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臨時 vol 381 「診療配分の見直し」について

医療ガバナンス学会 (2009年12月3日 08:00)


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東京 おその整形外科 於曽能正博

2009年12月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp


最近「診療報酬の配分を見直し、開業医の報酬を勤務医と公平になるようにする。」という議論が行われています。

一見ごもっともなご意見に思えますが、多くの問題があります。

1)勤務医の低賃金について
●開業医の収入が高いのではなく、勤務医が法律違反の異常な労働環境の下での低賃金を強いられているのです。
まず勤務医に法律に則った適切な給料を支給してから、開業医との差額を論じていただきたいと思います。
以下の事項が実行されれば、開業医の収入を上回る勤務医が続出します。
また科によって診療報酬を変えなくても、忙しい科・忙しくない科それなりの収入となります。

●「宿直名義での夜間救急対応」
「宿直」とは「常態としてほとんど労働をする必要のない勤務」であり、具体的には「定時の回診、緊急時の文書や電話でのやり取り、非常事態に備えての待機」に限られています。「宿直」時に夜間救急対応をする事は許されず、深夜割り増しを含む時間外勤務手当てが支給されねばなりません。

●「名ばかり管理職」
病院の部長は「管理職」として残業手当が支払われない事が多いようです。
しかし「管理職」とは「経営者と一体的な立場」「出退勤の自由」「地位にふさわしい待遇」を有する者の事で、極めて限定されています。部下より給料の低い「管理職」は認められません。

●「年棒制」でも残業が付きます。
年棒額を決める際、何時間分の残業代を含むかを書面で明確に決めておく必要があります。

●「自宅オンコール」
休日に入院患者さんの急変や救急患者さんの入院・手術に備えて、自宅で待機している状態を言います。休日でありながら自宅から外に出られず、酒も飲めません。
またいつ連絡があるか分からず夜も熟睡できません。このオンコールも医師同士の自主的な取り決めでなく、病院の指揮命令下にあれば休日勤務に当たります。

●「サービス残業」が強制されてはなりません。
医師といっても働く者としての立場は弱く、残業を申告できない事がよくあります。

2)開業医と勤務医の相違点
●通常、10年以上勤務医を経験してから開業します。一般の会社でも卒業したての新人を含めた給料平均と、ベテランばかりの社員の給料平均が違うのは当然です。
また、開業医も小なりとは言え、経営者です。収入を比較するなら、病院経営者と比べるべきです。

●「医療経済実態調査報告による収支差額」=「医師の給与」ではありません。
これはあくまでも事業所の所得であり、ここから診療所の開設・運転のための借入金の元本返済や設備投資などを差し引いたものが退職金相当額を含む院長の収入となります。
勤務医と個人開業医の「手取り年収」による比較では、勤務医師が804.3万円、個人開業医が1066.7万円で極端な差はありません。
(手取り年収 http://www.jmari.med.or.jp/research/summ_wr.php?no=367)
また6月単月を取り出し、それを単純に12倍して年収とするのは実状に合いません。
整形外科や皮膚科は6月が最も収入の増える時期です。たとえば、2009 年の6 月の値をもとに整形外科の年間の平均値を推定しその12 倍を求めると3,600 万円となります。
一方、1 月のデータから年間の収支差益を推計すると2,350 万円となり、財務省データの平均収支差額2,500 万円をも下回ります。このように医療経済実態調査の数値は条件を少し変えるだけで大きく変動するため、診療報酬改定時の参考資料には使うこと は出来ません。

http://www.orth.or.jp/aomori/osirase/2009/1126.pdf

●開業医にはボーナスも退職金もありません。病気・ケガで診療を休めば直ちに収入の道が閉ざされるだけでなく、職員の給与や家賃を払っていかねばなりません。

●開業医はよく「診療標榜時間」しか働いていないと誤解されます。これ以外の時間に往診・校医・産業医としての仕事をこなし、夜間・休日診療所へも出動しています。
また、経営者として金策に走り(昔と違い金融機関は医療機関になかな融資をしてくれません)、職員の不満・悩みを聞くなど多忙な日々を送っています。

●「物価が下がっているから、診療報酬を下げる」と言う議論があるようですが、診療所に勤める職員の給与や家賃は下がっていないのになぜこんな議論が提起されるのでしょう。
「診療報酬=医師の収入」との誤解からでしょうか。診療報酬とは医業を運営していく全ての費用の原資のことです。

3)整形外科の特殊性
●整形外科はリハビリを行うために、広い診療所面積と大勢の職員が必要です。
診療単価も低く、粗収入は多いのですが手取り収入はかなり低いのです。

●私の知り合いのT医師(整形外科55歳)は、2億2千万円の収入(開業整形外科としては異例の高収入です)ながら、経費が2億1千万円かかるため所得は退職引当金を含み税込み1千万円です。84坪のフロアを借り職員18人を雇い、平日は20時終了後22時まで、土曜は14時終了後20時まで往診を行っています。過労死の認定基準である、「2~6ヶ月にわたって1ヶ月あたりおおむね80時間を越える時間外労働」をクリアしながら働いています。

●来年の点数改定によっては、全国の整形外科診療所から数万人規模でリハビリ担当者が解雇されるだろうと予想されています。彼は皆、人のために尽くす事が好きな好青年ばかりです。

4)最も大切な事は、医療費そのものを増額する事です。
外国でケガや病気をして治療を受けたら、大変なお金がかかることを皆さんご存知のはずです。「外国の医療費は高い」なら「日本の医療費は安い」わけです。それなのに、さらに「医療費を下げる」というのはどういう発想なのでしょうか。診療所を潰したら病院に患者さんが押し寄せ、さらに勤務医が疲弊し医療崩壊が進みます。

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