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Vol.136 ニュージーランドにおける、脚こぎ車椅子の反響

医療ガバナンス学会 (2017年6月28日 06:00)


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杉田貴子

2017年6月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●第1号機購入

以前、みなさんに募金を協力いただき、ニュージーランドに脚こぎ車椅子を紹介するためのサンプル購入を果たしました。ありがとうございます。その後の状況を報告します。

4月、5月は、できるだけたくさんの方に目にしてもらおうと、人の集まる場所(公園、駅など)に脚こぎ車椅子で出かけ、啓蒙活動に力を入れました。その中で、一人の女性の方が強く興味を持ってくださり、ついに購入に至りました。

試乗のあと、すぐに購入を決断してくださいました。それだけではなく、脚こぎ車椅子の普及につながるならと、写真やビデオなど、多くの資料を提供くださり、また、ソーシャルメディアでの拡散にもご協力いただき、それまでとは桁違いの人々に脚こぎ車椅子が知れ渡ることとなりした。
●一ヶ月連続試乗

次のフェーズとして、興味のある方に一ヶ月間継続して使用いただき、その様子を見たいと考え、一ヶ月無料体験を企画しました。ソーシャルメディアでの反響の成果か、複数の方から立候補をいただき、そのなかの一人に先週水曜日から体験していただいています。

今回、一ヶ月体験に協力いただいているのは、脳性麻痺で脚が不自由な10歳男児です。手の動きはほぼ健常、通常の会話も支障なく行えます。脚に関しては、トレッドミル上で10分以上歩行ができる(手で体を支えた状態で)機能がありました。

しかし、2ヶ月前に恒例のBotox注射を受けた後、かかとの成長痛をうったえるようになり、そのため歩行の練習もできず、脚力が衰えてきました。今までは自力でできていたトイレ使用も、脚力の低下により介護が必要になってきました。心配した両親が、ソーシャルメディア上で脚こぎ車椅子を発見し、連絡をくださいました。

試乗4日目にして、驚くような内容のメッセージが、母親から届きました。
「ベン(10歳児)が、トレッドミルで6分も歩きました。3年前には12分くらい歩いてたのですが、最近では立つこともままならなかったんです。これにはフィジオ(理学療法士)も驚いていました」。

彼の脚が、急に強くなったとは考えません。それよりも、脚こぎ車椅子がこげることで自信がつき、もっとこぎたい、と自分に鞭打ってトレーニングする覚悟ができたのではないか、と考えています。

というのも、1日目の試乗のあと、一週間後に(1ヶ月体験のために)脚こぎ車椅子を再び届けた時のことです。普段は抱きかかえて車椅子からの移動させてくれる両親が不在でした。彼は、一刻も早く脚こぎ車椅子に乗りたいばかりに、手すりで掴まり立ちをして、乗っていた車椅子から脚こぎ車椅子への移動を果たしたのです。彼の両親から聞いていた状況とはかなり違い、非常に驚かされました。
●脳性麻痺と成長期、そして脚こぎ車椅子

今回感じたのは、脳性麻痺の子どもをもつ両親に共通した悩みです。成長期に入るにつれ、さまざまな点から問題が生じてきます。
1)成長が著しくなる。今までは体が小さく介護も容易だったが、この先どうなるのか?
2)成長痛を訴えるようになる。体を動かすことをいやがり、筋肉がどんどん弱まるのではないか?
3)思春期を間近に、簡単に指示を受け入れなくなる。リハビリにおいても、今までの手法ではアテンションを引けない。
このような時期が10歳前後から始まり16歳前後まで続きます。せっかく今まではうまくいっていても、この時期に運動を続けられなかったために、体の機能が制限されてしまったケースも多いのではないでしょうか。

今回の10歳児の場合、脚こぎ車椅子がきっかけとなり、2)と3)の部分が4日間にして克服されました。実際の筋力やコントロール力は、これからの継続的リハビリテーションに関わるとはいえ、大きな第一歩だととらえます。

さらに、この母親からはこのようなメッセージもありました。
「起床時に筋肉痛があると喜ぶんです。脚が強くなっている証拠だと理解したようです」。

痛ければやみくもに嫌がっていた小児期から、痛みを受け入れて強くなろうとするステージへ。一人の男児の成長にこのように関われることを、非常に喜ばしく思います。
ニュージーランドへの脚こぎ車椅子導入活動の様子は、英文ブログにて随時発信しております。ご一読ください。

https://kokocogy.wixsite.com/cogywewantyouinnz/blog

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