛みを与えると、それが他にも波及し、か
えって制度が歪みかねない。「開業医は儲け過ぎ」というのは、医療現場の実態を無視した
感情論の域を出ていない。

行政刷新会議ワーキンググループに財務省主計局が提出した資料は、これまで財務省主
計局が繰り返し主張してきたようなデータのオンパレードだが、その中で「財源捻出分は
病院勤務医対策に充てて、国民負担を増やさずに医療崩壊を食い止める取り組みを行って
はどうか」ということが書かれている。財務省主計局の頭の中には、いまだに「医療費亡
国論」がうごめいているのだ。そして、長妻厚生労働大臣までもが、財務省主計局のよう
に「できる限り全体としての上昇幅を抑えながら、引き下げ部分をどう配分するか。大胆
に見直すべきだ」と発言している。だが、診療報酬の大幅プラス改定なくして、医療崩壊
を食い止めることなど、到底不可能である。この現実を直視することから始めなければな
らない。

もちろん、だからと言って野放図に増やすことはできないのだから、医療再生に向けた
中長期的なビジョンと財源問題との間のバランス感覚が必要となってくることは言うまで
もない。しかし、財務省主計局には(組織の役割からして仕方のないことではあるのだが)
財政優先の論理しかない。これまでの医療政策はそうした財政優先の論理に押し流され、
その結果としていまの医療崩壊が発生しているのだ。結局のところ、診療報酬をどの程度
プラス改定にするのかという問題には、財政優先の論理を乗り越えた、バランス感覚の中
での政治的判断が不可欠である。今後、年末に向けて激しい政治的な駆け引きが展開され
ることになるだろうが、大幅プラス改定の賢明な政治決断が行われることを期待したい。

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