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臨時 vol 413 「リセット禁煙のすすめ(11)」

医療ガバナンス学会 (2009年12月26日 09:00)


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「新春-1」& 研究か社会実験か

トヨタ記念病院禁煙外来 磯村毅
リセット禁煙研究会代表  予防医学で医療崩壊を緩和する会発起人

2009年12月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行


今回はヒトがニコチン依存という悪循環からいかに脱出するか、について考え
てみたいと思います。

ネズミの脳に細い管をいれ、レバーを押すとコカインが出る仕掛けにしておく
と、そのうちにネズミは自分から進んでレバーを押すようになります。薬物依存
のモデルです。

ところで、ネズミは禁煙をするでしょうか。多くの読者は思わずこの質問に苦
笑をもらされたことでしょう。でも、多くの人が、ネズミが禁煙するわけがない
と考える。ネズミは目の前にぶら下がった快楽に逆らうことはできない、欲求の
まま突き進んでしまうと思うのです。

では、なぜヒトは禁煙するのでしょう。

将来のことを考えるから?周囲のことを考えるから?

いろいろな答えが考えられるでしょう。現在の生物学ではヒトと動物との最も
大きな違いは「メタ認知」にあるといわれています。メタ認知とは、自分自身を
第3者の視点から客観的に眺める能力のことです。

私は禁煙にはこの能力が必要なのでは、と考えています。ヒトには目の前の快
楽におぼれつつも、タバコを吸ってる自分ってどうなんだろう、と眺めることが
できるのです。

しかし、ヒトの認知能力にも弱点があります。それは、物事(例えば快感)の原
因を少し前に起きたことではなく、直前に起きたことだ、と認識(断定)するとい
うことです。

もちろん、多くの場合は、これで問題ないのですが、タバコのように、快楽の
真の原因が、直前の喫煙という行為とは別にある場合(タバコの快楽の真の原因
は、繰り返しタバコを吸うことで、脳がサボりドーパミンやアルファ波が不足し
ていること。そうでなければ煙いだけ)、そちらは見逃されてしまうのです。

リセット禁煙では、この弱点により起きてしまった誤った認識に、メタ認知の
力をフルに使って気づき、悪循環から脱出しようとするのです。こうして考える
と、禁煙ってなかなかすごいことですね。

ところで、私は、四年前に独立してから、リセット禁煙を実際の社会に、適用
する方法を模索し続けてきました。幸い、非常に多くの、様々の職種の人々の目
に留まり、全国各地に招かれたりしています。こうした経験を重ねて見えてきた
ことは、医療崩壊の進行に象徴されるように、保健・医療・教育の、どの現場で
も深刻な人員不足が起きていることです。

そのため、目先の緊急の仕事に追われ、緊急ではないが重要な仕事ができない
状況が、常態化しています。例えば、喫煙妊婦がいたとしても、緊急な仕事に追
われて、禁煙支援ができなければ、その妊婦のハイリスク出産を防ぐことができ
ず、さらに新たな緊急事態の頻度が増す、という悪循環です。なんだか、短期の
効果に引きずられ長期の作用を見逃す構造は依存症に通ずるところがあり悲しい
です。

しかし、もはや、現場には新しい試みを模索する余力はほとんど残っていない
のです。

私は、現在の厳しい状況でなおかつ、新しい仕組みを模索するには、はじめか
ら、必要な人の派遣とセットになった試みである必要がある、と考えています。
社会実験ともいえるような事業です。この計画の具体像については次回お話しま
す。

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