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Vol.240 現場からの医療改革推進協議会第十三回シンポジウム 抄録から(10)

医療ガバナンス学会 (2018年11月16日 15:00)


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2018年11月16日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2018年11月25日(日)

【Session 10】グローカル 15:40~16:30

●医療はじめ世の中の仕組みは無駄だらけ。それに対する私見
岡本 雅之

私は、東大阪市 の内科開業医です。
1994年の開業予定が、京都府立医大第一内科の都合で明治鍼灸大学に1年派遣となって遅れ、そうこうしているうちに阪神大震災が起こり、神戸の無料診療施設に派遣され、という数奇な運命に操られています。
内科診察を続けていると、医療の現場では膨大な無駄に突き当たります。当院では LINEを利用して各職員と連絡を取り、会議開催をやめ、診察レベルを落とすことなく時間の短縮を図っています。本口演では、職員との LINEのやり取りの実例を紹介します。
学校検診の機能不全はご存知でしょうか? 例えば、小学校の眼科の二次検診の受診率はわずか20%です。原因は多岐にわたるでしょうが、何らかの対策が必要です。私はメガネ無償提供プロジェクトを進めています。役所主導のプロジェクトではスピード不足であり、煩雑で立ち行かなくなった点を改善したものです。LINEのやり取りで無償でメガネを提供してもらえるので、生徒にとってはとても便利ですね。
また、人間の健康には医療以外のサポートが必要との信念を、ラジオ大阪の番組を通じて発信しています。これについても説明します。
学校の吹奏楽部の再興プロジェクトも応援しました。学生にとっては高価な楽器も、ある人にとってはわずかなこと。でも、その支援がなければ、吹奏楽部で過ごす学生生活はなかったのです。
そしてこれらが決して“大層な話”でないことを、この場を借りて発表します。
●淡路島で暮らす
近藤 優実

私は、1995年1月17日、阪神淡路大震災が発生した日に生まれた。物心ついた時から、人の生死について疑問を持ちながら生きてきた。将来は、医療現場で働きたいと、看護師を志した。
大学時代に医療ガバナンス研究所で勉強する機会を頂き、そこで先輩方の勉強法を学び、東日本大震災の被災地である南相馬市で働いている医師に出会った。興味がある分野において、現地に行き、風土を肌で感じて、患者が何を必要としているか勉強されている姿を見て、自分も地元から離れて、興味がある場所で働きたいと思った。私が看護師になるきっかけをくれた淡路島で働く坂平医師と話す機会があり、淡路島は四方を海に囲まれた半閉鎖地域であり、「島の人は私たちが守る」という意志の人が働いていると伺った。その使命を持つ人たちと働きたいと思い、看護師としての一歩目として、淡路島で働くことを選択した。
淡路島ではまず、言葉の壁を感じた。職場の人も地域の人も淡路弁を話し、意味を正確に理解できず苦労すると共に、「どこの人?」とどこでも聞かれ、外国人のような対応をされた。一方で、見知らぬ人に気軽に話しかける様子にも驚いた。
少しずつ仕事に慣れた1年目の8月、淡路島まつりに参加した。今年で71回という歴史があるお祭りに参加し、地域の人が本気で楽しんでいる姿を見て、淡路島の生活を楽しいと感じることができた。自分も淡路島の住人の一人だ、という自覚が徐々に芽生えた。
住人の一人として島の人と何かできないかと思い、ボランティアを開始した。「レトロこみち」という小さな通りで年2回行われる催し物で、来場者に、イベントを知ったきっかけや来場理由についてアンケートをとった。また、廃館した映画館で行われた短編映画祭で受付をした。淡路島内外の人が協力して、食や芸術で島をPRする様子を目の当たりにした。
先日の台風により、淡路島の大浜海岸に大量のゴミが漂着した。これまでの淡路島での人脈を頼りに海岸清掃の呼び掛けをし、総勢79人で167袋のゴミを回収することができた。
震災後、淡路島は高齢化が急速に進んだが、復興と共に、淡路島の持つ豊かな資源とその資源を活用するために集まる人々が協力して盛り上げ、今があることを知った。そこには、年齢の垣根を超え、皆が暮らす場所をより良くしていこうという地域への思いがあった。
●異業種から参入したからこそ気付いた日本の医療・介護のすきま
早見 泰弘

