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Vol.051 今の日本人のままで民主主義を守れるのか 梅村聡のあの人に会いたい~小松秀樹・前亀田総合病院副院長(上)

医療ガバナンス学会 (2017年3月7日 06:00)


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※この対談記事は、『ロハス・メディカル』2017年3月号に掲載されたものです。

ロハス・メディカル編集発行人
川口恭

2017年3月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

患者の自律をサポートするには何が必要なのか、元参院議員・元厚生労働大臣政務官の梅村聡医師が、気になる人々を訪ねます。

梅村 小松先生世代とかお立場の方が、MRICとかネットにしょっちゅう、熱心に記事を書いてるというのは、先生以外で見たことないですね。

小松 皆、怖がってますよ。

梅村 怖いんですか。

小松 私の今の状況を見たら、おとなしくしておこうと思いますよ。

梅村 僕も立場上、色々な医療関係者とお付き合いがあるんですけど、僕の目の前で飯を食いながら言っている言葉と、実際に壇上に立った時の言葉が全然違う方おられますよ。なんでかな、と思ってましたけど、あれは役所が怖いんですね。

小松 個別指導で自殺した人、いっぱいいますよね。

梅村 そうそう。僕も一昨年から新しい診療所をやってて、昨年の5月に、半年目の全員受ける個別指導があったんです。それで院長が行くって言うから、じゃあ僕も理事長だからということで付いて行って。僕も院長の後ろで座ってたんです。内容的にははっきり言って、あんまり意味のない指導だと感じましたが、でもあの環境でネチネチやられたら精神的にはかなり参ってしまうかもしれませんね。。

小松 後ろ盾のない人は無茶苦茶やられるんです。

梅村 そうらしいです。帰ってきて色々な先生に、個別指導って色々なことがあるんだと思うけれど、あれがなぜ怖いんですか、と言ったら、それは違うんだ、と。あれにどんだけ皆ビビってるか、と言うんです。だからこの国は、南町奉行所と余り変わらないんやな、と。

小松 (医系技官は)法律を知らないから、無茶苦茶を言って追い詰める。だけどそれに逆らえないようになってるんです。ずるくて、自分の責任にならないように、診療報酬の自主返還を求めます。いくらとは言わない。追い詰められた側はどうしたらいいのか分からない。文句を言われたままに返還すると即倒産です。日本医師会だって、抑えつけられています。事務局長は元医系技官で、意思決定に関わる理事です。病院の団体なんかにも全部天下りしています。医師の側が全然自立できていない。そもそも、医師会っていうのは何のためにあるかっていうと自律のための団体ですよね。世界医師会がなぜ出来たかというと、あれはナチの反省ですよ。

梅村 要するに権力者が医療を支配して人体実験を含めてやったわけですよね。そういうことがないように、プロフェッショナル集団としては、自分たちが権力に不当に介入されないような自律組織を作ろう、と。

小松 そうそう。ドイツの医師会なんか、まとまってると一遍に支配されるからって、州ごとに分かれてるんです。

梅村 日本ではドイツ医師会と違って、権力の不当介入を防ごうじゃないか、やっぱりユーザーのため、地域住民のために、プロとして、そっち側で守ろうじゃないかという組織というのは、あんまりないですよね。で、どちらかというと権力側と仲良くして、でしょう。事故調の話だって、病床規制の話だって、今回の専門医制度だってそうですよね。これどないしたらええと思います?

小松 医系技官は失敗するたびに、強制力を強めようとする。無理に無理を重ねてます。このままだと、どん詰まりまで行っちゃうんじゃないですか。水面下で、亀田言論弾圧事件のようなひどい事件が他でも起きてると思いますよ。紛争はこれから頻発するでしょうね。解決は、行き着く所まで行ってからですね。

梅村 でも、医系技官制度を、皆ありがたがってるでしょう。

小松 誰が?

