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Vol.052_県を批判したら経営者に向かった補助金での脅し 梅村聡のあの人に会いたい~小松秀樹・前亀田総合病院副院長(中)

医療ガバナンス学会 (2017年3月8日 06:00)


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※この対談記事は、『ロハス・メディカル』2017年2月号に掲載されたものです。

ロハス・メディカル編集発行人
川口恭

2017年3月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

患者の自律をサポートするには何が必要なのか、元参院議員・元厚生労働大臣政務官の梅村聡医師が、気になる人々を訪ねます。

梅村 ところで先生が亀田へ行かれたのはいつでしたか。

小松 2010年です。

梅村 最初は三顧の礼で迎えられたわけですよね。亀田としても、先生を受け入れることで、言論を通じた軋轢はあり得るだろうという前提で雇ったんじゃないんですか。

小松 そう思いますよ。私は言論活動をずっとやっていて、私の言論活動に経営陣は賛成していたんです。つまり、亀田は誇り高き自立した医療機関だというイメージで売ってたわけで、私が行政を批判する文章を書くのに、彼らは賛成だったんですよ。

梅村 副院長としての仕事のメインが言論活動だったということですか。

小松 他にも色々やりましたよ。まず行ってみて分かったのが、あの辺りの人口が毎年1%ずつ下がってくるんです。3市1町(鴨川市、館山市、南房総市、鋸南町)のうちの2つが20年ぐらいの間に限界自治体になってしまう、と予想されてたんです。亀田も手術は伸びてたんですけど、シミュレーションしてみると当然ですが外来は減る。減り始めると急激に減る。
それで、大変だ、この流れを食い止めないといけない、千葉県でも東京に近い松戸や柏、市川なんかは、今後、高齢者が倍増するので患者が増えます。本拠地を移すのがベストだと勧めたんですが、資金がなかったようです。どうしようか、とにかく大きなことを打ち出そう、ということで2012年3月に安房10万人計画というのを打ち上げました。実際には、人口の減少を食い止めるのは難しいと思ってました。

梅村 それで何をやったんですか。

小松 まず無料低額診療です。館山で大きな工場が2つ潰れて、ちゃんとした職がすごく少なくなってたんです。で、国保の被保険者の30%ちょっとが滞納しているという状況でした。そういう人たちにも医療を提供しようということですね。それから寄付制度に、ふるさと納税を介して税金を減らそうという話、それを制度としてこちらから提案して作ってもらいました。それから館山に安房医療福祉専門学校というのを作りました。

梅村 医療福祉の専門学校ですか。

小松 現時点では看護学校ですね。館山の方の病院が看護師さん不足で赤字で倒れそうになったんです。亀田を辞める人も大勢いるんで、その人が館山の病院に行ってくれるなら亀田の方の退職金をそのまま引き継げるとアイデアを出してやってたんですけれど、全然足りないというので、学校を作ることにしたんです。千葉県はそもそも看護師の数が、日本で下から2番目なんですよ、医師も下から3番目ですけど。田舎の限界自治体になりそうな所に都市部の看護師が来ることはあり得ないですよね。それで作ったんですよ、小さいんですけど。

梅村 生徒は集まるものですか。

小松 工場の職を失った地元の人に、ちゃんとした職を提供しようというのもあって、社会人が入れるような学校にしました。潰れた工場の独身寮を学校の学生寮に改修して、その1階には高齢者向け住宅を作りました。看護学生と交流するように庭も作ってですね。

梅村 いい感じですね、それ。

小松 ここから先は実験なんですけど、ソーシャルワーカーが相談を受けて、あらゆるサービスにつなぐ「1ストップ相談」という構想も進めてました。これはですね、場所によっては地域包括ケアを在宅医療の医者が中心になってやるというアイデアでやっている所も多いんですけど、医者はそんなにサービスを知らないですよね。そもそも在宅とか地域包括ケアの所って、医療よりは生活支援がメインなんですよ。介護だって医者なんかほとんど知らないですよ。偉そうにしているだけで全然役に立たない。だから、ありとあらゆるサービスに詳しい人がいて、サービスの提供者につなぐ、そういう独立した存在が絶対に必要になるだろうというので、それの実験をやろうとしたんです。

