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vol 62 社会的弱者と妊婦たらい回し うつ病患者の立場から

医療ガバナンス学会 (2010年2月21日 07:00)


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患者 佐藤 理恵子
2010年2月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


私は以前、東大病院現・血液・腫瘍内科の研究室で実験補助の仕事をしていた。当時、研究室にかかってくる電話も受けていた。仕事関係の電話の多い中、外来で罹っている患者さんからの電話もあった。

仕事を始めた当初、その患者さんの担当医が研究室不在だったので、その旨伝えた。そして、その患者さんは私の対応に諦めて電話を切った。担当の先生が戻ってきた時、患者さんから電話があった旨伝えた。その時、怒られはしなかったが、先生は心配そうな顔をされた。

その後、仕事をしていく内に、白血病は一代限りの病気で、突然変異で起こる病気であること、つまり、誰がいつなってもおかしくない病気である事を知った。また、いつ急変するかわからないことを知った。

それからは、患者さんからの電話は担当医が不在であった場合には、他の先生に対応をお願いした。すぐに救急車で来るようにと先生が指示していたのも聞いていた。中には、不安を打ち明け、担当医の先生をどれだけ頼りにしているかお話をされる患者さんもいた。いつ命を落とすかわからない病気。大変な病気であることを思い知らされた。

その中で、慢性骨髄性白血病については維持するための特効薬グリペック
があることを知った。しかし、薬価が高い。仕事をしていた時、いつ命を落とすかわからず不安になっている患者さん達を思い出した。

高額な医療費がかかるためグリペックを諦める患者さんがいることを知った。どれだけ不安に駆られているだろうかと真剣に考えた。

また以前、船橋市の病院の話で肝臓の病気で維持する薬の支払いができ
ないという理由で、諦めた患者さんをメディアで見た。

私は今、うつ病と闘っている。うつ病は自殺しない限り、命に関わる病気では
ないが、慢性骨髄性白血病や肝臓の病気の維持の医療費に比べたら大した
額ではないものの、私の医療費は3割負担で月1万円を超える。

それでも、私は幸いにして支払うことができ、今後も薬物療法を行え、また体調悪化の際は入院もできる。それだけの余力がある。いずれは寛解することが可能だ。

しかし、中には医療費の支払いを待ってほしいとお願いしている患者さんを
見たことがある。また、よく見かけていた女性の患者さんが最近見かけなくなった。一人で、パートをしながら闘っていて不安感が強いことを聞いていた。入院の経験はないとも聞いていた。
働けなくなったのではないか、そのため病院へ来る事もできずにいるのでは
ないか、もしかしたら自ら命を落としたのではないかと心配している。

うつ病はだいぶ市民権を得た病気だが、まだ偏見があり、クリニック自体に
通わず、適切な治療をしていない患者さんが大勢いると思う。また、クリニックに行ったものの医療費の高さで諦めた患者さんもいると思う。結果、自ら命を落とす人はたくさんいるだろう。

すべてに言えることだか、船橋の患者さんの言葉が忘れられない。
“(支払い能力のない場合は)早く死ねと言われているのだと同じだ”、と。

私は主婦だが夫の収入がそれなりにあるので助かっているが、同じ主婦でも、今の不況下、旦那様の収入が下がったり支払い能力のない場合は諦めざるえない。一家を支える旦那様が病気になった場合は更に悲惨だ。

グリペックもそうだか、医療費全般に関して税金のさらなる削減を図り生活保護だけではなく、多種の公費負担指定を増やして安心して治療ができる体制を整えてほしいと願う。
また、精神疾患患者の立場からは国側から官公庁・企業に対して、偏見をなくし、メンタルヘルスケアに力を注ぐように働きかける力を入れて欲しいと願う。

精神疾患患者は見た目どこも悪いように見えないし、私もうつ病であると告知しない限りわからない。しかし、日々の体調管理が欠かせない状態である。骨折したり、癌になった方が理解してもらえるため、余程マシだと思ったことも
ある。それだけ、メンタルヘルスケアが遅れていることを実感している。

それと、妊婦たらい回しはメディアで見るたびに呆れている。出産は命を落とす危険性があり、命を落とされたり、障害が残った方は大変気の毒に思うが、その結果、医師が訴えられ産科を辞めてしまって、婦人科ばかり増えている現状に憤りを感じる。

私の住んでいるつくば市は、若い方が比較的多いが、つくば市内で出産が
できる病院は総合病院2箇所、クリニック2箇所、計4箇所のみだと聞きている。総合病院は市内に他にもある。しかし婦人科のみだ。総合病院なのに何故産科がないのかと疑問に思う。

他、茨城県内の話だか、以前鹿島に住んでいて鹿島で出産した方がいるが、自然分娩が出来ず、帝王切開で出産したが、緊急の場合は水戸まで行くと言われた、と聞いた。鹿島から水戸までは非常に遠い。驚いてしまった。

また、私が独身の時に通っていた千葉県習志野市にあったクリニックで出産時の出血多量により緊急搬送が遅れたため、2億円の損害賠償の判決が出たのをネットで見た。その結果、潰れてしまい、 新たな産婦人科探しに困った経験がある。率直な気持ち、訴訟を起こした方には余計な事をしてくれたと腹が立った。

訴えた患者さんのご家族のお気持ちは大変よくわかるが、その結果、迷惑を
被っている方達がいることを、訴訟を起こした方達には、その点十分理解して
ほしいと思う。出産は、命を落とす危険性もあることを。それを十分理解した上で、子供を持つ事を考えて欲しいと思う。

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