私が保険外リハビリ施設『脳梗塞リハビリセンター』を設立したのは、約4年前の2014年である。その前年、長くIT系企業の役員を務める中で身体を酷使していた私は、椎間板ヘルニアを患い、手術を受けた。術後、寝たきりで歩けない間に、随分気が落ち込んだ。リハビリをし、自分の足で歩むことができるようになってくると、またふつふつと仕事への情熱や活力が湧いてきた。同時に「リハビリ」が人に希望を与える素晴らしい領域だと気づき、リハビリをメインにした事業で再起業しようと、入院中に事業計画書を書き上げた。
そうして最初に立ち上げたのは、リハビリ特化型のデイサービスだった。しかし異業種から飛び込んだ私には、介護保険制度によって経営が受ける制約はもどかしく感じたし、利用者からの「仕事復帰のために自分に合ったリハビリをしたい」「もっとじっくりやりたい」などのニーズが顕在化していながら、それに応えるサービスがないことに驚いた。それならば自らやろうと、起業から半年後に自費型のリハビリ施設を開設した。ほどなく、日本各地から社会復帰をのぞむ就労世代や、既存のリハビリだけでは不足を感じていた方々が多く訪れるようになった。現在は12施設を展開している。たっぷり2時間マンツーマンで理学療法士ら専門家のリハビリをうけることができ、多くの方から喜びの声を頂いている。保険外だからこそユーザーの声に耳をかたむけながら、サービスを磨いている。
また、日本のリハビリは世界に誇れるコンテンツである。現在、月に数名の海外からの利用者がいる。アジアのみならず、米国や欧州などから、短期滞在をして『脳梗塞リハビリセンター』に通所するのだ。保険外だからこそできる対応でもある。同時に、海外の医療機関やヘルスケア産業に携わる方々の視察も多く頂くようになった。そもそも介護保険制度がない中国では、退院後の行き場が本当になく、スポーツジムなどで自力のトレーニングをするしか術がないと聞く。そうした国々でも、パーソナルリハビリニーズは日本と変わらず高い。専門家監修の在宅トレーニングのネット動画配信や、ゆくゆくは海外での展開も視野に入れながら、まずは、日本国内で地域格差なく、リハビリの「(医療と介護に次ぐ)第三の選択肢」となれるよう邁進していく所存である。
●Global epidemiology of use of and disparities in caesarean section.
Abidur Rahman

Caesarean section (CS) can save women’s and infants’ lives and should be universally accessible. However, the large increase in CS use, often for non-medical indications, is of concern given the risks for both women and children. CS use is increasing in all regions and, in recent years, more than one in five live births were by CS. In most countries, CS use has reached a frequency well above what is expected on the basis of obstetric indications. Within-country CS use is often particularly high among wealthier women and in private facilities.
By contrast, inadequate access to CS is still a major issue in most low-income and several middle-income countries, especially in sub-Saharan Africa and among the poorest women. The
low use of CS implies that women and babies are at much higher risks of dying because they cannot access lifesaving surgery during childbirth.
Optimisation of CS use is needed, underpinned by a better understanding of demand and supply factors that drive the overuse of CS and by greater efforts to ensure universal access to CS for all women.
●バングラデシュで実感、やっててよかった「現場」活動
森田 知宏

バングラデシュでの活動を始めて約2年が経過した。自前の臨床検査室をつくり、訪問式の健康診断サービスや、診療所での診療支援サービスなどを展開している。
バングラデシュは世界で唯一、GDP成長率が10年間6%以上を記録しており、インフラも整備されつつある。経済は確かに成長しているが、医療では想像を絶する世界が広がる。抗菌薬の不適切使用による耐性菌の蔓延は、すでに国際機関でも報告されている。さらに、がんの確定診断がついていない状態で抗がん剤が投与される、病院での出産の約9割に帝王切開が行われている、など日本では考えられないことが起きている。国民保険がない中で、患者から診察料を取りながらいい加減な医療を行うことに対して、世間の目は厳しい。ジャーナリストが、fake drug (偽の薬)が流通していること、病院に誰も医師がいない状況をレポートするなど、医療スキャンダルは新聞紙面に頻繁に登場する。
こうした状況から、バングラデシュでの医療活動には、信頼がなおのこと大事になる。現地で日本人が道路や井戸などを整備してきた実績から、日本人というだけで信頼できるイメージを持たれる。さらには、これまでの活動が役立つことを実感している。NGOや研究機関などで公衆衛生の取り組みを行っているグループに対しては、福島で実施した疫学研究の話は伝わりやすいし。医療機関に対しては、内科医として話がスムーズに伝わる。一つ一つの「現場」できっちりと結果を残すことが、次の「現場」にも生きる。

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