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vol 74 子宮頸がん予防ワクチンを公費接種に

医療ガバナンス学会 (2010年2月27日 12:00)


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ナビタスクリニック立川 院長
東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門 客員研究員
久住 英二
*本稿は新潟日報で連載中の「医の中の蛙」から加筆修正したものです。
2010年2月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


子宮頸がんという女性の病気があります。通常、がんは加齢とともに増加し、老人に多い病気です。ところが、子宮頸がんは20 代後半から40代前半という、結婚から子育て中の若年層に好発するという特徴があります。女性の人生において、もっとも大切 な年代だと思いますので、このがんを減らす意義は大きいのではないでしょうか。

ウイルスが原因で発病するがんがあります。肝細胞がんはB・C 型肝炎ウイルスが、バーキットリンパ腫はEBウイルスが原因です。同様に、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスが原因です。 ヒトパピローマウイルスには血清型という細分類があり、そのうち2種ががんを起こしやすいのです。原因となる腫瘍ウイルスの感染を防げば、これらのがんを発病せずに済むのですが、ヒトパピローマウイルスはいたるところに存在し、性交渉などによって容易に感染するので、感染を防ぐことは困難です。

昨年の12月、ヒトパピローマウイルスに対するワクチンが国内で発売されました。性交渉を経験する前の10代前半に接種することが望ましいため、性教育の一環と考える側面もあります。合計3回の接種で 費用が5万円かかることなども普及するうえでの障害と考えられています。

私は、B型肝炎ワクチンも含めて、パピローマウイルスワク チンは予防接種法における定期接種として、公費負担(接種者の費用負担なし)でおこなうべきであると考えます。また、診療所などで個別に接種を受ける方式では接種率が上がらないため、小学校での集団接種が望ましいです。なぜなら、ワクチン接種が普及して病気になる人が減ると、がん治療にかかる医療費が減らせるのはもちろんのこと、がん検診の回数を減らしたりする経済的利益が期待されるからです。接種率が上がらなければ、公費負担で費用は増大するのに、医療費や検診の費用が減らず、出費が増えるだけになってしまうのです。

当然ながら、これらのワクチンを定期接種化するにあたり、無過失補償を拡充し、免責制度を導入する必要があります。現在の予防接種法では、日常生活が極めて困難となる障害が残った場合でも、補償額は年間270万円程度であり、十分ではありません。

パピローマワクチンを公費負担する場合、年間500億円の費用がかかります。ですが、国民1人あたり約500円の費 用負担で、日本で年間1万人以上の方が発病する子宮頸がんの7割を減らすことができるのです。500円が高いか安いか、皆さん一人ひとりにお考えいただきたいと思います。

最後に、子宮頸がん予防ワクチンの公費助成を求める署名運動を おこなっています。発起人は国立がんセンター中央病院の土屋了介院長です。電子署名を以下のサイト(http://hpv.umin.jp/) で受けつけています。ぜひご協力をお願いいたします。

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