梅村 医療関係団体とか。なぜありがたがってるか、分かりますか。

小松 既得権を守ってくれるからでしょう。

梅村 それもあるかもしれませんが、役所を攻める側からすれば、ターゲットがはっきりしているんですよ。要するに、そこだけ陳情しといたら、とりあえずは何とかなるじゃないですか。いわゆるキャリアみたいに、医政局だ社会・援護局だと行ったり来たりしたら、ターゲットが分散するからやりにくいんですよ。だから医系技官制度というのは、役所にものをお願いする立場からすれば、すごく良い制度なんですね。医系技官そのものがどうこうじゃなくて、この人事体系のとこだけ攻めておけばいいということですからね。

小松 少人数に陳情してるから、彼らの権力が強まるんですね。医系技官が問題なのは、個人の裁量権のある権限をすごく望むことです。個人の裁量権が大きいと、専制的になるし、腐敗も起きます。補助金なんかも裁量でやる。客観的な数字でやる方が健全です。予見性を高めて配分される側が補助金を計算できるようにすべきです。補助金を消費税の増収分を使ってやるって、あれ要は、病院からお金を取り上げて苦しくさせておいて、さあ言うことをきけと、つまらん金の使い方をさせるようになるんですよ。

梅村 泳げないようにしておいて浮き輪を投げるみたいなものですね。これ、患者が自律したら、少しは状況が変わるものでしょうか。

小松 自律するには知識が必要ですが、医者がそもそも素人向けに正確な情報を全然出してないし、医者の無責任が大きいですよね。

梅村 先生と意見が少し違うかもしれないんですけど、患者の自律と言う限りは、例えば広告規制なんかはちょっと見直すべきだと思ってるんですよ。今の日本で、まず比較広告はダメだし、医療の内容のことも色々と制限がある、ホームページもそれに従わないといけないという状況ですよね。この状況下で、患者さんに選んでもらうとか行動変容しろという方が無理でしてね。
で、広告規制に関してはものすごく厚生労働省が堅いのですが、状況が昔と違うんですよ。昔は広告と言ったらCMとか駅に張り出す年何百万円、何千万円もするような大きな看板で、そんなもので比較広告とか打たれたら、結局その広告の方に公的医療であるお金が取られちゃうと。それは本来営利じゃない医療機関がやるのはおかしい、という論議で禁止してたんですよ。ところが今ね、ホームページを作るくらいのお金は要りますけれど、誰でもホームページを安く作れるんですよ、前提が全く変わってきてるんで。僕は、医療側からの情報の出し方を、もっと自由にしてもいいんじゃないかと思います。でないと、結局最終的にはそれを逆手にとられたのが、サ高住等で問題になっている営利企業による「患者紹介ビジネス」です。「患者紹介ビジネス」なんて患者の自律の真逆の話ですから。

小松 どう実現するかは難しいところですけれど、やったらいいと思いますよ。問題は、ヒドイのをどうやってチェックするか。

梅村 それは確かに問題ですよね。自由診療の世界ではそういった問題も起きていると聞きます。ただ何しろ今は患者さんが自律しようにも、そのためのツールがないわけですよ。かかりつけ医制度っていうのが始まってますけれど、なかなか住民の方が皆、かかりつけ医制度に乗ってきていないじゃないですか。やっぱりちょっと患者さん側が分かってるんですよ。A先生の所へ行ったら、多分この病院の系列の所にしか紹介してくれない、あの先生は本当は専門が○○なので、自分の場合は△△だから、違う先生のところに行ってみようとか、結構、あうんの呼吸で器用に患者さんも動いているんだと思いますよ。でもすべての患者さんが、すべてのことを体系的に理解できているわけではありませんのでね。なかなか難しいところです。

小松 自分で宣伝するより、あらゆるサービスを熟知した第三者が相談に乗って勧めるのがいいですね。私が言ってた「1ストップ相談」(前回参照)もそういうものです。高齢者になると、医療もそうですけど、医療よりもどちらかと言うと他のサービスの方が重要になりますから。

梅村 介護ではケアマネが担当する建前ですけど、実際にはケアマネは客引きをやってますもんね。1ストップ相談は、生活保護なんかにも当てはまると思うんですけど、そこに行けばあなたとって一番良い医療を相談に乗ってあげますよと、それが広告なのか窓口なのかは分かりませんけれどもね、ホンマはかかりつけ医がそれをすればベストなんですけどね

