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Vol.003 自分ファーストに考えた時の大学院選び

医療ガバナンス学会 (2017年1月5日 06:00)


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この原稿はハフィントン・ポストからの転載です。

http://www.huffingtonpost.jp/motoi-miura/public-health-school_b_13449538.html

中央大学経済学部国際経済学科 4年
三浦基

2017年1月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

昨今、「医療」や「健康」関連のニュースを見ない日はない。週刊誌まで、こぞって薬や食べ物に関する記事を掲載する。

私は経済学部に身をおいているが、兄が医学部に通っていることもあり医療に興味があり、将来、メディア関連の職に就いて、医療についてのさまざまな情報を正確に発信したい。そのようなゴールを設定したときに、公衆衛生大学院へ進学して、少しでも医療の知識を頭に入れて進学しようと思った。そのとき、自分は、国公立大学の公衆衛生大学院へ進学するか、私立大学のそれに進学するか悩んだ。

自分は、まず、直接自分に影響する、学費、教授陣の背景、また、定員といった大学院別のミクロのデータを調べて、どちらにいくべきか判断しようと思った。

以下で、公衆衛生大学院を設置している東京都文京区にある国立大学を国公立大の代表として挙げ、私立大学(慶應義塾大学、帝京大学)と、三つの学費、教授陣のデータ、定員に関して、比較を行い、どちらに行くべきかの議論を展開する。

まず、学費である。自分が選んだ代表的な国公立大学(以下;国公立大学Aと表記)は、二年間でおよそ80万であった。対して、慶應義塾大学は、およそ320万、帝京大学は180万であった。金額を単純に比較すれば、国公立大学に進学するという結論が出ると思う。

しかし、昨今、国公立大学は国の財政難から交付金を削減され、人件費は大幅に削減されている。そのような状況で、実力や指導力のある人物が国公立大学へ残るだろうか。自分はそうは思わない。

一昨年、某プロ野球チームで、メジャーリーグの高額オファーを蹴って、日本のチームに帰ってきて、「男気」があると話題になった選手がいたが、あのような例は稀有で、人間なら、誰しも高額な給料を払ってくれるところで仕事をしたいだろう。

加えて、学費の差であるが、国公立大学Aと私立の二校を対比したとき、奨学金を利用すれば差はなくなると推測できる。例えば、帝京大学の場合、公衆衛生大学院生が対象の奨学金は存在しないが、日本学生支援機構の大学院生用の奨学金は月最高8万円まで借りられるので、それを利用すると、国公立大学と帝京大の学費の差を十二分に補填できる。

また、慶應大の場合、学費はより高額になるが、学内に公衆衛生大学院生対象の奨学金もあるので、前述の日本学生支援機構の奨学金と併せると、さほど学費に関して差は存在しないと考えられる。

次に、教授陣の背景はどうだろうか。以下、データが収集可能であった教授、助教授、及び、准教授のみについて議論を進めていきたい。
まず、彼らの大学の経歴である。国公立大学Aの教授陣は、約70%が、国公立大学Aの学部卒であった。そして、慶應大の場合も、80%が慶應大卒であった。また、帝京大学は、100%が学外出身者という興味深い結果となった。

普遍的な話ではないが、その大学特有の「雰囲気」というものは存在するように私は思える。事実、私が通う中央大の生徒は、総じておとなしいと世間的にも評価されているそうだ。

仮に、同じ大学出身者が教授陣のほとんどを占めていると、似た雰囲気を持つ同士で、仕事をするので、日々何も刺激が起こらず、教授自身の成長も見込めないだろう。教授の成長が見込めないことは、私達、生徒の実力がつかないこととほぼ同値だと私は考える。

よって、大学教授の出身大学の散らばり具合で判断すると、自分が、一番実力がつき、成長できそうなのは、様々なバックグラウンドを持った人材が集まる、私立大学、特に帝京大学なのではないかと思う。

次に、教授たちが、医師免許を持っている割合を調査した。国公立大学Aは、医師免許所有者が、全体の73%、慶應大学が60%、帝京大学が46%となった。私は、この結果を見て、そもそも公衆衛生大学院とはどうあるべきかをまず考えた。

公衆衛生とは、ウインスローの定義を引用すれば、「共同社会の組織的な努力を通じて疾病を予防して寿命を延長して、身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である」そうだ。つまり、病気を、薬などではなく社会的努力で予防しようとするのが公衆衛生の目的であり、より平易な言葉に直すと、医師に診てもらう前に病気予防の第一関門としてできることを考えるのが公衆衛生だと私は思った。

公衆衛生を学ぶにあたり、医師から学ぶことがほとんどを占めていると思うが、それ以外のこと、例えば、感染症の水際での対策などはその道のプロフェッショナルに学ぶ必要があると思う。だから、第一関門の構築の仕方を学びに行く私たちが、第二関門である医師から専門的なことを学びすぎると、方向性がずれてしまうと思う。

以上の点を考慮すると、教授陣のうち73%を医師が占める、国公立大学Aよりは、私立大学の方がさまざまなことが学べそうなのでこの点からも私立大学に軍配が上がるだろう。

最後に、募集人数からどちらが優位か判断してみたいと思う。国公立大学Aは、募集人数は30名、帝京大が10名である。

ここで、慶應大学は、少し特殊で、健康マネジメント研究科の中の、医療マネジメント専修、スポーツマネジメント専修の中で希望者が公衆衛生プログラムを学ぶ仕組みになっている。そして、ここ数年の合格者の平均は40名ほどなので、公衆衛生プログラムに進む人数は最も多くて40名である。

ところで、国公立大学Aの教授、助教授、及び、准教授の人数は26名、慶應大学のそれは12名、帝京大学のそれは13名である。そして、募集人数の数(慶應は40人として計算)をそれらで割ると、順に、約1.12名、3名、0.59名である。

この数字から、私は、帝京大のすごみを感じた。というのは、この数字が表すことは、指導者一人当たりが見る生徒の数だが、1を下回るということは手厚い指導が受けられることを表しているからだ。

以上の議論より、この場合、国公立大と私立大の公衆衛生大学院の比較ではなく、三つの個別の大学院の比較になるが、私は、帝京大学の公衆衛生大学へ進学するのが一番勉強に打ち込めそうであると思った。

ここまで、私は国公立大学、私立大学の公衆衛生大学院のどちらに行くか、学費、指導者の背景、募集定員という大学個別のミクロの三種類のデータを概観して、議論を行った。三つの切口とも、全体的に私立大学の方が勝っているように感じた。

自分は、実力がある人の下で勉強して、自分も実力をつけて就職したい。だから、有能な人材が集まり難いと考えられる現在の国公立大学の状況を鑑みると、私立大学の公衆衛生大学院へ進学するのが正しい選択だと思う。

よって、自分は現在のところは、私立大学の公衆衛生大学院へ行きたいと思う。今回はここで締めるが、次は、国の交付金の状況などの、マクロの側面から、どちらの大学院へ行けば考えてみたいと思う。もちろん、どちらの大学院に進学するとしても、試験はあるので勉強のほうも同時に頑張りたい。

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