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Vol.077 第190回国会(常会)に提出された臨床研究法案第3条に規定する 「臨床研究実施基準」等に関する提言

医療ガバナンス学会 (2017年4月11日 06:00)


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2017年3月22日
(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団
理事長 土井 脩

2017年4月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

はじめに
社会的に大きな問題となった高血圧症治療薬の臨床研究事案について、厚生労働省は平成25年8月に検討会を設置し、平成26年4月には「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)(報告書Aという。)」を発表しました。続いて、同省はこの報告書の提言を受け、「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」を同年4月に設け、同12月には報告書(報告書Bという。) を発表しました。

これらの報告を受けて「臨床研究法案」が実際に国会に提出されたのは平成28年5月となりましたが、同法案では、「特定臨床研究」を医薬品等製造販売業者等から研究資金等の提供を受けて実施する臨床研究 (当該製販業者が製造販売し、若しくはしようとする医薬品等を用いるものに限る。) 又は未承認薬若しくは新用法・用量等 (新効能・効果を含むと考えられる。) の医薬品を用いるものと定義され、特定臨床研究を実施する者は、厚生労働省令で定められる臨床研究実施基準 (法案第3条に規定) に従ってこれを実施しなければならないとしています。また、特定臨床研究以外の臨床研究を実施する者は、臨床研究実施基準に従ってこれを実施するよう努めなければならないとして、努力義務とされています。従って、特定臨床研究の内容について拘束力をもって、またそれ以外の臨床研究を努力義務として規定するのは、「臨床研究実施基準」であるということができます。

また、臨床研究において実施される臨床試験は、被験者の協力のもとに行われるものであり、少なくとも、特定臨床研究により得られた成果は単に論文等にするだけではなく、医薬品の開発や承認申請等に利用され、患者のために活かされることが期待されます。

Ⅰ.求められる臨床研究実施基準の水準
報告書Aの第三、3.「対応が必要な事実関係と再発防止策」では、(1)信頼回復のための法制度の必要性 として、「薬物を用いる臨床研究の実施に当たりICH-GCPの遵守を求めること」や「臨床研究全般を対象とする新たな法律を作り臨床研究の実施機関や研究者等に対する法的拘束力を確保すること」が謳われており、報告書B第四、3.(3)においても「実施基準は・・・ICH-GCP等を踏まえて定め」とされています。従って、
提言1
臨床試験実施基準の内容は、国際的に整合化された「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(いわゆるICH-GCP)を満たす必要があります。報告書でも指摘しているように、欧米では未承認の医薬品等を用いた臨床研究は治験であるか否かを問わず、ICH-GCPの遵守を求めています。国際的にみても、特定臨床研究について、ICH-GCPの遵守を義務とすることは当然ということができます。

ICH-GCPはその冒頭に、「ヒトである被験者が参加する試験のデザイン、実施、記録及び報告の国際的な倫理的、科学的な品質標準」とあり、「試験の被験者の権利、安全及び福祉が保護され、臨床試験データが信頼性を有することを公衆に対して保証する」と記されています。

また、我が国におけるICH-GCPの規制への取り込みにおいては、規制当局に提出する目的で臨床試験データを得る際(治験)に従うべきものとされていますが、ヒト被験者の安全や福祉に影響する可能性のある他の臨床研究にも適用され得るものとされています。

Ⅱ.基準に従って行われる臨床研究成果の活用
しかし、報告書Bでは第四、3.(3)において、「・・・モニタリング・監査の方法として、製薬企業等が、新有効成分の治験において行うモニタリング等の手法をそのまま踏襲する必要はない。」とされています。ここで大きな問題となるのは、先に述べたように、実施基準の内容・水準によっては、その実施基準に従って作成された特定臨床研究の成果が、単に論文作成等のためにしか使えなくなる可能性があることです。

報告書B第四、1.においては「・・・我が国においても、5年後・10年後の将来を見越した上で、国際水準の臨床研究が実施できるような制度づくりが必要である。」とあります。国際水準のICH-GCPに従って作成された臨床研究のデータは、欧米先進国においては、薬事規制における治験(医師主導治験を含む)データと同様に、薬事規制において受理され、審査の対象となっています。従って、
提言2
臨床試験実施基準の内容・水準は、薬事規制において活用できるものでなければなりません。わが国の臨床研究の資源を有効に活かすためにも、薬事規制において特定臨床研究の成果を利用できる路を開くことが強く望まれます。

Ⅲ.臨床研究法におけるPMDAの一層の活用の必要性
一方、臨床研究法案第16条においては第1項において、「厚生労働大臣は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)(PMDA)に第15条第3項に規定する情報の整理を行わせることができる」とあります。この情報は第14条に基づく報告、「特定臨床研究の実施に起因するものと疑われる疾病等の発生に関する事項で厚生労働省令で定めるもの」です。その他第16条においては、「機構の求めに応じ、第14条の規定による報告に係る特定臨床研究の内容等を提供することができる」、「機構に情報の整理を行わせるときは、厚生労働大臣は第14条に規定する報告者に機構に報告させる」とあり、第16条第6項においては、情報の整理だけではなく、第15条第3項に規定する調査(必要があると認めるときに、厚生労働大臣が行うもの)についても、同様の規定が適用されるとされています。

また、第38条では「法律に規定するもののほか、この法律の実施のために必要な手続その他の事項は、厚生労働省令で定める」とされています。
従って、
提言3
現法案では、臨床研究法案に規定する業務の極く一部が、PMDAで実施することとされていますが、医薬品医療機器等法に規定されている新薬等の承認審査、安全対策及び治験届の受理、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 (いわゆる J-GCP) に基づく調査等について豊富な経験とノウハウを有するPMDAをより活用するよう、厚生労働省令等で規定すべきと考えます。

そのためには、法案附則第6条では、機構法の改正として、その業務の範囲に「臨床研究法第16条第1項の規定による情報の整理及び調査」及び「その業務に附帯する業務」を加える規定がありますが、機構の業務の範囲を拡大する必要があります。

以上の3つの提言の内容は、わが国の決して国際的には潤沢といえない研究開発資源を、医薬品を待つ多くの患者さんのためにも、医薬品の承認申請等に効率的に活用するために欠くことのできないものであると考えます。今後の臨床研究法案の審議及び運用の検討等において、これらの提言の内容を積極的に取り入れることが強く望まれます。
臨床研究法案提言_投げ込み文書_MAR062017

http://expres.umin.jp/mric/mric_077.pdf

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