小松 意思決定支援ですよね。

梅村 そうです。それがやっぱり要ると思いますよね。

小松 月に2回ほど訪問してじっくり話をする、困ったことがあれば必ず相談して解決策を考える。いざというときはすぐ駆けつける。よく出来た息子の役割です。息子より福祉と民間サービスをよく知っている。財産管理などを含めて、東京だと有償でやれると思って画策したんですが、資本を持っている人がチャレンジしようとしませんでした。

梅村 日本のかかりつけ医制度は、残念ながら意思決定支援までを想定していないんだと思います。

小松 意思決定支援みたいなのをやるのにも、規格がすごい重要になるんですよね。サービスの予見性を高める、質を上げる、信頼性を高める、紛争にきちんと対応する、規格は役立ちます。規格は強制力がない分、現場の多様性への対応を邪魔しません。行政はピラミッド支配で、上から単純な内容を繰り返し繰り返し指示して、強制して、あらゆるものを画一化するんですよ。ところが地域包括ケアみたいなのをやろうとすると、個別の情報がすごく重要です。人によって望んでいることが違います。現場のネットワークで対応していくしかないですよ。そのための規格の必要性をすごく言ってたのも、医系技官からしたらカチンと来た理由だったと思います。

梅村 1ストップ相談の仕組み作りや地域包括ケアの規格作りを亀田総合病院でやろうとしたんですか?

小松 亀田総合病院だと、やっぱり個別利害を持っているので、主体にはなれません。地域医療学講座できっかけを作って、それ以後はソシノフというNPOで発展させようと目論んでいました。公開で議論し世界の誰もが利用できるように、誰でもが入りたいと言ったら拒否できないNPOを作りました。ソシノフはソーシャル・イノベーションの略です。ソシノフはサービス事業の主体ではなく、規格や理念作成の主体です。

梅村 NPOを作ったんですね。そこにも補助金が来ていたわけですか。

小松 1円も金は来てません。初動資金は私の寄付です。

梅村 来てなかったんですか。そこの運営費というのは、おっしゃってた安房10万人計画の寄付とか亀田総合病院からの寄付で賄うということですか。

小松 というのを予定していたんですけど、会費も(亀田)信介氏が1回払っただけで、他の兄弟2人は事件で一銭も払わないまま辞めてしまいました。

梅村 そうなんですか。

小松 要するに、医系技官の支配から逃れられなかったんです。それと、私益と公益がごっちゃになって区別できていなかった。区別を迫られて躊躇なく私益を取ったということですね。じつは、NPOで構想した枠組みでサッカーチームの寄付を集められないか打診されてびっくりしたことがあります。チームは株式会社で、亀田さんたちが株主だったんです。一般に呼び掛けて集めた寄付を私企業に渡すなどあり得ません。ただ同情すべきは、病院が財務的にひどく苦しいこと。貧すれば鈍するですね。

梅村 東千葉メディカルセンターで二次医療圏の組み換えがあったという話があったじゃないですか。あの二次医療圏って、人口が40万人とか50万人くらいで一つでしょう。これくらいの大きさが、行政にとって一番支配しやすいわけですよ。ちょうど自治体も1個か2個くらいだし。自治体単位でも支配しやすいし、医療機関に対するプレッシャーもかけやすいわけですよ。
だから、簡単に言えば、今の日本の医療の規制というのは統治する側からの論理で作られているわけですね。ところが実際には患者さんは、肺がんやったらあそこがいいよと聞いたら、電車に1時間、2時間乗ってでもそこに入院しに行くわけです。ということは、行動に関しては支配の枠を超えちゃってるわけですよ。昭和40年代くらいだったらね、その支配って結構当たってたと思うんですよ。住んでいる身の周りの地域コミュニティの中で情報を得て動いていた。だからその支配が成り立ってきた。でもネット社会でしょう。
そうすると隣の都道府県の医療機関の情報だって同じように入ってくるわけですよ。今までだったら自分の医療圏の話は、どこどこのお爺ちゃんもあそこで手術した、と。どこどこのお婆ちゃんもあそこへ行って親切にしてもらったと、そういう情報で行動って決まってましたけど、今は地球の裏側の情報も隣の家の情報も同じ濃度で入ってくるわけですよね。そういう意味では従来の地域で分けて支配しやすいというものと合わなくなってきているんじゃないですか。

