医療ガバナンス学会 (2010年2月19日 05:00)
1.地域の状況に応じて市町村レベルでワクチン接種を計画することが必要である。
2.全国一律に国が統制しようとすると地方で工夫して接種の効率を上げる努力をする余地がなくなる。
3.予防接種は、地方自治体が接種の主体となり、地域医師会と協力して住民の健康を守るために行ってきている。国と医療機関が直接契約して接種する方式では、地方自治体が積極的に予防接種に関与することができない。
4.今回の新型ワクチン接種でも12月初旬に、ワクチンが余ることは予想できたが、国の対応は遅れ、受験生に対する接種を12月末に行ったのも地方が実施を決めたことを国が追認したに過ぎない。地方が接種対象者を決めることができていれば、12月中旬にはワクチン接種対象者を前倒しすることができたと思われる。国が統制したためワクチン接種の需要予測を正確に判断するのが遅れたのは明瞭である。
5.新型インフルエンザワクチンは、当初10mlバイアルが大量に供給された。10mlバイアルを使用して余った場合に優先接種の対象でない人に接種する方が廃棄するより有効利用できたにも拘わらず、優先接種対象者以外に接種すれば罰するようにしたことで接種の効率が悪くなったのは明らかである。国が統制を強化することは、ワクチンを少しでも有効利用しようとする現場の医師の士気を低下させ、接種効率の低下を招くだけである。現場の医師の裁量を認めることが、ワクチンの接種効率を上げることにつながる。
6.国と医療機関が直接契約したことで、集団接種を行うことが困難になった。集団接種のためもワクチンの確保・人員の確保を医療機関が行わなければ集団接種ができないシステムであった。この様な状況では、集団接種を行うより、各医療機関が自院で予防接種を行う方が効率的であった。集団接種は、自院で予防接種を行っていない医療機関の医師に集団接種に協力してもらうことで効率的な予防接種ができることがメリットである。今回のシステムでは、集団接種を行っても接種効率を上げることはできない。地方自治体が主体となって予防接種を行い、地域医師会が協力する体制を作ることが集団接種を成功させる条件である。そのためには、予防接種を国が直接統制する体制を止める必要がある。
7.国家の統制は、最小限にして、医師・地方自治体に実施を任せるような方向で改正しなければ、今後、緊急ワクチン接種時にも今回と同じ様な混乱が生じると考えられる。