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Vol.144 赤ちゃんの湿疹にステロイドを使うのは不安… ママが知っておきたい効能と副作用

医療ガバナンス学会 (2018年7月17日 06:00)


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この原稿はAERA.dot(6月13日配信)からの転載いです。

https://dot.asahi.com/dot/2018061100036.html?page=1

森田麻里子

2018年7月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は、乳児に湿疹ができたときのステロイド治療について、自身も1児の母である森田麻里子医師が「医見」します。

*  *  *
赤ちゃんが生まれてしばらくすると、多くなってくる悩みが「乳児湿疹」です。

乳児湿疹というのは赤ちゃんの湿疹の総称で、生後1カ月頃の湿疹は、ほとんどが新生児ニキビか脂漏性湿疹と言われています。1998年から99年にかけてオーストラリアで行われた研究では、3カ月未満の子ども46人を調べたところ、71.7%に脂漏性湿疹があるという結果が出ています(1)。かなりの割合ですよね。

しかし、1歳台の子ども176人の中で脂漏性湿疹があるのは7.5%だったことがわかっています。成長とともに、数週間から数カ月で改善する場合が多いのです。

ネットには、便秘が乳児湿疹の原因とする記事もありますが、明確な根拠はないようです。確かに、腸内細菌叢がアレルギーに関係しているという意見はあり、乳酸菌を摂取することで、アトピー性皮膚炎や便秘が改善するかを確かめた研究はいくつかあります。しかしアトピー性皮膚炎は乳児の湿疹のごく一部ですし、乳酸菌の効果もはっきりしていません。お腹の調子が良いに越したことはありませんが、便秘を治せば湿疹が治るとは限りません。治療には、適切なスキンケアが大切です。

脂漏性湿疹では、おでこに黄色い皮脂の塊ができたり、頬に赤い発疹が出たりしますが、他にも乾燥による湿疹やあせも、アトピー性皮膚炎、かぶれなど他の病気も考えられます。まず、小児科や皮膚科の医師にきちんと診断してもらいましょう。たいていの場合、赤ちゃんは元気で痒みは強くなく、ミルクを飲んだり眠ったりするのに支障はありません。軽症なら、スキンケアだけでよくなる場合もあります。黄色いカスは、白色ワセリンやベビーオイルを塗って柔らかくした後に、柔らかい歯ブラシや目の細かいクシで優しく取り除きます。その後、ベビーソープでよく洗い、保湿剤を塗ってあげましょう。

ただ、症状によって必要と判断された場合には、ステロイドや抗真菌薬の軟膏が処方されるかもしれません。

ステロイドというと、なんとなく拒否感を持っていらっしゃる人もいますよね。私自身も、最初はステロイドを使うことに不安もあったので、気持ちはよくわかります。そこで、ステロイドの副作用についての研究をいくつかご紹介したいと思います。

ステロイドは副腎皮質というところから分泌されるホルモンですが、ステロイドの内服薬を長期にわたって飲んでいると、この副腎皮質の機能が低下してしまうことがあります。ステロイド軟膏などの外用薬は内服するよりもリスクは少ないと言われていますが、米テキサス大学の研究者が、本当に外用薬で副腎皮質の機能低下が起こらないのか、2006年に確かめていました(2)。3カ月から6歳までの、中等症から重症のアトピー性皮膚炎と診断された子ども44人が被験者です。フルチカゾンプロピオン酸エステル(ロコイドと同程度の強さのステロイド)のローションを1日2回、4週間に渡って塗りましたが、研究の前後で測定した副腎皮質機能には低下は認められませんでした。

また、ステロイドを使っていると徐々に効果が弱くなっていき、さらに強い薬が必要になると言われることもあります。確かに1970年代から80年代にかけて、動物や健康な成人ボランティアを対象にした研究が行われ、ステロイドを使い続けると効果が弱くなるという結果が確認されていました。しかしアメリカ・ペンシルベニア州医学大学院の研究者たちは、それらを否定する論文を99年に発表しています(3)。

この研究では、32人の乾癬(皮疹ができる慢性疾患)の患者に、1日2回ステロイド軟膏を塗ってもらったのですが、その際、一つの皮疹だけは比較対象としてステロイドを塗らないでおいてもらいました。12週間にわたって追跡したところ、ステロイドを塗らなかった皮疹の状態が変わらなかったのに対し、塗った皮疹は2週間後に状態が改善しました。そしてその後も悪化することなく、最後まで良い状態を維持していたのです。

この研究では、急性耐性と考えられていたのは、治療開始からの時間が経つに連れてステロイドの塗り忘れが出てきたり、薬剤と関係なく病勢が悪化してきたところを捉えたものではないか、と結論づけられています。

他の副作用としては、皮膚が萎縮したり毛細血管が拡張したりすることはありますが、それを防ぐために、医師は状態に合わせて適切な強さのものを適切な期間処方します。ステロイド薬は使い方が大切です。使い方まで丁寧に指導してくれる小児科や皮膚科で治療を受けましょう。

皮膚が黒ずんだり厚くなったりするのは、ステロイドの副作用ではなく、炎症によるものです。早く薬を使って炎症を抑えることで、色素沈着を防ぎ、結果的に薬の使用量を減らすことができます。また、湿疹をきちんと治療することは、実はアレルギー予防につながるかもしれないと言われ始めています。次回はこのあたりについて解説したいと思います。

1. Foley P, Zuo Y, Plunkett A, Merlin K, Marks R. The frequency of common skin conditions in preschool-aged children in Australia: seborrheic dermatitis and pityriasis capitis (cradle cap). Arch Dermatol. 2003;139(3):318-22.
2. Hebert AA, Friedlander SF, Allen DB. Topical fluticasone propionate lotion does not cause HPA axis suppression. J Pediatr. 2006;149(3):378-82.
3. Miller JJ, Roling D, Margolis D, Guzzo C. Failure to demonstrate therapeutic tachyphylaxis to topically applied steroids in patients with psoriasis. J Am Acad Dermatol. 1999;41(4):546-9.

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

 

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