医療ガバナンス学会 (2019年2月7日 06:00)
我々親世代の子供の頃は、教科書は薄くB5サイズ、そもそもカバン自体が重たい荷物に耐える事が出来ず、重い荷物は学校に置きっ放しでした。ところが今はカバン自体が軽量化するものの容量が増加、A4が標準サイズとなり脱ゆとりの時代となって教科書検定でも写真のいっぱい載った分厚い教科書や副読本がどんどん選ばれていきます。また、教科書だけではなく、部活動の荷物、熱中症予防の水筒やお弁当の保冷剤など、便利で物の豊富な現代では細かい荷物があれもこれもと積み重なるのですが、カバンに入ってしまうので結果として重くなってしまった荷物に子供達はあえいでいます。
考えてみれば電子化の進む時代なのに皮肉なものです。辞書なども昔は分厚くとても毎日持って行ったり出来なかったのに、電子辞書になって中途半端に軽小化した結果、毎日カバンに出し入れされる次第です。ただでさえ加熱した勉学やスマホを介した複雑な人間関係がストレスとなって医院へ来られる子供さんが増加傾向にあるのに、通学時の重たい荷物がさらにストレスとなって、偏頭痛、腰痛、胃痛、肩関節亜脱臼、頸部痛などと様々な問題が出ています。また、そういった訴えは確実に増加傾向にあります。我々としては、そういった訴えに対し痛み止めを処方するなど対症療法しかできないのがもどかしい限りでした。
だから「教科書のIT化、タブレット化を促進したい→でもタブレットは目が悪くなるかも」とか「そもそも分厚い検定教科書が悪い」などという方向性の議論では今回はありません。単純に重くなってしまった荷物が文字通り子供たちに上記の健康被害という形にまでなって重くのしかかっているのです。長らく医療の現場でこういった事態を危惧していたのですが、そういった中、つい最近のことですが昨年の9月に文部科学省からようやく「置き勉(=教科書などを学校に置いておく事)を認める通知」が出されました。
マスコミなどでもあまり大きく取り上げられず、また「通知」であって最終的には各学校の裁量に委ねられるために、まだまだご存知ない方も多いようです。例えば、各曜日の荷物を均等化するように時間割を工夫する、副教科や副教材だけでも置き勉を許可する、部活の荷物についても工夫するなど、すぐにでも見直せることはあると思います。現に通知の後、早速にも改善に取り組んだ学校例もすでに一部ですがあるとのことです。
文科省が置き勉を認める通知を出すほど、重い荷物による子供たちの健康被害が深刻になってしまっていたわけです。大人たちが議論している間にも子供たちは毎日のように重い荷物に苦しんでいるわけで、公立私立や学年を問わず「待ったなし」の問題です。積極的にスピード感をもって通学荷物を軽くしていくべき時だと考えます。