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Vol.051 今の日本人のままで民主主義を守れるのか 梅村聡のあの人に会いたい~小松秀樹・前亀田総合病院副院長(上)

医療ガバナンス学会 (2017年3月7日 06:00)


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※この対談記事は、『ロハス・メディカル』2017年1月号に掲載されたものです。

ロハス・メディカル編集発行人
川口恭

2017年3月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

患者の自律をサポートするには何が必要なのか、元参院議員・元厚生労働大臣政務官の梅村聡医師が、気になる人々を訪ねます。

梅村 患者の自律というキーワードを編集部からもらいまして、自律の反対は権威かなと思いました。そこで、権威と闘うというイメージが極めて強い医師として先生のお顔が浮かびました。お久しぶりです。本日はよろしくお願いします。

小松 お元気でしたか。7月の参院議員選挙では、大変なことになったと聞きましたが。

梅村 ご心配をおかけして申し訳ありません。秘書2人が公職選挙法違反で罰金の略式命令を受けました。

小松 先生が買収(編集部注:正式には「買収の約束」)だなんて、と驚きましたよ。

梅村 まず僕自身は、選挙運動員にお金(報酬)を渡していませんし、お金を払う約束もしていません。もちろんそんな指示も出していませんし、うちの陣営からお金が渡された事実も皆無です。だから僕自身は1回の事情聴取すら受けていません。1人の秘書の知り合いが、そのまた知り合いに「梅村事務所を手伝ったら報酬をもらえるよ」という趣旨のメールをした、というのがすべてです。
選挙では、無報酬で活動する(ボランティア)選挙運動員と、ウグイス嬢や運転手、事務作業員のように報酬をもらえる役割とがあります。ですので、我々サイドの反省点としては、その説明の仕方が悪かった、注意不足だったということになります。もちろん詳細を私は知りませんが、全体を通じて、認めればこの範囲で済ますけれど、認めないと……という雰囲気みたいなものもあったようです。もちろん事務所としての「注意不足」は、事実なんですが。

小松 それ、日本の司法制度の問題ですよね。あらゆる所でやってますよ。

梅村 この人が主人公というのが、一番ストーリーとしてクリアだと。では、このストーリーのための材料を集めよう、というのが司法の流儀なわけですね。

小松 フィクションを前提にして、その前提をうまく使わないと、法律ってなかなか働かないんですよね。民事裁判では、どちらかが必ず正しいことにするとか、刑法は有罪か無罪のどちらかにするとか。決められるというのが嘘です。

梅村 それより何より疑問に思ったのは、取り調べを受けた人の何人かが、なんであなたたちは無報酬なのに梅村を応援しているんだ、と警察に訊かれてるわけです。梅村の話をこの間聴いて日本の医療を変えるために応援せなあかんと思ったから、と言ったら、「本当か?」というわけですよ。利益がないにも関わらず無報酬で行くわけがない、後で何かをしてもらう約束をしていたことはないのか? という論理(疑い)です。

小松 警察も公式には、そんなことさすがに言わないでしょう。

梅村 もちろん警察も本気でそうは思っていないと思いますよ。あくまでそんなことを訊かれた人がいるというだけですから。ただ、自分が好きでファンで心から応援したいと、そういう純粋な気持ちで、手弁当で行くなんてのは怪しい、という論理も成り立つということです。

小松 その警察の話は、それなりに正しい、その通りだと思いますよ。日本の選挙の法律って、市民社会を前提にしていて、民主主義社会をみんなで作り上げているという前提の下にやってる。でも、実際に選挙を手伝っているのは、既得権益を守るための人が報酬なしでやる。そういう自分の利益なしに不特定多数のためなんて、金をもらわずやるヤツなんかいるわけないじゃないか、と。

