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Vol.166 この国の未来の希望の姿(6)あとがきに代えて

医療ガバナンス学会 (2018年8月16日 06:00)


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福島県浜通り
永井 雅巳

2018年8月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


あっという間に2018年も半年が過ぎようとしている。世界の情勢は、朝鮮半島、欧州諸国、中東などのグローバルな動きに、アメリカ、中国、ロシアの大国が主導権争いにナショナリズムを高めているように映るが、一方、日本では、この国自身のグローバリズムあるいはナショナリズムに対する考え方について論じられる機会もなく、最高議決機関で論じられているのはメディアに主導された(つまらない)話(決して、メディアをつまらないと言っているわけではないが・・)ばかりのような気がするが良いのだろうか・・。さて、一連の拙文のあとがきに代えて、金に代わるモノについて最終稿では考えてみたい。

「国際幸福デー」にあたる3月20日、国連に属するSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)から国別の「世界幸福度ランキング2017」が発表された。このランキングは、2014~16年の3年間に世界156ヶ国について、それぞれ約3000名を対象に行ったアンケート調査のうち、「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)」に関する回答に基づいて、SDSNが各国の主観的幸福度の統計分析を行ったものだそうだ。国連が幸福度を“国民の主観”によって評価するのは、GDPなどの客観的な経済的指標ではなく、人間の心理的な主観的幸福度こそが本来的には大切と考えているからだろう、健全なように思える。

アンケートでは、今の人生に「幸せ」を感じる度合いと「不幸せ」を感じる度合いが6指標によって問われている。6指標とは、以下の通りである。

1.1人当たり実質国内総生産(GDP)
2.社会的支援の有無(助けてくれる親族や友人がいるか?)
3.健康寿命(健康を最優先しているか?)」
4.人生選択の自由度(自分の生き方を自由に選択し、満足しているか?)
5.寛容さ(慈善事業に寄付した金額はいくらか?)
6.汚職(政府やビジネス界の汚職はないか?)

発表された結果によると、日本人の主観的幸福度はG7の最下位、因みに、発表された幸福度ランキングトップ10は以下の通り。
第1位はノルウェー。以下、デンマーク、アイスランド、スイス、フィンランド、オランダ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、スウェーデンと続く。トップ10は、北欧勢、あるいは旧英国領であった国々が多い。アメリカ、中国、ソ連といった大国やイギリス、ドイツ、フランスといった欧州の経済国は、トップ10圏外。ちなみに、アメリカは14位、ドイツ16位、英国19位、フランス31位、イタリアは48位。アジア諸国では、シンガポールが26位、タイ32位、台湾32位。日本はロシアの49位より低い51位(G7最下位)。中国は79位、インドは122位(因みにアメリカや中国は前回よりランクを下げている)。
幸福を感じることが最も少ない国は、南スーダン、リベリア、ギニア、トーゴ、ルワンダ、タンザニア、ブルンジ、中欧アフリカ共和国の国民という結果だった。後者をみると、やはり国民の幸福は国の幸福度を反映している事がわかる。近過去に報告された世界幸福度リポートでもおおよそ同じような傾向のようだ。もちろん、アンケートによる主観的調査であるから、質問が標準化されても応える各国国民には、その国の歴史や文化など相対的に異なる背景が存するから、幸福と感じている国民が多い国が絶対的に幸福な国とは言えない(かも知れない)。
ただ、上位を占める北欧諸国は、何となく国民が自分の国に誇りを持ち、その美しい国土や環境を大切にし、コミュニティにおいても家族や高齢者を大切にすることに人としての価値を大切にしている国のように思える。これこそ、まさに大平や橋本、安倍現首相も含め、この国の宰相が想い描いていた姿、この国の希望の姿のような気もするが・・。

この幸福度ランキングには多くの専門家の方々のコメントがある。明治大学の鈴木賢志教授は、自己主張が控えめとされる日本人の国民性が、結果に少なからず影響していると指摘し、「多くの日本人は、『あなたは幸せですか』という質問をされたとき、他人と比べて幸せかどうかを答えようとする。個人主義的な欧米諸国では自分の絶対的評価で答える人が多いこととは対照的であり、これが日本人の幸福度が低くなっている原因のひとつとも考えられる。
ただ、日本人の『他人と比較し続ける人生』がストレスに満ちていることも確かではないでしょうか」と述べている。確かに、そうなのかも知れない。また、日本社会独特の“不幸の根”としては、「人生の選択における自由度の低さ」も指摘する。「日本人の多くは、現状についてはささやかな幸せを感じながら生きていますが、将来に対する不安が大きい。例えば、国がダメになったときは自分の人生もダメになると思い込まれている
。世界では、『自分の国がダメならよそへ行けばいい』というのが普通ですが、近年それほど多くの海外移民を輩出していない日本では、選択肢として想定されていない。大学受験や就職でも、一度失敗しただけで人生が狂うと思い込まされている。また、日本人の幸福度の変遷を時系列で見ると、その時々の国の経済状況に応じて大きく変化していることも他国に比べて特徴的で諸外国と比べると、『チャンスはいくらでもある』という気概が弱いと言えます。」とコメントしている。なるほど、それもそうなのかも知れない・・。他にも様々な識者がコメントしているが、でも、残念なことに現実として、現代の日本人の多くはこの国で暮らすことを“幸福”と感じられていないらしい。そして、その想いは年代が低くなるほど強いらしい。それでは、次世代の若者が日本に生まれて良かった、この国を大切にしたいと考えるに、どこに問題があるのか、課題を整理すると、

1)高齢者が多いのが問題ではなく、貧困層が多くなっているのが問題ではないか。
2)富の分配の意思決定が富裕層やエリート層だけに拠っていることが問題ではないか。
3)経済が最優先されていることが問題ではないか。
4)未来にどのような文化・倫理・社会・幸福観を持った世代を育てるかの国民的コンセンサスの醸成が必要ではないか。

重ねて想う。車窓には、まだ美しい日本がある。次世代、次々世代、この国に住む人達に
この国に生まれて良かった(この国の未来の希望の姿)と堂々と応えられる国創りのために、今、われわれは何をすべきか、上も下も、右も左もなく真摯に“この国の未来の希望の姿”について議論すべきで時はないだろうか、国民は政府からこの国の未来を守る責務がある(了)。

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