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Vol.112 重い心臓病を患う女の子が私たち大人に教えてくれたこと

医療ガバナンス学会 (2019年6月24日 15:00)


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一般社団法人Orange Kids’Care Lab.
General manager 増永英尚

2019年6月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

MRIC読者のみなさま初めまして。私は福井県福井市で、医療的ケア児らを対象とした児童発達支援や放課後等デイ、生活介護などの障害福祉サービスを提供する事業所「オレンジキッズケアラボ」で働いています。

分かりやすく例えれば、医療ケアの必要な子どもたちのための保育園のような場所です。「こたえていく、かなえていく」を合言葉に、子どもたちと家族の未来を一緒につくっています。

今、私たちは日本全国の医療的ケア児と一緒に新たな挑戦へと踏み出すため、6月28日までクラウドファンディングにてご協力を呼びかけています。

https://readyfor.jp/projects/new-atarimae

みなさんは医療的ケア児をご存知でしょうか。日常的に、たんの吸引や人工呼吸器などが必要な子どもたちのことです。おかげさまで医療技術の進歩によって、日本は世界で一番赤ちゃんの死なない国になりました。その一方で、医療的ケア児の数は10年でおよそ2倍に増えています。最新の調査では、国内に18,000人余りいるとされています。彼らは医療デバイスを携えて、病院のNICUから地域へと、家族の住む自宅へと帰り始めています。

私たちが出会ったひとりの女の子を紹介させてください。
名前はゆかりちゃん。生まれながら心臓に大きな病気を抱えています。手術と長い入院生活を経て、家族が自宅での生活を希望した際には、病院の医師から病気の根治は難しく命はあまり長くない、と伝えられていました。状態の悪化と回復を繰り返しながら2歳を迎えた頃、家族は大きな決断を迫られました。病院の医師から告げられた余命は半年。再び手術をするかしないかー。成功確率は半々でした。「今の時間を大切にしたい」。家族は手術しないことを決めました。

――今、ゆかりちゃんは友達と遊んだり、家族でお出かけしたり、病院では味わえなかった様々な体験を重ね、笑顔いっぱいの日々を送っています。去年の夏は初めてプールにも入りました。もちろん病気がなくなった訳ではありません。24時間の点滴や酸素吸入は欠かせません。それでも今を生き続け、もうすぐ4歳の誕生日を迎えます。医者の告げた余命を大きく超えました。子どもたちの可能性は無限大です。安全安心を最優先に、もし大人が挑戦する機会を奪っていたら、今の姿はなかったと思います。

そんなゆかりちゃんをはじめ、日本全国の医療的ケア児と一緒に、私たちは新たな挑戦を始めます。その名も「医療的ケア児とディズニーへ行こう!」プロジェクトです。

子どもたちはたくさんの人たちとの触れ合いや様々な活動を通して、成長していくと思います。私たちが[0-1(ゼロイチ)体験]と呼ぶ、初めてのチャレンジの繰り返しが何より大事だと思っています。「いつかはディズニーランドに行ってみたいなぁ」。大手玩具メーカーが子どもたちを対象に実施したアンケート調査で旅先として圧倒的人気を誇る東京ディズニーランド。それは医療的ケア児とその家族にとっても同じです。

でも、病気や障害を抱えていると、家からのお出かけには不安や心配が数多くあります。移動中に体調が急変したらどうしよう。列車の乗り降りはスムーズにできるだろうか。医療機器に必要な電源は確保できるだろうか。考えれば考えるほど、増えていくばかりです。

そこで今回、私たちは日本全国の医療・介護・福祉に関わる専門職とタッグを組み、最低限の医療サポート体制を整えた上で、子どもたちが持つ可能性に目を向けて、彼らの初めての東京ディズニーランド行きを後押しします。最初から全てがうまくいくとは思っていません。もし「できないことが見つかった」なら、決して下を向かず、その時みんなで顔を上げて一緒に考え、行動できればいいのだと思います。年齢や性別、病気や障害の有無など、一人ひとりが様々な違いを超えてまざりあえば、社会は自然とより良い方向へと歩みだすと信じています。

プロジェクトの実施日は9月上旬を予定しています。まず第1目標として全国10地域から医療的ケア児と家族を募り、それぞれの地元の医療関係者とのマッチングを行なった上で、当日に向けた準備を進めていきます。すでに岡山、兵庫、福岡、鳥取、岐阜、山口からの参加が内定しました!最終的には日本全国47都道府県からの参加を目指したいと思います。

最後に、ここまでお読みいただいたみなさまにお願いがあります。プロジェクト運営に必要な資金をクラウドファンディングにて募っています。目標額は300万円。期間は6月28日(金)23時までですが、残り1週間を切って達成率はまだ半分にも遠く及びません。さすがに達成は難しいんじゃないかという声もあるかも知れません。それでもみなさまからのご支援に支えられ、一歩ずつ確かにゴールに向かって歩みを進めていきます。

https://readyfor.jp/projects/new-atarimae

期限までに目標額に1円でも到達できなければ不成立となってしまいます。
今回のプロジェクトをきっかけに、病院のNICUや家の中へとこもっていた医療的ケア児の存在が日常の中へと混ざっていくことで、これからの日本の新しいあたりまえを生み出していくための一歩になると確信しています。ぜひ一人でも多くのみなさまと一緒に、その一歩を踏み出したいと思います。ご理解とご支援、拡散のご協力をよろしくお願いいたします!

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