梅村 困ったと言いに行ったら、その人が色々マネジメントして、この福祉使ったらどうやとか、この施設使ったらどうやとか、いうあれですわね。ホンマは行政がそれやらないかんのですがね。

小松 1ストップ相談で一番やりたかったのは財産管理です。それを含めて、高齢者の意思決定を支援するということですね。

梅原 後見人ですね、要するに。

小松 そうです。親戚が成年後見人を弁護士に頼んだんです。お金の話が主で、身上監護はいまいち。

梅原 たしかに、弁護士さんは身上監護は得意分野じゃない。

小松 そうです。カネの管理をする人、何が必要か指示する人と、監視する人なんか立場を分けてやってお互いにチェックするようにしたら、サービスはよくなるし不祥事は起きないですよ。それと、成年後見は面倒過ぎて動きが悪いので、可能な限り契約にする、全体設計がうまく出来たら、保険会社に入ってもらって、財産を盗られた時に補償できるようにする、そんな相談もしていました。それからあと子ども園、働くお母さんがちゃんと使えるようにしないといけない、延長とか夜間保育とか、それから病児保育、全部やりたい。
それからシングルマザーとかシングルファーザーを、そういう人たちの職場での条件なんかも改善できるような、子育て支援の提供者以外に間に入ってやる、行政との間に入って要求するみたいな団体も作りました。高齢者に移住してきてもらうのに、ペットの飼える高齢者向け住宅というのをやりたかったんですが、なんせ資金がなかった。猫の幸せを考える会というNPOにも相談に行きました。飼い主が亡くなった後のペットの世話をしているんです。ここで猫派と犬派を分離しなさいという貴重な助言をいただきました。安心使い切り保険というのも保険会社に相談に行きました。日本では高齢者が老後のために、金をため続けます。安心してお金を使って、長生きし過ぎたら、保険で老後の世話をしますよという保険です。

梅原 結構なスピードで色々なことをおやりになったんですね、一通り。一通りと言ったら変ですけど。で、何が騒動の発端だったんですか。

小松 亀田に地域医療再生臨時特例交付金というヤツが全然来てなくて、文句を言ってたらしいんですね。で、それが来ることになって、ついては独創的かつ有益なことをやってくれ、と亀田信介院長から頼まれたんです。別に私が手上げしたわけじゃなくて。

梅原 なるほど、地域包括ケアの色々なことをしなさいと。

小松 補助金の趣旨は、医師を集める的なものだったですよ。ただ、そもそも亀田って千葉県の中で唯一豊富な所なんですが、入れ替わりが激しいので宣伝は重要です。魅力的なことをやっているというのをアピールすることが、医者や看護師を集めるのに役立つと考えたわけです。この戦略は、南相馬では大成功しました。あれも私がアイデアを出したんです。

梅原 先生の戦略、国も使えばいいのにね。

小松 それで、集めるための戦略として、『地域包括ケアの課題と未来』という映像シリーズですね、それからそれを書籍にする、それと規格を作ろうと思いました。規格っていうのは地域包括ケアに関する決め事みたいなものです。強制力はなくて、でも認証機関みたいなものを作って、レベルを高めていく。

梅村 ところが補助金がなくなった、と県から言われたという例の話になってくるわけですね。

小松 そうです。出版ができなくなる、目の前が真っ暗になりました。最初は、亀田さん(隆明理事長)も僕と一緒になって怒ってたんですよ。それが5月1日で、5月15日になったら、自分が一対一で話をつけると言い出しまして。話をつけると言ったって、先生はこの事業が何をやってるかも知らないし、国から金が入っていて外部の人がいっぱい入ってる公共的な学術活動ですよって。それを一対一でやられたら困りますよと抵抗したら、県に違法なことをされていると国に言うんだ、と。
ところが、言う相手は、たしかに国から出向の医系技官なんですけど、千葉県の医療整備課長で、補助金がなくなったって言いに来た本人なんですよ。本人に違法行為だと訴えても仕方ないでしょうと諫めて、亀田の弁護士と相談したら、やっぱり言論が一番いいだろうということになりました。この弁護士と相談して千葉県に情報開示請求もしました。金が東千葉メディカルセンター(後述)に流用されているかもしれないと思ったからです。私が文章を書いて千葉県を批判する。それだけして、補助金返上を受け入れないで放っておいたら向こうが折れてくるに違いないと。

