医療ガバナンス学会 (2010年2月20日 19:50)
特定非営利活動法人PAHの会
代表 村上紀子
*2月19日に要望書を提出しました。
2010年2月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
特定非営利活動法人PAHの会
代表 村上紀子
【要望書 肺動脈性肺高血圧症治療薬『フローラン』に関する通達文の徹底と包括医療からの除外のお願い】
肺高血圧症という病気は、さまざまな原因で引き起こされますが、未だに原因は特定されておらず、一旦発病してしまいますと元に戻るのはきわめて困難な進行性疾患で、発病してから数年で半数が死亡してしまうと言われている難治性疾患です。また、非常に患者数が少なく、特定疾患治療研究事業の対象疾患であります。
昨今では、複数の治療薬の選択肢も増えてきていますが、未だ根治薬は登場しておらず、プロスタサイクリン(商品名:フローラン 開発・販売:グラクソ・スミスクライン社)は、病状が進行した重症な肺高血圧患者に対しても、患者の長期の延命を可能にするのみならず、QOLを高め、社会復帰をも可能にするなど、極めて優れた治療薬として、わが国でも平成11年に肺動脈性肺高血圧症治療薬として承認されております。
尚、本剤は、肺高血圧症が原因不明の進行性疾患という特質上、患者の命を繋いでいくためには、常に医師の診断により、「個々の患者の病状に合った薬剤の増量」が必要とされております。
しかし、わが国では、本剤が平成11年の承認された当時の薬価は米国の10倍という価格で承認されたために、1人の患者が1ヶ月に使用するフローランの価格は500万円以上にも達する事例も多くあり、そのため、当初より各患者が属する医療保険財政を圧迫するという理由で、患者が通院する全国の医療機関では、減額査定されるという事態が多発し、減額査定されると、保険償還されなかった差額分を各病院が負担しなければならないという規則になっているために、医療機関経営者側から医師に、本剤の処方を禁止したり、ある一定量以上の薬剤を使用禁止するなどの圧力がかかり、医師は本剤の治療効果は十分に理解していても、病院経営側との板ばさみとなり、患者の命を繋いでいくために十分な薬剤の処方がおこなわれないという事態が多発しました。
このような患者の命を犠牲にした理不尽な事態を打開するべく、当会では平成14年10月に、坂口厚生大臣(当時)に面談し、要望書を提出し、「フローランの使用に関しては上限を定めない」という趣旨の「通達文」を全国の関連機関に徹底していただきました。
しかし、その後も本剤に関する減額査定は続発したために、多くの医師たちは、フローランの増量に対しては極めて懐疑的になり、自ら上限を定めてしまっていると伝え聞いております。一方、患者の病状に合わせたフローランの増量が行われないことは、患者にとっては死を意味いたします。
フローランはわが国で肺動脈性肺高血圧症治療薬として承認されている保険薬であり、その使用法も上限のない薬剤として明記されております。
どうかこの通達文に書かれております、内容を再度関係機関に徹底していただき、本剤が高額すぎて保険財政を圧迫しているとの理由で、患者の命を軽視した治療が行われている現状にご配慮いただき、これ以上患者の命を摘み取らないように切にお願いいたします。
また、上記の減額査定に加えて、フローランは包括医療に含まれており、その高額な薬価は入院患者のフローランの減量や併用薬の打ち切りなどにも繋がり、患者の治療は著しく制限されてしまっております。
肺高血圧症は命に拘る疾患ですが、患者は病状に合った適量のフローランを投与されることで、生き続けることが可能であり、未来の医学の進歩に希望を繋げていくことができます。
何卒宜しくお願い申しあげます。