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Vol.165 寝苦しい真夏の「快眠術」 赤ちゃんも大人もぐっすり眠れる2つの方法

医療ガバナンス学会 (2018年8月15日 06:00)


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この原稿はAERA.dot(7月11日配信)からの転載いです。

https://dot.asahi.com/dot/2018070900015.html

森田麻里子

2018年8月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。寝苦しい夏の睡眠、そして赤ちゃんの寝付きについて、自身も1児の母である森田麻里子医師が「医見」します。

*  *  *
夏になると、お子さんの寝付きが悪くなったり、早朝に起きてしまうというお悩みが増えてきます。そしてお子さんだけでなく、ママ・パパも同じようなお悩みがあるかもしれませんね。季節ごとに変わる温度や光は、睡眠にも大きな影響を与えています。

まず、温度についてです。特に赤ちゃんは、眠くなると手足がぽかぽかしてきます。これは、体の表面の血管が広がって熱を逃し、体の中心部の温度を下げている状態です。このようにして、体温が急激に下るときに眠気が強くなるのです。

この特性を利用して、お風呂に入って体を温めることで、その後の体温の下がりがよくなり、睡眠が改善することがわかっています。

ハーバード大学マックリーン病院の研究者たちが、1996年に行った研究をご紹介しましょう。60~72歳の不眠症の女性9人を対象に、就寝時間の1時間半前にお風呂につかってもらいました。お風呂の温度は、40~40.5℃と、37.5~38.5℃の2パターンで、つかった時間は30分です。脳波を計りながら眠ってもらったところ、熱いお風呂に入った日のほうが、夜間の覚醒も少なく、深い睡眠が増えたことがわかりました。

このような研究から、大人は眠りにつく1時間半前の入浴が勧められることが多いです。子どもも基本的なしくみは大人と変わらないと思いますが、体格の差から、子どもは大人より体温が上がりやすく下がりやすい傾向にあります。赤ちゃんでしたら、お風呂の温度は38℃前後のぬるめにして、つかる時間も数分で十分でしょう。入浴後に体温が下がるまでの時間も、大人より短いと考えられます。お風呂から上がって、30分から1時間程度で就寝にすると、ちょうどよさそうです。
寝室の温度については、アメリカ睡眠財団は18〜19℃を推奨しています。温度を厳密に測る必要はありませんが、体温がスムーズに下がるよう、少し涼しいくらいがよいと思います。息子が3、4カ月だった頃は、エアコンを付けて寝ると風邪を引くんじゃないかとか心配するあまり汗びっしょりにさせてしまっていましたが、赤ちゃんは暑いのが苦手です。風が当たらないように調整して、エアコンを付けてあげたほうが良いでしょう。とはいえ、日本の夏に、室温を19℃まで下げるというのは現実的ではありませんね。クーラーの設定温度は26~27℃くらいにして、パジャマを夏用の薄いものにするなど、暑くならないよう調節してあげるとよいでしょう。

また、日が長いこの時期は、早朝に寝室が明るくなってしまいます。光は睡眠を浅くする効果があり、明るい寝室で眠ると、目を覚ましやすくなります。1981年に奈良女子大学の研究者たちが行った研究では、3人の女性に、様々な暗さに調節した部屋で寝てもらい、その間の脳波を測定しました。その結果、寝室の明るさが30ルクス以上になると、特に起床前2時間の睡眠が浅くなることがわかりました。2013年に韓国で行われた研究でも、4人の女性を対象に、40ルクスのライトをつけた場合とつけない場合での睡眠深度を測定しています。その結果、ライトがついていないグループとついているグループでは、ステージ1の浅い睡眠がそれぞれ8.6%と10.2%、ステージ3・4の深い睡眠がそれぞれ15.1%と11.3%となり、やはり睡眠が浅くなることがわかりました。

30ルクスというのは、なかなか言葉で伝えるのは難しいですが、物影がうっすら見える程度、間接照明がついた薄暗い寝室、くらいの明るさのようです。その程度の明るさでも、睡眠が浅くなってしまうのですね。日当たりの良い部屋だと、遮光カーテンをつけていても、朝方はそのくらいの明るさにはなってしまうと思います。遮光カーテンは1級遮光のものを使い、カーテンの上下左右から漏れる光もふさぎましょう。それでもだめなら、完全遮光の窓用シートを使うのもおすすめです。

温度と光に注意して、夏も快適な睡眠をとりましょう。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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