梅村 それ、どこに書いたんですか。

小松 MRICです。

梅村 ああ、読みました。MRICって影響力ありますでしょ。5万人くらい読んでるという話ですよね。で、どうなりましたか。

小松 予想通り折れてきました。その時の向こうの話は、録音してます。

梅村 ああ、そうなんですか。やっぱり威圧する感じなんですか。

小松 その時は、「補助率は10分の10でした、お金はそっくり残ってます」と(2014年度予算については、補助率が10分の5だったという理由で減額すると通告されていた)。2015年度予算について、最初の説明は金がなくなったということでしたが、この日は、予算がゼロだという。執行が留保されていたと。この3カ月前に活動について報告し、前年の合意を再確認しているんです。国から来た金で単年度予算ではないんです。3年間の総額が決められている。合理的理由なしに予算をゼロにする権限はありません。自分たちが出したくなかっただけだと思います。

梅村 へぇー、先生が追及しなかったら、その金どうするつもりだったんですかね。

小松 流用するつもりだったんでしょう。亀田が請求しなかったから他に使ったんだよということにしたかったんでしょう。

梅村 でっち上げですね。

小松 それで、翌年度の金については、県議会で決まる必要があるから2月にならないと分からないと言うんです。そもそも、2014年3月10日には、最初の担当者から、3年間の予算の割り振りを伝えられていました。県議会がどうのこうのとは言われていませんでした。そもそも金は国から来ているし、単年度予算ではありません。県議会が絡むにしてもクリティカルではないと理解していました。それが、最終年度の2月まで決まらないと言う。まだ流用をあきらめてないと思ったんです。そんなんだったら事業をできないから、流用をあきらめさせるために、事の経緯を実名入りで書いて、MRICに載せました。そうしたら亀田さんたちから、私の厚労省に対する批判と千葉県に対する批判をやめさせろ、そうしないと補助金を配分しないぞと脅されたと、だからやめてくれと頼まれたんです。

梅村 その脅しっていうのは、千葉県の医系技官から亀田先生の所へ行ったんですか。

小松 いや、厚労省って言ってました。厚労省が皆怒ってるぞ、と。で、それが誰かというのを、亀田の別の幹部が話すのを聞いたという人から私が教えてもらったのはイノウエハジメ課長が圧力をかけてきた、と。厚労省の幹部名簿を確認すると、結核感染症課長が井上肇氏で、私が亀田に行った時、千葉県に部長で出向してきていた医系技官でした。

梅村 私も会ったことがある方です。でも、国が首を突っ込むような話には思えませんね。

小松 私が亀田さんたちに言ったのは、厚労省全部が怒ってるなんてことはあり得ない、厚生の方と労働の方は全く違うし、厚生の方も医療の方と福祉の方は全然違う、福祉六法と医療六法は全然違う。そもそも机に置いてある本からして違う。お互いに敵同士みたいなもので、厚労省全体が怒るなんてことはあり得ない、そんなの個人の話だよ、と。

梅村 それはそうですよね。井上さんは、なんでそんなことをしたんですかね。

小松 井上氏とはいくつか因縁があるんですが、私が言論で行政を批判するのを、とにかく嫌がっていた節があります。

梅村 と言いますと。

小松 最初の接触は、東日本大震災の時です。避難した人たちを大勢鴨川に受け入れたんですけど、受け入れ先に厚労省が1泊3食付きで1人5000円出すと決めた。観光庁が割り振りのやり方を決めました。旅館の組合が受け入れ可能な施設リストをまとめて、観光庁、被災県を通して被災市町村に知らせます。被災県は避難者リストをまとめて観光庁を通じて組合に連絡する。受け入れ県の組合が割り当てる。とにかく煩雑な仕組みでした。

