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Vol.205 スポーツ貧血・貧血への対策」に関する学生の現状と意識改革について

医療ガバナンス学会 (2017年10月5日 06:00)


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高瀬武志

2017年10月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

筆者が勤務する桐蔭横浜大学(以下、本学)では、スポーツ強化クラブを主にサポートするスポーツサポートセンターという組織がある。この組織には、スポーツに関わる各分野の専門家が所属し、スポーツ強化クラブの学生やスポーツサポートセンターの学生スタッフに対して講義やサポートを行っている。

剣道部は2017年7月にスポーツサポートセンターの教員スタッフであり、桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部教授でもある片山富美代教授を講師として招聘し、「スポーツ貧血・貧血への対策」という内容で講義を開催した。本講義の狙いは、夏合宿を目前に控えた学生たちに「スポーツ貧血・貧血」に関する知識を深めてもらうと同時にその対策をしっかりと講じ、夏合宿を有意義なものにしてほしいと考えたためである。また、本学の剣道部員はスポーツ健康政策学部と法学部の学生で構成されており、法学部の学生のほうが多数であるため、なかなかスポーツに関する講義も少なく、知識が乏しいのではないかと予想されたためである。

講義は、非常に和やかな雰囲気の中ですすみ、学生たちも片山教授の示すデータや資料を真剣な眼差しで食い入るように見ていたのが強く印象に残っている。本学剣道部員は高校生時代に全国大会で活躍した選手から大学入学をきっかけに剣道を始めた学生まで選手層は幅広い。このような部員たちでも、剣道のように裸足で踏み込む操作によって体内で赤血球が破壊されてしまうことを知識として持っている学生は少なかった。また、貧血を防ぐ方法として、レバーを食べる程度の知識しか持ち合わせていなかったことには、監督としてだけでなく、一スポーツ選手として驚かされた。それだけ、学生たち特にスポーツを専門としていない学生たちにとっては、貧血やスポーツ貧血というものを身近なことと捉えていないことが明白になった。

講義後に、学生たちに行ったアンケートの結果をみてみると、女子部員は生理等の影響もあり、貧血に関する知識や自分なりの対処法などは理解し実践している者が多く見受けられた。しかし、男子部員になると知識量も少なく、どこか他人事のように感じている者も少なくないのが現状である。講義の中で、具体的にどのような食事を心掛けると良いかというモデルケースや貧血にならないための対策、貧血からの回復方法など具体的な対策についてなどは、学生たちの興味を惹いていたようである。今回の「スポーツ貧血・貧血への対策」という講義は開催して非常に良かったと感じている。

しかし、一回の講義で学生たちが「貧血対策」を完璧に実行できるとは考えにくい。また、スポーツを専門的に研究・学習している学生に比べ、法学部の学生のように、いわゆる一般学生に関していえば、なかなか「スポーツ貧血・貧血」という問題を身近なものとして捉え、対策を講じていくことは困難な部分もあるように感じている。よって、今回の講義のように一般的な知識の確認と具体的な対策にまで踏み込んだ内容の講義なり実践的な体験学習の頻度を増やして開催していく必要があると強く感じている。学生たちのアンケートにも具体的な対策を食事方法や生活面など多角度的に学びたいという意見が多かった。

スポーツの場面やクラブ活動等の将来性豊かな学生を預かり育成していかなければならない立場にある監督ができることは何かと考えたときに、専門家を招聘しての講義や勉強会を開催することも一つの方法であると考えると同時に、病院等で採血をして自分の体内や血中で起きている変化等を数値として把握しておくことも「スポーツ貧血・貧血」への対策として大切なことであると考える。筆者は剣道界に長く身をおいており、選手としても第一線の舞台で競技してきた経験を有するが、恥ずかしいことに、特別に「スポーツ貧血・貧血」に関する対応や対策を講じた覚えがない。

現在、指導現場にたつ中で、スポーツ界はもとより剣道界においても「スポーツ貧血・貧血」や「熱中症」などへの関心や問題提起されることが多くなってきている。また、そのような機運が醸成されてきているようにも感じる。このような機運に乗じて、スポーツにおける指導現場にたつ者はもとより、指導者だけでなく選手である学生たちも学ぶ学部に関係なく、自身の専門とする種目とそこに関係する医学的知識の基礎的な部分だけでも学び、実践していけるようになることが求められていると考える。

学生たちに講義後に行ったアンケートにも、このような講義や勉強会等をこれからも継続的に開催してほしいという意見や今回の講義を機に一人暮らしをしている学生が食事の見直しをしたいといった意識改革にも役立っていることが読み取れた。剣道に限らず、自分の身体を知ることは、人生を豊かなものにすることにも通じており、学生たちの吸収力は非常に高いものがある。「鉄は熱いうちに打て」ではないが、学生という多感な時期に専門的な技術のみの習得に明け暮れるのではなく、医学的知識の基礎の部分だけでも学ぶ価値は大いにあると考えられる。

スポーツサポートセンターの協力を得て開催した講義から学生たちの現状と意識の変化をみることができた。これからも継続して開催し学生たちの意識改革に少しでも役立てられればと考える。

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