小松 だけど、今も無茶苦茶支配したがってますね。地域医療構想って、高度急性期、急性期、回復期、慢性期医療の必要病床数を計算して、それで医療構想圏ごとに各医療機関の配分を決めるんですよ。これは、医療費を抑制するのが目的です。団塊の世代が後期高齢者になる2025年までに完成させる。後期高齢者医療制度に金がかかりすぎて財政的に維持できなくなっているからです。関東なんかに比べて西日本で医療費をたくさん使っているんですが、それも是正しようとしています。大量の病床を削減することになる。会議で配分を決めて。それにハンコつかせて、無理やり押し付けるんですよね。それで、こうやれというのに従わないと、院長が首を切られるんですよ。そういうのが、もう決まってるんです。

梅村 お寿司屋にたとえると、この地域はマグロのトロを他の地域の3倍くらい食べるらしい。アナゴはトロと同じくらい売れるらしい。そんなら、アナゴのお寿司屋さんと、トロのお寿司屋さんの店を同じ数にしようか、と。またはトロのお寿司屋さんとアナゴのお寿司屋さんの数を3分の1に減らそうかとか。トロとアナゴと両方食べたい人はどうするんですかとなったら、「それはトロのお寿司屋さんとアナゴのお寿司屋さんが連携して、トロを食べた後にすぐアナゴ屋さんに行けるように、その間に連絡バスを走らせたらいい」、と。地域医療構想ってこういうものですよ。イカはどうなの? と言ったら、この地域の人は思った以上に結構イカ食べんねん、と。だからイカ専門のお寿司屋さんを作りましょうか。だけどイカばかりじゃないでしょう、イカ食べた後にマグロを食べに行けるように連携しようとか(笑)。考えたら結構難しい作業ですよ。

小松 地域として他よりたくさんトロを食べるのは許されません。地域のマグロ、アナゴの売れ行きを全国統一基準で推計して、地域の供給量を決めます。リハビリ病院なんかだとアナゴ屋さんみたいな専門店ですが、普通の病院だと、あなたの所は、マグロこれだけ、アナゴこれだけと、1日の配分量を決めると。しかも全体として配分量を下げる。戦時中の食糧配給ですよ。いやウチはマグロに力を入れたいから、もっとマグロをちょうだいよと言っても、みんなで会議して一堂に何個何個というのを押し付けているという感じじゃないですか。

梅村 で、それだけのマグロしか渡さないというね。そうじゃなくて、おいしい店には皆集まるし、マズイ店は潰れるわけですよね。だから、患者さんの行動変容によって医療機関の生死も決まってくるので、そこを生かせるような仕組みにすることが、結果として良い医療機関が残っていくことだと思うんですよ。

小松 厚労省は、医療の良し悪しどころではない。後期高齢者医療にとてつもなく金がかかって、医療制度というか、日本の財政がもたなくなっているんです。医療費を削減するんだったら、混合診療にするとか、保険診療でカバーしない部分を作るとか、地域によって診療報酬を変えるとか、やり方はいくらでもあります。年間3000万円もする抗がん剤まで保険診療でみていると破綻するのは当たり前だし、鼻風邪を保険診療でみる必要はありません。厚労省というか医系技官は、あらゆるものを保険診療に組み入れて統制したがります。計画経済なんですよ。計画経済だと中央が権力を持つようになります。マグロが儲かるとなれば裏で金を出す所が出てくる。真面目なところが痩せていく。計画経済って、専制になり腐敗するんですよ、最終的にシステム全体が腐ってサービスの質と量が下がる。

梅村 そうですよね。先生が主張されている意味がよく分かりました。注目していますので、これからもお体にお気をつけてご活躍ください。

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