梅村 県で一括してまとめろよ、という話ですよね。

小松 千葉県はそもそも受け入れの手上げをしてなかったらしいんです。その責任者が井上氏でした。で、手上げしてなかったから、地域の介護業者と開業医が集まってる会の人たちが受け入れようとしたら、鴨川市から受け入れることになっていないと言われたというんです。それで私の所に相談に来まして、その話をインフォシークっていうニュースサイトにインタビューを受けて話したら、「被災者の受入れを、行政が邪魔している」っていう見出しで記事になっちゃったんです。そうしたら、「黙れ」と、彼が隆明氏を通じて言ってきたんですよ。自分の責任問題になるのを恐れたんだと思います。

梅村 そんなもんなんですか、役人って。

小松 ビックリしましたよ。

梅村 僕なんかはずっと現職の議員だったから、どこで何を書こうが、何を喋ろうが、彼らは何も言ってこないですよ。民間に対してはそういう風な言い方をするもんなんですか。

小松 もう一つ、彼が私の言論を非常に嫌がってたと思われるのが、東千葉メディカルセンター問題です。

梅村 何です、それ?

小松 東金市に2014年に出来た病院で、3次救急をやるってことになってます。最終的に医者が全部集まっても50何人でちょっと規模が小さ過ぎる上に、医師も足りないけど、看護師がもっと足りなくて、病床を完全には開けてません。で、大赤字になっているんです。国や県が出してくれる分を除いた自治体の純粋な損失分が、毎年、20億円近くあるらしい。2015年度、資金不足になった。そこで銀行から5億円借りました。短期借入は当該年度に返済しないといけないのですが、それができないので、年度越えするために5億円を借り換えしました。
2016年2月の評価委員会で病院の事務部長が2015年度「債務超過になるのは免れない」と話し、別の委員が、2016年度も「大変な赤字、資金ショート、資金不足に陥る可能性があります」と述べていました。その上、千葉県の東京に近い松戸、柏、市川なんかで団塊の世代が一気に高齢化する。県全体で、看護師はますます足りなくなる。看護師確保は難しい。で、自治体は全然お金持ちじゃないから、自治体が潰れるって、住民たちが大騒ぎしています。そもそも千葉市まで高速で20分の場所で、しかも人口が過疎になっていくんだから、3次救急なんて全く需要がないんですよ。

梅村 それと井上さんと、どういう関係があるんですか。

小松 井上さんは、準備段階の一時期責任者だったはずなんです。誰がやったか分かりませんが、そこに金を出すために、ゲリマンダーみたいな南北に細長い2次医療圏を作ったんですよ。成田なんかと一緒になってたはずの山武を、分けて南とつないで細長いのにしたんですよ。その北の端っこに、東千葉メディカルセンターはあります。

梅村 僕ね、その辺の土地勘ってあるんです。僕の5代前の先祖である関寛斎の生まれって東金市なんですよ。なので、えらいアンバランスだなというのは、よく分かります。

小松 2次医療圏の反対側の端っこの夷隅ってのは、鴨川の隣なんです。それで、そこの人たちって、亀田へは来ますけれど、東千葉メディカルセンターへは全く行ってません。救急車だって、そんな所へ搬送しないですよ。でも、夷隅に使われるべきお金も、全部東千葉メディカルセンターへ行っちゃってる。

梅村 で、そういう、まあちょっと無謀なと言うか、後先考えない計画があって看護師が足りずに病床も開けなかった、という風になってるわけですね。

小松 で、それについて病院建設前の2012年頃から、批判してたんです。亀田の経営者も、問題視していました。その頃の話ですが、(亀田総合病院を経営する)鉄蕉会理事会で東千葉メディカルセンター問題が話題になって、理事の一人が住民監査請求だか住民訴訟を行うべきだと主張して、盛り上がったらしいです。亀田さんたちが吹聴してました。

梅村 この問題の批判が、井上さんのカンに触ったわけですか。

小松 もし病院が破綻したら、計画段階で関わった人たちの責任問題になるから、余計なことを書くなということなんじゃないかと解釈しています。

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