梅村 たしかに何かを狙っているから無報酬でやる人もいるわけで。世の中全体に奉仕をするために、仕事を休んで収入ゼロにしてやる人がいるのかという話ですね。

小松 ただ、報酬がいかんとなると、この国の民主主義が果たして守れるのかという感じがします。

梅村 そうです。今回感じたのは、この今の公職選挙法では、政治のマニアしか選挙に関わりにくいなということです。

小松 既得権益者だけですよ。

梅村 そう、既得権益者しか選挙を手伝うモチベーションが生まれにくいということです。結局一般の方が無報酬(ボランティア)で選挙に参加するのは、ハードルが高いということなんです。

小松 その意味では、むしろ、ある程度の数の人間に対しては適切な額の報酬を払うのが当然だと思いますよ。

梅村 そうですね。僕も今回思ったのは、1日の上限と人数を決めて、その範囲内であれば運動員に対しても報酬を払える、と、そういう風にした方がいいんじゃないかと。こんなグレーな状況が言われるんでしたらね。
結局下心があるけれど隠しているヤツと実利のあるヤツしか来ないってのが、今の一般的な見方なわけですから、そんなやり方をしていると、結局既存の勢力を守るために全エネルギーを使うという人間ばかりが選挙事務所に寄って来る。民主主義の根幹の部分に寄って来ると。そういうことになるんでね。こんなことで民主主義が委縮するくらいだったら、公職選挙法を変えて、限度を決めてある程度報酬を認めるというのも、ありかなとも思いますけど。

小松 本当にそうですね。だけど、いずれにしても今の日本人のままでは民主主義は無理な気がするな。主権者として意思表示できる韓国人を私は偉いと思います。

梅村 トランプ氏が大統領に選ばれたというのも、色々な見方はあるんでしょうが、ある意味アメリカの民主主義の底力を見せられた気がしますね。

小松 ところで、患者の自律が対談のテーマだそうですが、それ、とても難しいと思ってるんですよ。というのは、医者自体が自律してませんから。

梅村 そうですね。

小松 医者も、自分たちが信じていることが正しいかどうかを深くは知らないんですね。ちゃんと勉強している人はそんなに多くないし、勉強しようと思ったら、ものすごい範囲が広くなり過ぎて。それとやっぱり、常に正しいと思っていることを言う医者の方が限られていて、どちらかと言うと自分の利益で意見を決める人の方がはるかに多いですよ。

梅村 妙に実感がこもっているような気もしますが、先生も大変だったらしいですね。今は何をしてらっしゃるのですか?

小松 無職です。

梅村 そうなんですか。亀田総合病院事件と呼ぶのでしょうか、簡単にいきさつを説明していただけないでしょうか。

小松 長いですよ(略)。私自身は民主主義のためだと思ってますけれど、雇用者に対して被雇用者の私が文句を言うことについて、昔学生運動のシンパだった友人が、お前は原理主義だって言うんですよね。いい男ですが、今、経営者なんです。日本の伝統からは、私は道を外した人間。お上がひどいことをやっているかどうか関係ありません。江戸時代以来、日本では権力に盾突くのは悪いことなんです。いろんな人から、私の書くような文章だと、昔なら殺されていると言われてきました。十数年前、ある元裁判官に、行政に狙われるかもしれないと心配されたことがありました。杞憂ではなかったということです。

梅村 学生運動やってた方に、言われるわけですか。

小松 そうです。学生の頃も実は思ってたんですけど、セクトの連中と議論したことが1回だけあるんですが、それまでになかったような議論をすると意見を言わないんですよ。で、皆で相談してから徒党を組んで主張しだすんですよ。

梅村 なるほど、不安なんでしょうね。

小松 学生運動をやっている連中をあんまり好きじゃなかったのは、そこのところなんです。

梅村 学生運動をやってはった人が、一番権威主義になりますよね。あれ不思議ですよね。そういうことはいかんというのが学生運動だったと思うんですけど、自己矛盾にはならないんですかねえ。

小松 考えるのに突き詰め方が足りなかったということなんだと思います。通用力のある所までいってなかったってことです。

梅村 人間の思想と言ってたのは、実は卵の殻くらい薄いものだったのかもしれませんね。

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