医療ガバナンス学会 (2019年1月18日 06:00)
この原稿はAERA dot.(8月29日配信)からの転載です
https://dot.asahi.com/dot/2018082400033.html?page=1
山本佳奈
2019年1月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
そんな女性特有のトラブルを経験したことはありませんか?
膣やその周辺部に非常に激しいかゆみが出現し、白く濁ったおりものが増える疾患に「カンジダ膣炎」があります。膣内の常在菌であるカンジダという真菌が増えることによって生じる疾患です。
まず、通気性の悪い下着や、ぴったりしたズボンやタイツを着用していませんか? 高温多湿の環境が原因の一つとして知られているカンジダ膣炎。実は、ライフスタイルが原因で、デリケートゾーンにトラブルを起こしてしまう疾患でもあります。温度だけでなく湿度も高い気候が続いている今、女性のデリケートゾーンのトラブルについてお話したいと思います。
1995年の米ミシガン大学のGeiger氏らによる1027人の大学生を対象にした報告によると、17歳を過ぎると急速にカンジダ腟炎と初めて診断される女性が増え、25歳までに、54.7%の女性がカンジダ腟炎を経験したことがあったと言います。また、2013年の米ミシガン大学のFoxman氏らが行ったヨーロッパ5カ国と米国の16歳以上の女性6010人を対象とした調査によると、国によって異なるものの、参加した女性の29~49%の女性が、生涯において少なくとも1度のカンジダ腟炎を発症していることがわかりました。
女性にとって、カンジダ膣炎はデリケートゾーンのトラブルにおける一般的な疾患の一つなのです。
私ごとで恐縮ですが、私もカンジダ膣炎にたびたびなり、マイナートラブルを引き起こしてしまう一人です。抗菌薬を内服すると、必ずと言っていいほどかゆみが出現してくるのです。梅雨のシーズンや暑い時は、ただでさえ生理用品でかぶれやすくなっているのに、カンジダになって痒くて辛い、なんてことがよくあります。
抗菌薬の内服は、カンジダ膣炎の原因の一つです。膣や外陰部も、消化管内と同様に菌同士がバランスをとって共存しています。特に、デーデルライン桿菌(かんきん)が存在することで酸性に保っているおかげで、外部からの菌の侵入を防いでいます。けれども、抗菌薬を内服することによって、菌同士のバランスが崩れてしまい、カンジダが異常に増殖してしまうのです。
抗菌薬の内服の他に、糖尿病、化学療法、免疫抑制剤の投与、放射線療法、経口避妊薬の内服、通気性の悪い下着の着用や不適切な自己洗浄などが誘因となります。外来をやっていると、感冒や過労、睡眠不足や体調不良などの後にカンジダが出現したというケースもみられます。石鹸でデリケートゾーンを洗い過ぎる、トイレの後にビデで膣内を洗っていることによって発症する、なんてケースもありました。これらの誘引も、抗菌薬の内服の時と同様に、正常細菌叢が乱れカンジダが異常増殖する、つまり菌交代現象を引き起こすことによって、症状が出現するのです。
カンジダは常在菌です。女性においては正常な細菌叢の約25%をカンジダが占めています。性交渉の有無にかかわらず、発症する可能性があります。性感染症と勘違いされやすいのですが、そうではなく、女性自身が持ち合わせている疾患とも言えるでしょう。
カンジダ膣炎の女性における症状として、非常に激しいかゆみが出現し、白く濁ったおりものが増えることが特徴です。おりものは、カッテージチーズ様、酒粕様、と表現することもあります。
抗真菌薬の膣剤を膣内に挿入することで治療することができます。けれども、カンジダ以外の原因菌による感染や他の菌との混合感染を起こしてしまっている、なんてケースもあります。ですから、初めてカンジダかもしれないと思った方も、またカンジダになってしまったかも……という方も、婦人科を受診してくださいね。
通気性の悪い下着の着用やデリケートゾーンを洗いすぎているかも、という方は、今一度、ライフスタイルを見直してみるのもいいでしょう。常在菌であるカンジダと、うまく付き合っていけるといいですね。