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Vol.116 新専門医制度に新たな疑惑、データ改竄か ~日本専門医機構から次々流出する内部資料が明らかにした衝撃の事実~

医療ガバナンス学会 (2018年6月6日 06:00)


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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53219

この原稿はJBpress(6月1日配信)からの転載です。

仙台厚生病院 医学教育支援室室長
遠藤 希之

2018年6月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

ここ数日、日本専門医機構(以下、機構)の内部資料が流出し続けている。ネット上でも広がっている「速記録」をご存知の読者も多いだろう。

「新専門医制度」反対派として(全国的に悪目立ちしている)筆者にも、その速記録とともに他の「複数の資料」が送られてきた。

それらには速記録以外にも多数のデータファイルがあった。そこには世に出ていない多数の真実と疑惑が満載であった。

とにかく世に出したい事実がたくさんあるのだが、本稿ではひとまず機構の隠蔽体質と情報操作に関する最も重要な疑惑を検証したい。

「機構が東京都の専攻医募数の上限規制(シーリングと称する)に用いた『過去5年の各診療科の希望者数(採用数)平均数データ』は(機構、または内部の人間によって)改竄されていた可能性が極めて高い」という疑惑である。

さて、筆者が入手した資料を引用しながら説明してみよう。

【平成29年度第四回合同PG委員会(H29.12.7)速記録より】

●坂本先生(眼科領域):眼科の坂本でございます。昨年の登録者が341で今年は324ですから、一応規定内と考えておりましたが、都市部のシーリングに関して私どもは登録の定員と考えておりましたが、過去5年ということで、東京で約20名、愛知で10名、福岡で4名オーバーしておりまして、昨日厚生労働省の武井課長に呼び出されまして懇切丁寧な指導いただきましたので、日曜日の夕方までに調整して、月曜の朝一番で直して出すつもりです。ですから、必ず規定内に入れます。
(原文ママ)

坂本氏が示した数字は一次登録の志望者数であり、東京都は77人だった。そして機構がこの時点で持っていた内部資料によると、過去5年平均の東京都眼科採用者数は58人であった(2017/11/17付)。

従って、東京都の眼科志望者数は19人ほどシーリングを上回ったことになる。坂本氏の発言とも一致する。そのため坂本氏は「厚生労働省の武井課長」に呼び出され、指導を受けたのだ。

ところが、この5日後、機構内部資料の「2017/12/12現在」と書かれたエクセルファイル、および2月9日の機構理事会で配布された【資料1-4】「過去5年の専攻医採用実績の平均値(会議後回収、2017/12/12現在、との記載あり)」には、東京都眼科過去5年平均「78.0」と記されていた。

何と、東京都の眼科5年平均採用数は厚労省の指導からわずか5日で「20人」も増えたことになる。つまり東京都については、眼科志望者の上限規制が魔法のように守られたのだ。言い換えれば東京では「調整」が不要になったということだ。

一方、例えば愛知県では、既に名古屋大学眼科プログラムに採用されていた10人の専攻医のうち、3人の若手医師が「強引に辞退させられる」といった強硬な「調整」を受けていた。何とも不思議な話である。

おかしな点はまだある。上述の「過去5年の専攻医採用実績の平均値(会議後回収、2017/12/12現在、との記載あり)」という内容の資料が初めて機構理事会に配布されたのは2月であった。

理事会では松原副理事長が「各学会に再調査を依頼し、その数字も用いた結果、東京はきちっと上限規制が守られた」といった説明を行っている。

確かに1月30日付の本田浩氏(プログラム委員会委員長)のメールには、各学会に早急に対し採用数や学会入会者数の再調査を依頼する旨が書かれている。

回答は1週間以内に(2月7日まで)欲しいともある。つまり、2月9日開催の理事会に間に合わせるために必要だった、ということだ(このデータも機構の話とは辻褄が合わないのだが、ここでは割愛する)。

繰り返すが、松原氏の発言によると、この、2月初めに集めたデータも見合わせたところようやく東京のシーリングが守られたという。ただしこのときの資料にも「2017/12/12現在」と記載されている(筆者の手元に pdf. File がある)。

ところで、厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」において、機構は再三、シーリングの根拠となった資料の提出を求められていた。

ところが松原氏は毎回、のらりくらりと提出を拒んでいたという。12月12日時点では「シーリングが守られた」というデータがあったにもかかわらず、である。

少なくも1月の検討会には提出できたはずなのだ。結局、この資料と「裏づけになったデータ」が厚労省の検討会に提出されたのは平成30年3月27日であった。

さて、若干時系列がごちゃごちゃしてきたので順に並べてみよう。

2017/11/17 機構所持資料:眼科採用数、東京都5年平均、58人(眼科学会調べ)

2017/12/6 眼科坂本先生、厚労省に呼ばれ、東京の志望者数(77人)がシーリングを約20人上回っている、と指導される

2017/12/7 機構委員会で、眼科坂本先生がその旨を発言 ~(その後愛知県、福岡県で眼科専攻医数の「調整」があった模様)

2017/12/12 眼科採用数、東京都5年平均:78.0というエクセルファイルが機構内部に忽然と出現。東京都での調整は?

2018/1/29 厚労省の検討会にデータは提出されず

2018/1/30 本田氏が各学会への再調査依頼のメールを送信

2018/2/7 再調査締め切り

2018/2/9 第24回機構理事会において【資料1-4】「過去5年の専攻医採用実績の平均値(会議後回収、2017/12/12現在、との記載あり)」配布、後回収。松原氏が再調査を含めた結果、と説明

2018/3/27 厚労省検討会に「根拠となった資料」も含めて、上記資料提出

ちなみに他のいくつかの診療科の東京都のデータについても、(2017/11/17時点の機構資料5年平均、2017/12/12現在、最終の専攻医数)の順に記載してみる。(例)眼科(58.0/78.0/77)

皮膚科(46.6/92/89)、精神科(93.6/101/98)、整形外科(84.6/122/116)、耳鼻科(44.2/61/61)、泌尿器科(44.0/52/51)、麻酔科(93.0/116/105)

2番目の数字が疑惑の過去5年平均採用数、最後が実際に採用された数である。すべて当初の数字よりも5年平均採用数が増え、実に「きちっと」シーリングが守られているのが分るであろう。

上記の結果から見て、筆者は東京都のシーリングに用いられたデータは改竄の疑いが濃厚と考えている。状況証拠は限りなくクロに近い。

読者諸賢の考えはいかがであろうか。

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